刺身のツマとしてよく目にする大葉、薬味として利用することはあるけれど、10枚程度入っているパックを購入すると、いつの間にか冷蔵庫の片隅で傷んでいた…ということはありませんか?脇役として利用されがちな大葉ですが、豊富な栄養素や薬効を秘めています。今回はそんな大葉の魅力やおいしい料理をご紹介します。
目次
大葉とはどのような野菜?
大葉、すなわち青シソは、中国南西部からヒマラヤにかけての地域が原産の、芳香性のシソ科の一年草で、春から夏にかけて旬を迎えます。古くから中国ではその薬効が知られ、薬草として利用されていました。
日本に伝わった時期については詳しくはわかっていないのですが、各地の縄文遺跡から種子が出土していることから、縄文時代より利用されていたことがうかがえます。
その後、平安時代には『延喜式』『本草和名』などの書に大葉に関する記述があり、その頃には栽培されていたのではないかとされています。
国会図書館に所蔵されている、江戸時代に執筆された『農業全書』(宮崎安貞ほか著)の4巻には、紫蘇の栽培方法や食べ方、薬効などが記載されており、江戸時代には広く食べられていたことがわかります。
大きく分けて大葉と言われる青シソ、梅雨前後に出回る赤シソの2種類があります。そのほか、双葉や花穂、シソの実など、成長過程のさまざまな状態を利用します。
シソ(紫蘇)の名前の由来は、中国で後漢の時代に、カニを食べて食中毒になり、生死の境をさまよう若者に、シソを煎じて作った紫色の薬を飲ませたところ、症状が回復し蘇った、という伝説が有名です。
大葉の栄養価は?
先にご紹介した食中毒予防効果だけでなく、大葉には多くの栄養素が含まれています。
① βカロテン
βカロテンはビタミンAとして働き、成長を促進し、皮膚や粘液を保護する働きがあります。また、体に有害な活性酸素を除去し、体を守る抗酸化作用や免疫を増強する効果があります。
大葉100gあたり、11000㎍のβカロテンを含んでいます。
② ビタミンB2
ビタミンB2は皮膚や粘膜の健康維持に役立つビタミンで、糖質、たんぱく質、脂質をエネルギーに変換し、代謝を司る役割を担っています。口角炎、口内炎をはじめとする粘膜の炎症を抑える働きがあります。
大葉100gあたり、0.34mgのビタミンB2を含んでいます。
③ ビタミンC
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、皮膚や筋肉、骨の細胞同士を結び付けるコラーゲンを生成する働きがあります。また、鉄分の吸収を助け、活性酸素を除去したり、血管を保護したりすることから、動脈硬化や心疾患の予防を期待できます。
大葉100gあたり、26mgのビタミンCを含んでいます。
④ ビタミンK
脂溶性のビタミンKは、骨に含まれるたんぱく質の働き、カルシウムが沈着するのを助けるため、骨粗しょう症の治療薬として利用されています。また、血液を固める働きがあり、欠乏すると頻繁に内出血を起こしたり、けがをした場合、血液の凝固に時間がかかってしまったりします。
大葉100gあたり、690㎍のビタミンKを含んでいます。
⑤ 葉酸
葉酸は水溶性ビタミンの一種で、細胞分裂を正常に行う働きを担っています。また、血液を作る働きがあり、不足すると巨赤芽球性貧血という悪性の貧血を引き起こします。
妊娠初期の女性が摂取不足になると、胎児に発育障害がおこることがあります。
また、葉酸は脳卒中、心筋梗塞などの循環器系疾患の発症リスクを軽減する働きがあります。
大葉100gあたり、110㎍の葉酸を含んでいます。
⑥ ルテリオン
ルテリオンはフラボノイドの一種で、アトピー性皮膚炎を引き起こす原因となるロイコトリエンという物質や、花粉症を引き起こすヒスタミンを抑制する働きがあります。
また、強い抗酸化作用があり、がんの抑制、アンチエイジング効果や肝臓の持つ解毒作用を促進する働きがあります。
⑦ ペリルアルデヒドなどの香り成分
大葉独特の香り成分、ペリルアルデヒドは、防腐・制菌作用があり、特に魚毒を鎮める、といわれ、刺身に添えられています。
また、大葉の香り成分には抑うつ効果が認められ、生薬として利用されています。かの加藤清正が部下の兵士のうつ症状を、大葉を用いて改善した、という逸話も残っています。
大葉の選び方と保存方法
葉に張りがあり、色がきれいな緑色のもの、軸の切り口が黒ずんでいないものが新鮮です。購入後はさっと洗って水気を切り、ファスナー付きの保存袋に入れるか、固く絞ったキッチンペーパーでくるみ、ラップフィルムでふんわりと包んで冷蔵庫で立てて保存します。
大葉のおすすめレシピ
シソ巻き味噌
山形県の郷土料理、シソ巻き味噌はごはんの友として、またお酒のおあてとしてもおすすめの、香り高い一品です。作り置きができるので、箸休めにもうひと品、という時にも便利ですよ。
【材料】 50個分
大葉 50枚
砂糖 30g
味噌 50g
くるみ 20g
白ごま 10g
一味唐辛子 適宜
米粉または小麦粉 30g
サラダオイル 適宜
つまようじ 10本
【作り方】
① くるみ、白ごまは軽く炒り、香りが出たらすり鉢であたる。
② ①に味噌を加えよく混ぜ、砂糖、一味唐辛子を加える。ざっと混ぜて砂糖が溶けてきたら米粉または小麦粉を加え、粉気がなくなるまでよく混ぜる。
③ 大葉は洗って水気をふき取る。
④ ②の味噌を等分し、大葉の幅に手のひらで転がして伸ばし、一枚ずつ包む。
⑤ ④を5個ひとまとめにしてつまようじに刺し、180℃のサラダオイルで15秒程度揚げる。
『大葉のレシピ』まとめ
春から夏にかけて旬を迎える大葉ですが、ハウス栽培が主流になっている今、一年中安定して手に入れることができます。
他の野菜のように一度に大量にたべることはあまりありませんが、多くの栄養素や薬効が含まれているので、できることなら毎日少しずつでも取り入れ、日々健やかにお過ごしくださいね。