少子高齢化が進むなか、高齢者の一人暮らし世帯も増加し続けています。
ご本人だけでなく、離れて住む家族の方々も心配されることが多いのではないでしょうか。
高齢者の一人暮らしにはデメリットが多く、さまざまなリスクに備えた対策が必要です。
本記事では、高齢者の一人暮らし世帯にはどのようなデメリットがあるのか、どのような対策が有効か解説しています。
必要な対策として、高齢者の快適な暮らしを支えるサービスを紹介していますので、参考にしてください。
目次
一人暮らし高齢者が増えている理由
一人暮らしをする高齢者の割合が高くなっているのは、やむを得ずそうなった場合だけではありません。
子どもが独立し、配偶者に先立たれた高齢者は、必然的に一人暮らしとなります。
ところが近年、選択して一人暮らしをするケースも少なくありません。
生涯未婚率が高まっていることから、いずれは一人暮らしの高齢者となる層が増えています。高齢者の一人暮らし世帯の増加を後押ししています。
高齢者の一人暮らしのデメリット
高齢者が一人暮らしをすることには、さまざまなデメリットがあります。
それらは相互に関わり合い、1つのデメリットが他のデメリットへとつながるケースがほとんどです。
ここでは、高齢者の一人暮らし世帯におけるデメリットを5つ取り上げます。
デメリット①生活水準の低下
老後の資金に関する問題は、高齢者の一人暮らし世帯の大きなデメリットとして挙げられます。
一人で生活している高齢者の場合、1人分の年金だけで生活のやりくりをしなければならないため、生活が困窮している世帯も多いのが実状です。
十分な生活費が確保できないと、生活水準の低下につながります。見た目を気にしなくなる、栄養バランスの整った食事ができない、人との繋がりを持たなくなるといったデメリットを生む可能性もあります。
デメリット②社会参加の機会の減少
高齢者の一人暮らしでは、人と接する機会が少ないこともデメリットとなります。
特に家族が近くに住んでいない、仕事や趣味がない高齢者の場合、社会から孤立しやすくなります。
社会参加への機会が減少すると、生活のメリハリがなくなります。
また人と話す機会がなくなると、認知症の発症や進行につながります。
近隣や地域の人との繋がりがないと、いざというときに頼れる人がいないため心配です。
デメリット③生きがいが感じられない
定年退職をした方や趣味を持たない方の場合、やりがいや生きがいが感じにくい環境にあります。
一人暮らしをして人と関わる機会が減少しているとなおさら、毎日の生活に楽しみを見いだせなくなってしまいます。
生きがいが感じられないからと積極的に行動しなくなると、さらに活力が失われるという悪循環にも陥りがちです。
デメリット④認知症の発症・進行のリスク
高齢者が一人暮らしをしていると、認知症を発症していることに気づかれないケースが少なくありません。
久しぶりに会った家族が気づいたときには症状がかなり進行していた、といったことも考えられます。
頼れる家族がいない高齢者の場合、認知症の進行で一人暮らしが困難になったときに必要な手続きができなくなることも、デメリットとして挙げられます。
デメリット⑤孤独死への不安
一人暮らしの高齢者が病気やけがをしたときに発見が遅れると、孤独死につながる可能性が高くなります。
孤独死は、残された遺族による諸手続きの問題もありますが、高齢者自身の心情的な問題も大きいと考えられます。
孤独死に対する不安が大きいことで、気力を失ってしまう方もいるほどです。
デメリット⑥犯罪に巻き込まれるリスク
高齢者を狙った犯罪は、ネットやニュースで取りざたされることが増え問題視されているにもかかわらず、増加の一途をたどっています。
振り込め詐欺などの特殊詐欺や、悪質な手口で高額商品を売りつける悪質商法など、高齢者をターゲットとした犯罪はさまざまです。
特に一人暮らしの高齢者の場合、相談できる人がおらず被害にあったり、なかには被害にあったことに気づかなかったりするケースもあります。
高齢者の快適な暮らしとは
そもそも、高齢者にとって快適な暮らしとはどのようなものでしょうか。そのキーワードとなるのがQOLです。
近年、医療や看護、介護の現場で「QOL(Quality Of Life=生活の質)が注目されています。
「生きるため」「生活するため」だけでなく、「その人らしく」「本人の希望を尊重しながら」医療や介護サービスを提供することが求められているのです。
高齢者におけるQOLには、次のような要素が挙げられます。
・健康状態
・経済状態
・社会的活動
・生活環境
・充実感
一人暮らし高齢者の家族ができる事
