高齢になったご両親が何らかの理由で一人暮らしをされていたり、ご自身が一人暮らしであったり…。今は健康で問題なく日々を過ごせているとしても、不意に将来のことを考えて不安になることはありませんか?
今回は、一人暮らしの現状や問題点、不安を解消するための対策について考えていきましょう。
目次
日本の高齢化
内閣府が発表した、『令和4年版高齢社会白書』「第1章 高齢化の状況」によると、令和3年10月1日現在、日本の人口は、1億2,550万人、そのうち、65歳以上人口は3,621万人、高齢化率(総人口に占める高齢者の割合)は28.9%となっています。
昭和25年の高齢化率が5%に満たなかったということを考慮すると、約5.5倍の増加となり、いかに高齢化が進んでいるのかが分かりますね。
また、将来推計人口を考慮し、令和18年には高齢化率は33.3%、令和47年には38.4%、3人に一人が高齢者という状況に達すると考えられています。
一人暮らしの高齢者が抱える不安や問題点とは?
このように高齢者人口が増える中、昨今の少子化や核家族化、また、パートナーに先立たれてしまうなど、様々な理由から一人暮らしの高齢者が増えています。
中には、一人暮らしを満喫している方もいらっしゃることでしょう。しかし、多くの不安を抱えつつ、一人暮らしをしている方も多いのが現実です。
身の回りの世話が難しくなってくる
食材や日用品の買い物が重い
水や液体洗剤、食材が重く、購入しても持ち帰ることが難しくなり、買い物に行くのが億劫になることがあります。
一度に購入できる食材1パックの量が多すぎる
食が細くなっている高齢者の場合、一度に食べられる量に限界があるため、食べ物が無駄になってしまうことがあります。
そのため、買い物に出ても、好みの食材を購入することができずに帰ってしまいます。
一人分の料理を作るのが面倒になる
一人分の料理を作るのは、意外に難しいものです。
作り過ぎて食べきれずに捨ててしまったり、体力的な問題から、長時間立ち続けて調理をすることが難しくなったりして、結局は食事をパンや麺類といった簡単なものやインスタント食品で済ませてしまうようになってしまうこともあるでしょう。
その結果、必要な栄養を取ることができず、フレイルに陥ってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
高いところや力がいる掃除・洗濯ができない
脚立に上らないと手が届かない蛍光灯やタンスの上の掃除、電球の交換や、大きな家具をのけての掃除が難しくなってしまいます。
無理に行おうとして、台から落下し、怪我を負うことがあります。
病気・怪我の発見が遅れることがある
ちょっとした不調に気付きにくい
年齢をかさねると、喉の渇きやちょっとした自身の体調の変化に気づきにくくなります。
夏には、暑いにも関わらず、エアコンを入れずに熱中症に陥ってしまうケースも見受けられ、注意が必要です。
また、本人が自覚しにくい認知症をはじめ、いろいろな病気の進行に気づかないことがあります。
筋肉の衰えから怪我をしやすくなる
足腰の筋肉の衰えなどから自宅内で転倒したり、調理中に熱い鍋を落として火傷を負う、また、包丁で指を切るなど、怪我をしたりすることがあります。
しかし、ご自身がたいしたことではない、と、我慢してしまったり、家族に心配をかけまいと隠されたりすることにより、軽度なうちに治療を始めることができず、重症化してしまうことがあります。
孤独になってしまう
人付き合いが億劫になる
一人暮らしでこれといった趣味を持っていない方の場合は、買い物以外に外出することが少なく、家に閉じこもりがちになります。
人付き合いが減ってしまうと、身だしなみを整えることもせずに過ごすことが増え、生活にメリハリをつけにくくなります。
特殊詐欺に巻き込まれやすくなる
残念なことに、高齢者を狙った様々な手口の詐欺が横行しています。
一人暮らしの高齢者の場合、情報のスピードについていけず、詐欺と気づかずに高額の振り込みをしてしまうなど、犯罪に巻き込まれやすくなります。
内閣府が発表した『令和4年版高齢社会白書』【特殊詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成24~令和3年)】によると、特殊詐欺の被害者の約9割が65歳以上の高齢者であり、その手口はオレオレ詐欺や預貯金詐欺となっています。(下図参照)
また、全国の消費生活センター等に相談があった消費生活相談件数のうち、契約当事者が65歳以上のものは、25万件にも上っているということです。
自然災害への対応が難しい
台風や大雨、地震といった自然災害時に避難が遅れ、自宅に取り残されてしまい、被災してしまうことがあります。
高齢者の一人暮らしを支えるために押さえておきたいポイントとは?
