『へしこ』栄養とおすすめレシピ

『へしこ』栄養とおすすめレシピ
医師監修の冷凍弁当で手軽に健康生活を

スーパーマーケットなどで、ちりめんじゃこやたらこなどの水産加工品の並びにひっそりと置かれている、ぬかが付いたサバを見たことはありませんか?これは、主に日本海側、福井県若狭地方で作られる特産品、へしこという食材です。今回は、へしことはいったいどのような食材なのか?その栄養価やおいしい食べ方をご紹介します。

◆へしことはどのような食材?

へしことは、主として内臓を取り除いたサバなどを糠に漬けてつくる、郷土料理の一つです。サバやイワシなどの青魚を2~3週間、塩分濃度20%の塩水に漬けたのち、半年以上、重しを乗せてぬか漬けにするという、とても手間をかけて仕上げられる郷土料理です。

乳酸菌をはじめとするいくつかの菌が、季節による温度や湿度の変化をうけて発酵、熟成を重ね、あの独特の旨みや香りを生んでいるのです。

福井県若狭地方はサバの漁獲量が多く、古くから京の都にサバを運ぶ、「鯖街道」が有名ですね。かつてへしこは、この鯖街道を経て京都や大阪に多く運ばれていました。

冷蔵庫や迅速な輸送手段がなかった時代に、発酵食品であるへしこは保存が効き、長距離の輸送にも耐える、大切なたんぱく源の一つだったのですね。

◆へしこの栄養とは?

サバを、濃度20%という濃い塩水につけて作る、サバのへしこ。ここだけを考えると、とても塩分が多く、高血圧を気にしておられる方などにはあまりおすすめしにくい食品のように感じますね。しかし、発酵食品であるへしこには、とても体に良い成分が多く含まれているのです。

①たんぱく質

へしこの原料となるサバには豊富なたんぱく質が含まれています。たんぱく質は脂質、糖質とともに三大栄養素と言われ、私たちが生命維持をするためにとても大切な成分の一つです。筋肉や骨を作る成分として利用されるほか、免疫細胞や血液の成分でもあります。また、1gあたり4kcalのエネルギーを作り出すことができます。

へしこに使われたサバのたんぱく質の一部は、ぬかに含まれる乳酸菌などの発酵により、吸収されやすいアミノ酸に分解されています。へしこ特有の旨みや香り成分のうちのいくつかも、発酵によって生み出されています。

②ペプチド

ペプチドはアミノ酸が複数個つながった形で存在する成分で、へしこの場合は発酵中に乳酸菌がたんぱく質を分解して、作られています。
つながるアミノ酸の個数により、それぞれ違った健康効果があるのですが、魚肉に由来するペプチドには体内でおこる酸化によるストレスを軽減したり、アンチエイジング効果や、血圧を安定させたりする効果、また、疲労回復効果も期待できます。

③DHA/EPA

DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペタンエン)は、ともに魚類に含まれる不飽和脂肪酸のことで、私たちの体内では作り出すことができない種類の必須脂肪酸です。

DHAは私たちの脳や目の網膜をはじめとする神経に多く含まれる栄養素で、脳の健康を維持する働きがあります。
EPAは血液をサラサラにし、血栓ができにくくなったり、高脂血症を予防したりする働きがあります。そのため、動脈硬化や心筋梗塞など循環器病の予防効果があることが知られています。

④乳酸菌など

先ほどもご紹介したとおり、へしこは乳酸菌をはじめ、酵母菌などいくつかの菌が働き、あの旨みや香りを醸し出しています。これらの菌類は私たちの体内にいる腸内細菌のえさとなります。その結果、腸内環境を整える働きがあります。

◆へしこのおすすめレシピ

へしこのパスタ

へしこのパスタ

福井県若狭地方をはじめとする日本海側の地域で愛されているへしこ。お茶漬けや、さっと炙ってお酒のおあてにするほかに、パスタに加えて楽しむこともできます。

【材料】   2人分

・へしこ・・・1/4匹分
・にんにく・・・1かけ
・鷹の爪・・・1/2本(お好みで加減してください)
・オリーブオイル・・・大さじ2
・スパゲッティ・・・160g
・塩・胡椒・・・各適宜
・イタリアンパセリ、ピンクペッパーなど・・・各適宜

へしこのパスタ
【作り方】

①へしこはお好みで糠を落として洗い、薄くスライスしておきます。

②にんにくは皮をむき、縦半分に切ってから芽を取り除き、鍋の底などでかるく押しつぶしておきます。唐辛子は種を取り、輪切りにしておきます。(さっと水にくぐらせると切りやすいです)

③鍋に湯を沸かし、塩(分量外)を加え、パスタを袋の表示時間通りに茹でます。(※)

④フライパンに②のにんにく、唐辛子、オリーブオイルを加えてから弱めの中火にかけ、にんにくの香りが出てきたらへしこを加えて、へしこに火が通るまで加熱します。
発酵によりたんぱく質が分解されているため、その身はもろく崩れやすいですが、その分スパゲティーに絡みやすくなります。

へしこのパスタ

⑤麺が茹で上がったらしっかりと水気を切り、④に加えてさっと炒め合わせます。

へしこのパスタ

⑥器に盛り、お好みで②のイタリアンパセリやピンクペッパーを散らして出来上がり。

(※)本来、パスタを茹でるときには麺100gに対し、水が1リットル、塩を10g使用します。今回はソースに塩味のつよいへしこを使用するため、塩10gのところを5g程度の割合で茹でると、塩辛すぎることなく、優しい味に仕上がります。

◆へしこレシピのまとめ

魚を発酵させて作るへしこは、和の食材ではありますが、アンチョビにもよく似た使い方で洋風に楽しむことができます。今回ご紹介したパスタのほか、キャベツ炒めやバーニャカウダソースに利用するなど、和洋を問わず幅広く楽しんでくださいね。

また、乳酸菌をたっぷりと含んでいる糠はサラダオイル少々で水分を飛ばすように炒めると、ふりかけのようにして楽しむごはんの友を作ることができますよ。米ぬかには疲労回復にとても効果がある栄養素、ビタミンB1が含まれています。ぜひ利用してくださいね。

おてがる制限食「まごころケア食」

この記事の作成者:真鍋 実穂(調理師)
この記事の提供元:シルバーライフ

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