30代の方にとっては「まだまだ他人事」だと思っていた親の介護。
しかし、ここ数年で30代からご両親の介護に直面する方が増えています。
30代といえば仕事がようやく軌道に乗ってきた方、子育てに忙しい方が多い世代であり、時間や金銭面で、介護と自分自身との生活の両立が大きな課題になりますね。
本コラムでは、まだ若い世代がスムーズに介護に向き合えるように、準備しておきたいポイントなどについて、ご紹介します。
目次
30代で親の介護が始まる割合が増えている
30代といえば、仕事が軌道に乗り始める方、まだまだ小さな子どもを抱えている方や、これから結婚を考える方も多い年代。
ご自身の仕事やプライベートをますます充実させていく世代ですね。
しかし、同年代のお友達にも、親の介護が始まった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
30代から親の介護が増えている原因とは?
下の図は、女性が第一子を出産した時の平均年齢を示しています。昭和50年には平均25.7歳だった第一子出産年齢が、平成30年には平均29.6歳と、約4歳上昇しています。
これは、男女ともに初婚年齢が上昇したこと、また、女性の社会進出が進んだことなどが原因と考えられています。
このような理由から、子どもが30代のうちに親が高齢になり、介護が必要になってしまうパターンが増えています。
出典;厚生労働省 人口動態統計 令和4年12月分より
介護にかかる時間や費用はどのくらいになる?
このように30代から親の介護をすることになった場合、気になるのは仕事や家事、育児との両立ですね。
中には、介護に時間がかかるからと介護離職をせざるを得なくなったり、子どもを幼稚園の延長保育や学童保育に預けて親の介護の時間を作ったりする方もいらっしゃいます。
そのため、介護する側の収入が減ってしまうことにもなりかねません。
要介護度と介護にかかる時間
仕事や子育ても忙しい30代。いくら大切に育ててくれた親だからといっても、生活のすべての時間を介護に充てることは、残念ながら難しいものです。
実際に介護にかかる時間は、要介護度や介護を負担するのが一人なのか、それとも兄弟や親せき、ヘルパーを頼ることができるのかどうか、などによっても変わってきます。
出典:2021年度『生命保険に関する全国実態調査」生命保険文化センター
上のグラフは、生命保険文化センターが発表した、自宅で家族の介護を行う場合、介護に要する時間をグラフにあらわしたものです。
当然のことながら、介護度が上がるとともに食事や排せつの介助をはじめとしたあらゆる手助けが必要になるため、介護に必要な時間も長くなっていきます。
要介護度と介護にかかる費用
親が要介護になった場合、通院にかかる交通費、医療費、また、介護職の用意や住宅のリフォームが必要になるなど、さまざまな費用が発生します。
下の表は、介護にかかる費用を示しています。
比較的介護度が低く、身の回りの多くのことはまだ自分で行える、という方であっても、月額4万円程度の負担が発生しています。
一部を介護保険で賄えるとはいえ、個人の負担も発生するため、支える家族には金銭的な負担を負うことにもなりかねません。
ようやく貯蓄について考えることができるようになった方、これから子どもの養育にお金がかかる方が多い30代にとっては、大きな問題になりますね。
親子とはいえ、聞きにくいことではありますが、親の貯蓄や保険、年金がいくらあるのかを確認し、いざというときの備えについて相談しておきましょう。
負担額は、要介護度や、自宅で介護するのか、それとも施設に入居して介護を任せるのかによっても変化します。
介護施設や入院施設はそれぞれ独自のサービスを用意していることがあり、料金設定も少しずつ異なります。
いずれは施設への入居を、と考えている場合は、親が健康なうちにさまざまなプランを比較して、いざというときに入居したい施設を探しておくのもよいですね。
介護と仕事、子育てを両立させるために
このように、介護にはたくさんの時間やお金が必要になってきます。
親の介護をしつつも、子どもの成長を見守り、自分自身も仕事を充実・発展させていかなければならない世代でもあります。
さまざまな面から板挟みになり、精神的、時間的、金銭的に立ち行かなくなることもあり得ます。
介護についてあらかじめ親と相談しておく
ご両親が元気なうちに、できれば兄弟や親せきを交え、将来介護が必要になった場合について相談をしましょう。
時間的な負担、金銭的な負担をどのように分担するか、施設に入るならどの施設がよいのか?などは、事前に話し合っておくのが賢明です。
もし、施設に入ることで実家が空き家になってしまう場合は、その対策も考えておかなければいけません。
介護離職防止のための支援制度を活用する
子どもが生まれたときに取得できる育児休業制度があるように、介護にも、介護休業制度があります。
利用にあたっては、要介護度や介護する側の雇用形態などにいくつかの条件がありますが、不本意な介護離職を防ぐためにも、利用できるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
介護休業制度の概要については、厚生労働省ホームページから確認することができます。
また、各都道府県でも相談窓口が設けられています。ご参照ください。
まとめ
いずれは成長・独立していく子育てとは違い、介護は終わりが見えないことが多いものです。
また、親子という身近な存在だからこそ感情的になり、思わぬ一言が口をついてしまい、悲しい思いをすることがあるかもしれません。
一人で気負うことなく、周りの人や行政を頼り、お互いが少しでも快適に過ごせるようになるとよいですね。
記事一覧へ戻る