一人暮らしを行うためには、基本的には自分自身で身の回りの世話を行わなければなりません。
さまざまなデメリットを最初にお伝えしましたが、必然的に体を動かし、考えて行動するという点では、健康維持に役立つ部分もありますね。
一人暮らしを安心して続けていただくため、離れて暮らす家族が安心して見守るためには、どのようなポイントがあるのかを見てみましょう。
日々の見守り
高齢の親御さんやご親戚が一人暮らしをしている場合、同居や近くに暮らすなどすることで、しっかりと見守りたいと思っていても、仕事や子育てなどの都合で毎日顔を見ることができない、ということはとても多いものです。
また、親御さんにとっても大切な子どもではあるものの、自立して別の家庭を持っていることで遠慮したり、別々に暮らすうちにお互いの習慣が違ってしまい、居心地が悪いとストレスを感じてしまったりすることがあります。
もし、親御さんがSNSを使えるようであれば、週に何回かでも連絡を取り合い、状況の確認や不安・不便に感じていることの有無を聞いてみましょう。
ビデオ通話が使えると、顔色や表情を確認できて良いですね。
訪問時の確認
日々の料理ができているかを確認する
訪問時には、冷蔵庫やパントリーの食材のチェックを行います。
賞味期限が過ぎているもの、腐敗しているものは処分し、買い物や料理がきちんとできているかを確認しましょう。
フライパンや鍋、コンロの状態を見ることで、火の消し忘れによる吹きこぼれや焦げ付きをさせてしまっているかどうかや日々の調理ができているかを確認することもできます。
服薬の状況を確認する
何らかの持病がある方の場合は、きちんと通院し、薬を服用できているかどうかを確認しておきましょう。
通院履歴は、予約がある病院なら診察券の予約欄で、また、お薬手帳の投薬履歴からも確認することができます。
SNSの使い方を理解してもらう
SNSをあまり使ったことがない方で、スマートフォンをお持ちの場合は、ビデオ通話機能の使い方を大き目の紙に印刷し、目立つところに張っておいてあげましょう。
使い方は文字だけでなく、画面のスクリーンショットを取り、どのアイコンをクリックすればよいのか、視覚から理解できるようにしてあげるのがポイントです。
特殊詐欺にあっていないかを確認する
また、装飾品や美術品などを新たに購入されている場合は特殊詐欺にあっている可能性があります。
お金のことを聞くのは心情的に難しいかもしれませんが、できれば確認しておきましょう。
地域とのつながり
地域包括センターや自治体、民間のサービスを活用する
親御さんや高齢のご親戚が一人で暮らしておられることは、近隣の地域包括センターや民生委員、町内会、仲良くされているご近所の方にはお伝えしておきましょう。
体調に不安がある場合はその内容や、かかりつけ医、ケアマネージャーの情報なども伝えておくと、災害時の対応もスムーズになります。
要介護、要支援の認定を受けていない方でも、地域の見守りサービスや、自治体、提携施設が行う体操教室や、趣味のサークルの紹介を受けることができる場合もあります。
同年代の方が集まる場に参加できると、外出する機会が増えて身だしなみを整えたり、新しい友人を得たりと、一人暮らしの生活にも活気が出ますね。
また、民間の老人ホームでも、要介護者でなくても参加できるイベントやサークル活動を行っている場合があります。
入居を考えるようになる前からイベントに参加して老人ホームに慣れておくと、いざ入居しなければならなくなった時に、心の垣根が低くなるというメリットがあります。
お弁当の宅配サービスを活用する
先ほどご紹介したとおり、高齢者の一人暮らしにおける大きな悩みの一つが、調理や食材の買い出しではないでしょうか?
年齢をかさねるとともに、一度に食べられる量が減り、購入できる食材に限りが出てきます。
かといって、ご飯のみ、うどんやパンといった主食やおやつでお腹を満たしてしまうと、栄養の偏りからフレイルや病気を引き起こすことがあります。
高齢者向けの宅配弁当サービスを利用すると、栄養バランスが整った食事を食べることができるほか、定期的に訪問して届くため、一人暮らしの高齢者の安否確認にもなります。
宅配サービス業者の中には、お弁当を注文しない日でも安否確認のための訪問サービスを行っているところもあります。
上手に選んで活用してくださいね。
まとめ
今回は、高齢になったご家族や、いつかは私たち自身の身にも起こり得る、一人暮らしの不安やその解消方法について、ご紹介しました。
一人で暮らすことに関して、不安材料を考え始めるときりがないですが、自分自身の身の回りのことを自ら行うことで、健康を維持できる、とも言えます。
体調や周りの状況を顧み、一人暮らしを続けるか、老人ホームへの入居や家族との同居を選ぶか、折々で考えてみるとよいですね。
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