水で戻すと、独特の香りと深いうま味のあるダシがとれる、干ししいたけ。戻したしいたけは切り分けて具材としても楽しむことができ、精進料理などの和食に欠かせない食材の1つです。実は、生のものと比べると、干ししいたけはケタ違いとも言えるほど栄養豊富。さらにうま味も増しており、料理に奥行きを生み出してくれます。今回はそんな干ししいたけの栄養価と、おすすめのレシピをご紹介します。
目次
干ししいたけとは?
干ししいたけは、名前の通りしいたけを干したもの。古くは古代中国で食べられていたものが、9世紀ころ日本に渡ってきたとされています。当時日本では、干ししいたけは中国への輸出用に作られており、以降16世紀にいたるまで日本の文献には登場しませんでした。16世紀になると当時の料理書などにたびたび現れるようになり、汁物や煮物、菓子などに使われていた記録が残っています。また江戸時代になると人工栽培が始まり、生産量・流通量ともに増え、大正時代にはお盆や正月など“ハレ”の日にだけ使う高級品として定着。栽培法や乾燥法の改良で品質も向上し、戦後全国に生産地が広がっていきます。
現在では、江戸時代から栽培が続いてきた歴史と、しいたけの菌を植えるのに適したクヌギの木が多いことから、干ししいたけの生産量1位は大分県。日本で食べられる日本産干ししいたけの約半分は、大分県で生産されています。
3種類の干ししいたけを使い分けよう
現在流通している干ししいたけは、大まかに3種類に分けられます。1つは「冬菇(どんこ)」と言い、カサが開き切っていない状態で収穫されたもの。香りやうま味が強く、肉厚なのが特徴で、しいたけ本来の形がしっかり残っているため、てんぷらや煮物など生のしいたけと同様の使い方ができます。
もう1つは「香信(こうしん)」。カサが開いた状態で収穫されたもので、冬菇に比べると平べったい形をしています。厚みがなく水で戻す時間が短くて済むので、幅広い料理に手軽に使うことができます。
「香菇(こうこ)」は、カサの開き具合が冬菇と香信の間のもの。大きく形がよく見えるため、贈答用としても用いられます。
干ししいたけの戻し方
干ししいたけは水やぬるま湯で戻してから使いますが、その前に日光に当てることで、含まれるビタミンDが増えることが研究からわかっています。時間がある時はカサのひだが上に向くように置き、1~2時間ほど日光にさらしてから戻すのがおすすめです。
水で戻す場合
1さっと洗って汚れを落とし、水気を切っておきます。
2ボウルや保存用袋に干ししいたけと水を入れます。水は少なすぎると戻りが悪いので、3枚あたり200~300㏄程度は入れておきましょう。
3常温だとうま味が出にくいので、冷蔵庫に入れて8時間以上寝かせます。できれば10時間以上置いておくと、よりうま味が出てくるのでおすすめです。
短時間で戻す場合
1さっと洗って汚れを落とし、水気を切っておきます。
2耐熱容器に干ししいたけと水を入れ、電子レンジで2~3分加熱します。
3余裕があればそのまま15~30分おいておきましょう。
短時間で戻す方法は便利ですが、やはりおいしさの点では冷水から時間をかけて戻すほうが格別なので、できるだけ時間に余裕をもって戻してくださいね。短時間で戻すときは、戻りの早い香信やスライスされているものを使うのもおすすめです。
干ししいたけの栄養価
生のしいたけにもさまざまな栄養素が含まれていますが、干す工程を経ることでより効率的に栄養素をとることができます。日本食品標準成分表(2015年)をもとに、私たちにとって最も身近な菌床栽培の生しいたけの栄養素と比較しながら、干ししいたけの栄養素をご紹介します。
食物繊維【生しいたけ4.2g→干ししいたけ41.0g】
しいたけには、胃腸内をゆっくり移動して血糖値の上昇をゆるやかにする水溶性食物繊維と、腸のぜん動運動を促し排便を助ける不溶性食物繊維が含まれています。生のしいたけに比べると、干ししいたけの食物繊維の含有量は約10倍。その中でもβグルカンと呼ばれる不溶性食物繊維が豊富で、免疫力を向上させるはたらきや、アレルギーの予防改善作用、抗がん作用が期待されています。
ビタミンD【生しいたけ0.4g→干ししいたけ12.7g】
しいたけを干すことにより著しく増加する栄養素のひとつが、ビタミンDです。生のしいたけに比べると、含有量は30倍以上。カルシウムやリンの吸収を促し、骨を強くするのを助けてくれます。最近では免疫力を高める効果も期待されており、ぜひ食べる前に日光に当てて、より効率的にとってほしい栄養素です。
カリウム【生しいたけ280g→干ししいたけ2100g】
カリウムはミネラルの一種。ナトリウムを排出することで、細胞のはたらきを正常に保ったり、血圧を調整したりする作用があります。干ししいたけでできるだけ多く摂取して、高血圧予防にも役立てましょう。
グアニル酸
グアニル酸はしいたけのうま味のもとになる成分。血小板の凝集を抑えるはたらきがあるとされ、血液をサラサラにしてくれるため、心筋梗塞や脳梗塞といった血栓症の予防効果が期待されています。生のしいたけにはほとんど含まれず、干ししいたけを戻す過程で生成されます。
レンチオニン
レンチオニンはしいたけの香気成分。生しいたけには含まれない成分で、干ししいたけを戻す際や熱を加える際に発生します。冷水で戻した方がよいのは、このレンチオニンに熱に弱い性質があることから。加熱する際もできるだけ短い時間で済ませましょう。血小板の凝集を抑える作用があり、血栓症予防に効果的とされています。
エリタデニン
エリタデニンは、水に溶けやすい性質を持つ、しいたけ特有の栄養素。血液中のコレステロール値を調整する働きが明らかになっており、コレステロール値を抑え、動脈硬化、高血圧などの予防にも効果があるとされています。
干ししいたけのおすすめレシピ
【干ししいたけのお吸い物】
干ししいたけを戻した水には、たくさんの栄養素が流れ出ています。戻し汁まで使いきり、栄養を余すところなく食べたいものですよね。今回は、干ししいたけも戻し汁もまるごと使ったレシピをご紹介します。
【材料】
・干ししいたけ 2~3枚
・水 350㏄
・しょうゆ 大さじ1杯
・酒 大さじ1杯
・塩 お好みで
・乾燥わかめ 一つまみ
・豆腐 1/4丁
・三つ葉 少々
1. 干ししいたけは前日の夜に水につけ、戻しておきます。
2. 翌日、干ししいたけを取り出して絞り、食べやすい大きさに切ります。
3.三つ葉と塩以外の材料をすべて鍋に入れ、ひと煮立ちさせます。お好みで季節の野菜などを入れてもおいしく召し上がっていただけます。
4.三つ葉を入れ、味を見て塩で整えたら完成です。
干ししいたけレシピのまとめ
乾燥させ、水で戻すことで、栄養もうま味も劇的に増える干ししいたけ。料理に使うには手間がかかるため、お盆や正月など特別な時にしか使わない方も多いかもしれませんが、戻し汁は冷蔵しておけば2~3日ほど保存することができます。時間がある時は少しだけ手間をかけて、汁物や炊き込みご飯、煮物などに利用してみてはいかがでしょうか。
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