春になると和菓子屋さんのお店頭を飾る、緑色のヨモギもち。爽やかな草の香りや、少し苦みが効いた春を感じる味わいは、私たち日本人には欠かせないものではないでしょうか。ヨモギは、和製ハーブの女王としてさまざまな効能が知られ、古くから生薬として利用されています。今回はヨモギについて、また、最も一般的なヨモギのお菓子、草餅の作り方をご紹介します。
目次
ヨモギとはどんなハーブ?
ヨモギは日本全国の川べりや野原、アスファルトの隙間や公園の片隅など、意外に多くの場所で目にすることができる、ありふれた雑草です。キク科の多年草で、原産地は中央アジアと考えられていますが、現在は日本の在来種として扱われています。
繁殖力がとても強く、地下茎で広がっていくので、斜面の土の流出防止に植えられることもあります。
葉の裏に、お灸の材料として利用する細かい毛が生えていて、よく燃える、または、春に萌えるように生えることから良燃(萌)草(ヨモギ)と呼ぶようになったといわれています。
菊の葉ととてもよく似ていますが裏が白いのが特徴で、草原などで探すときの目安になります。
ヨモギを採取する際、よく似た姿で注意が必要なものに、有毒のトリカブトという植物があります。ヨモギが日当たりのよい場所に生えるのに対し、トリカブトはどちらかというと薄暗く湿ったところに生えていて、葉の裏の毛やヨモギ特有の香りがありません。
トリカブトは、かの伊達政宗暗殺計画にも利用されたのではないかといわれるほどの毒を持っています。経口、経皮ともに吸収されてしまう種類の毒なので、注意が必要です。採取に行く際は参考になさってくださいね。
ヨモギの栄養価とは?
漢方では、艾葉(がいよう)という名で止血効果があるとしてもしられているヨモギ、どのような栄養や健康効果があるのかをご紹介します。
ヨモギは婦人科の要薬
怪我をしたときなど、おじいちゃん世代、おばあちゃん世代の方から傷口に当てるようにと持たされた記憶があるかたもいらっしゃると思います。この止血効果が不正出血や月経過多の治療用の生薬として使われています。
また、一度干したものを入浴剤として利用すると体を温め、血行・発汗を促進してデトックスし、肌下腹部の冷痛解消にも効果があることから、「婦人科の要薬」と呼ばれています。
アレルギー性皮膚炎の軽減
また、ヨモギには抗炎症作用が認められ、皮膚のかゆみをしずめる働きがあります。ヨモギを配合した入浴剤を入れたお風呂で温まるのもよいですね。
ただし、ヨモギはキク科の植物です。キク科の植物にアレルギーがある方や不安がある方は、事前にかかりつけの医師に相談してから利用してくださいね。
① カリウム
カリウムは私たちが取り過ぎた塩分を体外へ排せつさせ、血圧を安定させたり、むくみを解消したりする働きがあります。また、近年の研究では、カルシウムが骨に沈着するのを助ける働きがあることも判ってきているということです。
② βカロテン
βカロテンは体内でビタミンAに変化し、発育を促したり、皮膚や粘膜を保護して免疫力の向上を担ったりしています。
③ ビタミンK
ビタミンKは骨に含まれるたんぱく質の働きを促したり、カルシウムが骨に沈着するのを助けたりするため、骨粗しょう症の治療薬として利用されています。また、血液を凝固する働きがあるため、不足すると内出血を起こしやすくなったり怪我をしたときに出血が止まりにくくなったりします。
④ 葉酸
葉酸は細胞分裂を正常に行ったり、ビタミンB12とともに血液を作ったりする働きがあります。妊娠初期の女性が不足すると、胎児に発育障害が見られることがあります。また、成人においては脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクを軽減する働きが確認されています。
⑤ クロロフィル
クロロフィルは葉緑素のことで、緑色の天然色素です。葉緑素は血液中で鉄分と結合して、赤血球の中のヘモグロビンなどの材料として利用されるほか、ダイオキシンやカドミウムなどの有害物質を吸着、排泄するデトックス効果に優れているほか、細胞を活性化する働きもあります。
ヨモギのおすすめレシピ
草もち
生のヨモギを摘んで作る草もちは香りや味の良さも格別ですが、今回は市販の乾燥ヨモギを利用した、手軽な方法をご紹介します。
【材料】 4個分
・白玉粉・・・100g
・砂糖・・・70g
(餅菓子の場合、砂糖はしっとりと仕上がる上白糖がおすすめです。)
・乾燥ヨモギ・・・4g
・水・・・120g
・片栗粉・・・適宜
(・お好みで、餡・・・100g)
【作り方】
① 砂糖に乾燥ヨモギを加え、よく擦りまぜるようにして乾燥ヨモギをほぐしておきます。
※乾燥ヨモギはダマになりやすいため、はじめに砂糖と混ぜてしっかりとほぐしておくことで後の作業が楽になり、むらなくきれいに仕上がります。
② 耐熱性のボールに白玉粉を入れ、①の砂糖とヨモギを合わせたものを加え、ざっと混ぜておきます。
③ ②に水を一度に加え、全体が滑らかになるまで2~3分ぐるぐると混ぜます。この段階ではどろどろとして、とても水分が多い状態です。
④ ③がむらなく混ざったらふんわりとラップをかけ、600Wの電子レンジに2分間かけて加熱し、全体を混ぜます。
⑤ 再度600Wの電子レンジに1分程度かけ、取り出して混ぜ合わせます。全体に透明感が出ていれば火が通っていますが、下の写真のように白く濁った色の部分があれば再度20秒程度ずつ加熱して確認します。これを、色むらがなくなるまで繰り返します。
⑥ バットに片栗粉を薄く敷き、⑤の草もちを乗せ、上からも片栗粉を振って4等分します。
⑦ 切り口を内側に寄せるように丸めて出来上がりです。
⑧ 餡入りにする場合は丸めたもちを円盤状に押しつぶし、1個あたり25gの餡を丸めて載せ、対角線上につまむようにして合わせてくっつけ、丸めて形を整えて出来上がりです。
ヨモギレシピのまとめ
気づけばどこにでも生えている、と言っても過言ではないほど身近な植物、ヨモギ。食べるだけではなく、入浴剤として、また、お灸の材料として、と、古くから私たちの生活にも、とても身近にあるものでした。
身近に生えているものを利用する時は柔らかい新芽を摘んで、水2リットルに対し、塩または重曹を小さじ1杯加えた熱湯でさっとゆでてあく抜きしてからご利用くださいね。