高齢者の一人暮らしにはデメリットが多いからといって、家族と同居することで、すべてが解決するかといえばそうではありません。
QOLの観点でいうと、本人の意思を尊重することが何より大切です。
一人暮らしイコール「可哀そう」「寂しい」わけではないということです。
高齢者のなかには、「住み慣れた家や地域を離れたくない」「一人で生活したほうが気が楽」と考える方も少なくありません。
同居の選択肢があって、本人もそれを望んでいるのがベストかもしれませんが、必ずしも「同居=正解」ではないことを理解しておきましょう。
そのうえで、本人が望むかたちでサポートしてあげることが、家族としてすべきことだと考えられます。
一人暮らし高齢者の公的サービス
一人暮らしの高齢者にとってのデメリットを解消するためには、さまざまなサービスを利用することも有効です。
公的サービスとしては、見守りサービスや、介護支援・介護予防サービスがあります。
①見守りサービス
厚生労働省では「地域包括ケアシステム」を推進しており、住まい・医療・介護・介護予防・生活支援を一体的に提供することを目指しています。
その目的は、高齢者が自分の住み慣れた地域で、最期までその方らしく暮らし続けられるように、地域が主体となって支援することにあります。
地域ごとに、さまざまな観点から高齢者を見守るためのサービスが提供されています。
・高齢者の消費者被害を防止するための見守りサービス
・緊急時に備えた支援地域活動
・社会参加の機会を提供する活動
・認知症予防を目指す教室を開催
・一人暮らしの高齢者宅を訪問する見守りサービス
・車椅子の貸し出しなどの福祉サービス など
②介護支援サービス・介護予防サービス
一人暮らしに不安や困難さを感じたら、要介護認定を受け、介護支援サービスや介護予防サービスを利用することも一つの方法です。
「介護」サービスを利用するというと抵抗感をおぼえる高齢者も多いのですが、利用することでお得になる公的サービスと捉え、積極的に活用することをおすすめします。
例えば、要支援1〜2に認定されると、介護保険で介護予防サービスが利用できるようになります。
自宅に手すりを付けるなどのリフォームでは、補助金を受けることが可能です。
一人暮らし高齢者の民間サービス
自治体が主体の高齢者向けサービスに加えて、民間のサービスを併用するとさらに快適な暮らしが実現できます。
見守りサービスや緊急通報システムを活用すると、いざという時安心です。
また家事代行サービスやお弁当の宅配サービスを利用すると、より便利です。
①安否確認サービスや見守りサービス
安否確認サービスや見守りサービスとしては、各社さまざまな機能を備えた商品を提供しています。
高齢者の自宅にセンサーを設置して、一定時間動きが感知されなければ、家族や介護事業所などに通知が届くのが基本的な仕組みです。
家族に遠慮したり、物理的に連絡できなかったりする場合でも、自動で通知されるため安心です。
②緊急通報システム
高齢者自身が異変や危険を感じたときなど、緊急時にボタンを押すことで、あらかじめ設定しておいた連絡先に通報されるシステムです。
駆けつけサービスの有無は会社によって異なりますが、24時間対応しているため、一人暮らしの高齢者にとっては安心です。
民間のセキュリティ会社によるサービスのほか、自治体が提供しているサービスもあります。
利用するには要件がありますが、自治体のサービスだと安価で利用できるため、利用可能か確認してみるとよいでしょう。
③家事代行サービス・お弁当の宅配サービス
家事代行サービスやお弁当の宅配サービスなどを利用して生活の質を維持することも、高齢者の快適な暮らしを実現するために有効です。
綺麗な部屋に住みしっかり睡眠をとる、美味しく栄養バランスの整った食事をとるなど、人間にとって基本的な営みをすることは、一人暮らしの高齢者には困難な場合もあります。
さまざまなサービスを利用することで、快適かつ健康的な暮らしにつながります。
高齢者の一人暮らしデメリット解消
高齢者の一人暮らしは今後も増加が予測されます。
高齢者の一人暮らしにはさまざまなデメリットもありますが、本人が一人暮らしを望むのであれば、デメリットへの対策をしながらその意思を尊重することが大切です。
対策としては、高齢者の安全な生活を守るためのサービスや、快適な暮らしをサポートするためのサービスを活用することが挙げられます。
日常生活に困難さを覚える前に、利用可能なサービスについて調べておくことをおすすめします。
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