少子高齢化が進む日本で問題になっている、高齢者の一人暮らし。
核家族化やパートナーの入院など、やむを得ない事情で一人暮らしになった時、男性、女性それぞれに注意すべき点があります。
今回は特に男性が一人暮らしをするうえで気にかけておきたい点について、考えてみましょう。
目次
高齢者と日本のベビーブーム
日本では、第二次世界大戦後のいわゆる第1次ベビーブーム(1947年~1949年頃)が、その後第2次ベビーブーム(1971年~1974年)が起こりました。
第1次ベビーブームに産まれた世代は「団塊の世代」と呼ばれ、2023年には75歳前後を迎えています。
この年齢層や少し上の世代に誕生された方々の多くが、その後の核家族化や少子高齢化によって一人暮らしをやむなくされておられるのです。
高齢化の現状
下の図は、内閣府が発表した『令和4年度高齢者白書』から、「第1章 高齢化の状況」を示した表です。
この表を見てわかる通り、日本の総人口は令和3年10月1日現在12,550万人であり、そのうち65歳以上の人口が3,621万人(約28.9%)を占めています。
その中で男女比を見ると、男性が1,572万人、女性が2,049万人であり、女性が男性の約1.3倍であることが分かりますね。
総世帯数からみる高齢者の一人暮らし 男性と女性の比率
次に、同資料から一人暮らし世帯数別の男女比を確認してみましょう。
昭和65年(1980年)には、一人暮らしの男性が約19.3万世帯だったのに対し、女性は68.8万世帯でした。
これに対し、2020年には男性が230.8万世帯(1980年の約12倍)、女性が440.9万世帯(同約6.4倍)と増加しています。
一人暮らしの人口は今後もますます増加していくことが予想され、2040年には、男性が355.9万人、女性が540.4万人に達するとされています。
一人暮らしの高齢男性が直面する問題とは
高齢の男女ともに一人暮らしが増えていく中で、とくに男性に多い問題とはどのようなものがあるのでしょうか?
家事が苦手な方が多い
現在70代を迎えている男性は戦後の高度成長期を支えてくださっていた方々ですね。
連日の残業や休日返上での勤務が多く、家事を経験する時間がなかった方が多い世代です。
さらに、家事や育児は女性に任せ、男性は外で働くもの、男は家事をしない、ということが珍しくない時代でもありました。
そのため、いざ一人暮らしになってみると、料理、洗濯や掃除の方法がわからない、という方が多くなります。
とくに、掃除洗濯と比べ、不自由している方が多いのが料理だと言います。
掃除や洗濯は家電に任せることで、それなりにこなすことはできるのですが、こと料理となるとさまざまな食材を無駄なく使いこなし、となると、とたんに明日のご飯の炊き方がわからない、おかずの作り方を知らない、と、悩んでしまいます。
高齢男性は孤立しやすい?
長い年月、家族を支えるために働いてきた男性は、趣味を楽しむ時間や地域の行事に参することもなく定年を迎えてしまっているかたも多いと思います。
そのため、近隣との付き合いも希薄なまま定年を迎え、仕事以外に付き合うことができる友人を持つことなく、年齢をかさねていることがあります。
さらに、団塊の世代前後、あるいはさらに上の世代の方々が持つ「男性像」の中に、人に助けを求めない、つまりは個を確立していることを理想とする、というものがあります。
これは武士道にも通じるところがあるのでしょうが、困った時に家族や近隣に助けを求めることを躊躇してしまうことになります。
そのため、地域から孤立してしまったり、怪我や病気の発見が遅れてしまったりすることにつながってしまいます。
快適な一人暮らしを続けるために
このように、高齢男性が一人暮らしを続けるために、男性ならではの悩みがあることが見えてきました。
もちろん、高齢男性のすべてに当てはまるわけではありませんが、多くの場合、料理や近所づきあいに対して苦手意識を持っている男性が多いのは事実のようです。
ここからは、高齢の男性が、どのようにすれば安心して一人暮らしを続けていけるのか、利用できるサポートなどを考えていきましょう。
宅配のお弁当サービスやデイサービスを利用する
若いころは仕事が忙しく、料理を作ったことがない男性高齢者は多いものです。
また、持病などにより食事制限をやむなくされている場合はさらにハードルが高くなりますね。
このような場合には、お弁当の宅配サービスを利用してみてはいかがでしょうか?
とくに高齢者向けのお弁当サービスであれば、必要な食事制限に対応する食事や、高齢者が食べやすい味、柔らかさ、一口の大きさに考慮されたものがあります。
電話注文で配達してもらうことができるので、天候不順などで出歩きにくいときにもよいですね。
また、一人で食べるのは寂しい、という方には、デイサービスを利用するのもおすすめです。近隣の老人ホームのサービスのほか、自治体が昼食サービスや食事会を主宰していることもありますので、市区町村の広報誌を確認するか、地域包括センターに相談してみましょう。
趣味サークルやボランティア活動を通じた社会参加を
仕事を引退して時間があるという方は、新たな趣味を見つけてみるのもよいですね。
自治体のサービスやデイサービスを行っている老人ホームで、運動や手工芸のサークル活動を行っていることがあります。
また、経験を活かし、地域のボランティア活動で活躍できる場もあります。
中には地域の幼稚園や小学校と連携し、身近な野鳥や生物といった地域の自然の紹介や、歴史の語り部として活躍されている方、近隣の子ども達に昔ながらの遊びを教える活動をされている方などもいらっしゃいますね。
このような活動はシルバー人材センターや地域の役所などを通じて募集されていることが多いので、一度問い合わせてみるのもよいですね。
趣味やボランティア活動といった社会参加の場を持つことは、新たな生きがいを見つけることになります。
前出の令和4年度高齢者白書によると、男女を問わず65歳以上の51.6%が趣味やボランティア、収入を得る仕事といった社会活動に参加しているという結果が出ています。
さらに、社会活動に参加した高齢者とそうでない方を比べた場合、社会活動に参加した方の方が、生きがいを感じているという結果が得られています。
一人暮らしならではの孤立を防ぐためにも、社会活動への参加は大きな意義があると言えますね。
まとめ
高齢者の一人暮らしは増加の一途をたどり、若い世代とは違うさまざまな悩みがあります。
中でも家族の生活を支え、外で働くことに人生の大半を費やしてこられた男性は、身の回りの世話を自ら行った経験や、仕事以外での人付き合いが希薄な方の割合が多いのが現実です。
本コラムが定年後を健康に楽しく過ごすためのヒントになれば、幸いです。
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