ここ数年でとても一般的になった甘酒や塩麹。発酵食品のブームの火付け役となったといっても、過言ではないですね。甘味や旨みをたっぷりと含んだこれらの食材は、どちらも米麹から作られています。今回は米麹について、ご紹介します。
目次
日本の国菌!?米麹とは?
米麹とは、蒸した米に麹菌をつけ、発酵させたものです。この麹菌はその見た目から「もやし」とも呼ばれ、米麹をつくるための種麹菌を生産している店のことを、「もやし屋」と呼ぶこともあります。
清酒メーカーや米麹製造業者は、おおむねこのもやし屋から種麹を仕入れ、以下のような手順で米麹を製麹しています。
① 米を洗い、芯まで吸水させたのち、表面を乾燥させる。
② 米を蒸し、指先でひねりつぶしたとき、芯はないが固い状態に蒸し上げる。
③ 米を熱いうちに床と呼ばれる作業台の上に広げ、表面の水分を飛ばすようにして、塊が残らないように一粒ずつ素早くほぐす。
④ 米の温度が40℃程度になれば種麹をふりかけ、全体にまぶしつける。
⑤ 麹蓋と呼ばれる木の箱に入れ、発酵させる。(途中10時間に1回程度、温度や湿度の調節及び、全体に酸素を取り込ませるため、切り返しといって、菌糸で固まりかけてくる麹をほぐす工程があります。)
日本料理の基本調味料、みそやしょうゆ、みりんといった発酵調味料は、米麹を利用して作られています。まさに、ユネスコ無形文化遺産にも登録された日本料理の底辺は米麹にあるのかもしれませんね。
この麹菌は、アスペルギウス・オリゼー(ニホンコウジカビ)という、カビの一種です。麹菌は、近縁種・祖先ともいわれているアスペルギウス・フラバスという菌から長い時を経て品種改良・家畜化されてきた菌類だといわれています。
菌類を家畜化する、とは、あまりピンとこないかもしれません。もともと自然界に存在するアスペルギウス・フラバスは強い毒性や発がん性を持っているのですが、私たち日本人の祖先は、このような毒性の高い菌を上手に培養・品種改良し、美味しい発酵調味料や酒を造る麹菌(アスペルギウス・オリゼー)へと作り変えていったのです。
参考文献:日本生物工学会・麹菌物語
このようなことから、麹菌は日本にしか存在しない菌として、日本醸造学会により、2006年に日本の国菌と指定されました。
麹菌で発酵させた米麹には、でんぷんを分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するプロテアーゼなど、多くの酵素が含まれています。これらが蒸したり煮たりした米や大豆を分解することにより、味噌、醤油など多くの発酵調味料をつくりだしているのです。
麹菌には、よく知られている米麹(アスペルギウス・オリゼー)のほかに、醤油醸造用の緑色を帯びたアスペルギウス・ソヤ、焼酎醸造用の真っ黒なアスペルギウス・ルチエンシスなどがあります。
アスペルギウス・ルチエンシスには、クエン酸を作り出す働きがあります。防腐作用があるクエン酸を作り出す、アスペルギウス・ルチエンシスの働きにより、気温の高い沖縄で腐敗を心配することなく、泡盛を作ることができるということですね。
米麹の栄養価とは?
米麹
① ビタミンB群
米麹にはビタミンB1、B2、B6、葉酸、ビオチンといったビタミンB群が豊富に含まれています。ビタミンB群はあらゆる酵素の働きを支える、補酵素としての働きやエネルギー代謝に大切な働きを行っています。そのため、これらが不足すると疲労回復が遅れたり集中力の低下や食欲不振、肝機能の低下、めまい、皮膚炎などを発症したりするなど、さまざまな症状が引き起こされてしまうことが知られています。
② モリブデン
モリブデンは必須ミネラルの一つで、代謝にかかわる働きをしています。肝臓や腎臓に蓄えられており、体内の老廃物が分解されて尿酸となる働きを助ける、重要な役割を担っています。
麹をさらに加工して作る麹甘酒には、とても吸収のよいブドウ糖やオリゴ糖、アミノ酸などが多く含まれています。現在のように栄養管理を行うことができなかった江戸時代には、甘酒は夏の滋養強壮ドリンクとして好んで飲まれており、俳句の世界では、甘酒は夏の季語として使われています。
現在でも、甘酒は飲む点滴と言われています。夏の暑さが厳しい頃や病中病後の食欲が落ちている時には、甘酒を少しずつ召し上がるのもおすすめです。
麹でつくる甘酒
甘酒には、酒粕で作るもの、米麹とお粥で作るもの。また、米麹と水のみで作るものがあります。今回は簡単で濃度が安定しやすい、米麹と水のみで作る方法をご紹介します。
【材料】 出来上がり量 約300cc
・米麹・・・200g
・湯(50~60℃)・・・200cc
【作り方】
※1甘酒を作る時に使う容器は、あらかじめ熱湯を注いで消毒しておきます。
※2湯は一度沸騰させてから、50~60℃に冷ましておきます。
① 米麹は塊をほぐし、容器に移してから、適温に冷ました湯を注ぎ、全体を混ぜて表面を平らにならしておきます。
② ヨーグルトメーカーなどで50~60℃を保ち、6時間程度保温します。
③ 甘さをみて、好みの程度に仕上がった段階で保温を外し、冷ましてから冷蔵庫で保存します。
※ヨーグルトメーカーがない場合は、あらかじめ熱湯を注ぎ、あたためておいたステンレスジャーや炊飯器の保温機能を使っても作ることができます。炊飯器の保温機能を使う場合は取扱説明書を確認します。保温温度設定が60℃を超える場合は、蓋を開けた状態で固く絞った濡れ布巾をかけるなどして温度調整をしてください。
※冷蔵庫で保存する場合は、1週間程度を目安に食べきってください。一度に大量に作った場合は、小分けにして冷凍し、3ヶ月程度保存することができますよ。
米麹レシピのまとめ
日本の誇る調味料、味噌、醤油、みりん、また、日本酒や甘酒、塩麹と、米麹を使って作る食品は私たちの生活とは切ってもきれない関係にありますね。
今回ご紹介してきた甘酒は塩分を含まず、滋養に満ちています。日々のおやつとしていただいても良いですが、ブドウ糖を多く含み、取り過ぎると肥満にもなりかねません。
私たちの祖先が大切に守り抜き、育て上げてきたこれらの食品を上手に利用して、健康で楽しい日々を送れるとよいですね。