梅雨を迎える頃から魚屋さんの店頭に並ぶ鮎、私たちにもとてもなじみのある魚ですね。川底の苔を食み、香魚とも呼ばれるその繊細な香りは、初夏の訪れを感じさせますね。
実は鮎はウナギやサケのように、海に下り川を上る魚なのです。今回はその生態や栄養価、おいしいレシピをご紹介します。
目次
鮎とはどのような魚?
鮎は基本的には1年で一生を終える魚で、成長具合に合わせ、旬を3つの時期に分けて扱います。
秋に河口に近い河川で産卵し、生まれた鮎は海へと下り、プランクトンなどを食べて成長します。その後、梅雨を前に川を上るとともに、食べるものも川底の石についている藻類へと変化します。香魚といわれ、キュウリやスイカのような香り、と例えられるのは、この藻の香りに由来しています。
梅雨を迎え、鮎漁が解禁になる頃、最初の旬、「稚鮎」「若鮎」が市場に登場します。若鮎は上の写真のようにヒレが黄色味を帯び、よい藻が生えている石を中心に縄張りを持ち、侵入するほかの鮎を激しく攻撃するようになります。
鮎の友釣り、とは、この性質を利用した釣り方です。
梅雨が明け、盛りを迎えた鮎は「成魚(せいぎょ)」と呼ばれます。体は大きくなって20cmを超え、全体に黄みがかってきます。胸びれの後ろ当たりに黄色い楕円形の模様が出てくると、産卵を前に充分脂を蓄え、おいしいという目安になります。
秋を迎えるころになると、名残りの落ち鮎、子持ち鮎を楽しむことができます。脂がのってふくよかで、柔らかい成魚とは違い、さっぱりとして滋味深い、奥行きのある味わいが楽しめます。
鮎の栄養価とは?
脂がのっていても、淡白で香りのよさが身上の鮎。どのような栄養素を含んでいるのでしょうか?鮎は食べているものの違いにより、天然もの、養殖ものの、一部の栄養価が違ってきます。今回はそれぞれについてご紹介します。
① たんぱく質
たんぱく質は三大栄養素の一つで、標準的な成人の場合、体重の約1/5を占め、筋肉や血液に含まれているだけではなく、エネルギー源としても利用されています。また、常に分解・生成を繰り返しているため、毎日取り続ける必要があります。
生の鮎100gあたり、天然もので18.3g、養殖もので17.8gのたんぱく質を含んでいます。
② ビタミンB12
ビタミンB12は水溶性ビタミンの一種で、葉酸と共に働き、血液中のヘモグロビンの生成を担っています。また、脳から出る神経の伝達を正常に保つ働きがあります。不足すると赤血球が減り、巨赤芽球性貧血という悪性の貧血を引き起こすことがあります。
生の鮎100gあたり、天然もので10.3㎍、養殖もので2.6㎍のビタミンB12を含んでいます。
③ カルシウム
カルシウムは私たちの体内に含まれる総量のうち、99%が骨や歯に蓄えられています。残り1%は血液や体液中に含まれ、止血を助け、神経伝達や筋肉の動きを促し、生命活動の維持を行う役割を果たす栄養素のひとつです。
生の鮎100gあたり、天然もので270mg、養殖もので250mgのカルシウムを含んでいます。
④ ビタミンE
ビタミンEは脂溶性のビタミンの一種で、強い抗酸化作用をもっています。そのため、
細胞膜や血管の老化を予防して、血行を促進し、アンチエイジングや生活習慣病の予防に効果が期待できます。
とはいえ、脂溶性ビタミンは取りすぎると体内に蓄積されるため、サプリメントや薬を利用する際は過剰摂取に注意が必要です。
生の鮎100gあたり、天然もので1.2mg、養殖もので5.0mgのビタミンEを含んでいます。
⑤ DHA・EPA
・DHA(ドコサヘキサエン酸)はオメガ3脂肪酸の一つで、血中コレステロール値、中性脂肪値の低下に役立ち、生活習慣病を予防するといわれています。また、脳の萎縮を防ぐ働きがあり、記憶力の向上に役立ちます。
生の鮎100gあたり、天然もので58mg、養殖もので440mgのDHAを含んでいます。
・EPA(イコサペタンエン酸)もオメガ3脂肪酸の一種で、血管や細胞膜をしなやかに保ち、心臓病や脳梗塞を防ぐ働きがあります。
生の鮎100gあたり、天然もので89mg、養殖物で180mgのEPAを含んでいます。
鮎の選び方
鮎はヒレが黄色く、胸ヒレのすぐ後ろ側に黄色い楕円形の班が出ているものが、脂がのっています。また、腹にハリがあり、目に透明感があって全体につややかなものが新鮮です。
鮎の下処理の方法
鮎には若干のぬめりがあるので、気になる場合は包丁の背などでやさしくこそげ取ります。
そのあと、腹の中央あたりから肛門にかけて優しく押し、フンを絞り出します。
おすすめレシピ【鮎めし】
鮎と言えば、何といっても焼きたての塩焼きが一番ですね。しかし、冷めてしまった場合、食べきれなかった場合には、炊き込みご飯にしてもおいしくいただくことができます。
【材料】
・鮎 2匹
・米 2合
・出汁昆布 5cm
・しょうゆ 大さじ1
・日本酒 大さじ1
・しょうが 1/2かけ
お好みで
・大葉、山椒など
【作り方】
① 鮎は下処理して塩焼きにします。米は洗って炊飯器または鍋に入れ、酒、しょうゆを加えて水加減し、出汁昆布を入れて30分程度水につけておきます。(※1)
② しょうがは千切りにします。
③ ①の鮎、②のしょうがを米の上に乗せ、炊飯します。
④ 炊き上がったら一旦鮎を取り出し、身をほぐしてごはんに混ぜます。
⑤ 器に盛り、好みで大葉の千切り、実山椒の塩漬けなどを添えていただきます。
(※1)炊き込みご飯の水加減をするときは、炊飯器の内釜に洗った米を入れ、まず、ひたひたに水を入れます。その状態でしょうゆなどの調味料を入れ、不足分の水を入れてメモリに合わせて水加減し、ざっと混ぜて調味料を均一にならします。
こうすることでまんべんなく味がつき、固さの調節もしやすくなります。
まとめ
初夏の味、鮎。私たち日本人にはなじみの味ですね。苔を食べた鮎の内臓はうるかという珍味としても珍重されています。
なお、川魚である鮎はには横川吸虫という寄生虫がついていることがあります。若鮎を生のまま筒切りして食べることもありますが、できるだけ生食は避け、加熱して、香ばしい美味しさを味わってくださいね。