豆腐の水分を抜いて作られる高野豆腐。乾物として親しまれ、まるでスポンジのようなその姿からは想像できないような、豊富な栄養を含んでいる食品だということはご存じでしたでしょうか?今回はそんな高野豆腐誕生の秘密や栄養素、美味しいレシピをご紹介します。
目次
高野豆腐の発祥とは?
高野豆腐の発祥には、2つの説があります。
1つ目はその名の通り、和歌山県北部に位置する、真言宗総本山、高野山金剛峯寺の僧侶により、精進料理の食材の一つとして作られたという説です。鎌倉時代、南国和歌山とはいえ、奥深い山中に位置する高野山は、冬になると夜間は氷点下まで冷え込みます。そんなときに用意してあった豆腐が凍結し、たんぱく質が繊維状になったところに気温が上がり、溶けて水分のみが抜けてしまいました。仕方なく炊いてみたところ、とても味が良かったので、保存食として食べられるように工夫し、今のように乾燥した高野豆腐が作られるようになったということです。江戸時代になると、作り方も改良され、保存がきく貴重なたんぱく源として、高野山を詣でる信者が土産物、贈り物として利用するようになりました。
2つ目の説は、信州から東北地方にかけて、同じように厳冬期に凍ってしまった豆腐を「凍み豆腐」として日常的に食べられていたものを、数日間干してしっかりと乾燥させたものを、保存食として利用するようになったという説です。
やがて、保存のきく高野豆腐(凍み豆腐)は、戦国大名 武田信玄らに重宝され、甲州街道沿いの村でさかんに生産されるようになりました。
明治時代になると、機械製造ができるようになり、通年安定して製造され、全国に広まるようになりました。
従来の四角いものだけではなく、現在ではダイス状に切ったもの、粉末状にしたものなど、多くの種類の高野豆腐が開発されています。
高野豆腐に含まれる栄養
豆腐を原料に作る高野豆腐は、豆腐同様多くの栄養素を含んでいます。
① たんぱく質
たんぱく質は三大栄養素の一つで、標準的な成人の場合、体重の約1/5を占め、筋肉や血液に含まれているだけではなく、エネルギー源としても利用されています。また、常に分解・生成を繰り返しているため、毎日取り続ける必要があります。
② レジスタントたんぱく質
たんぱく質を豊富に含む豆腐を凍結、乾燥する工程の中で、大豆のたんぱく質が食物繊維に似た働きを行う物質に変化します。
レジスタントたんぱく質には、コレステロール調整機能、食後の中性脂肪上昇抑制効果があることが確認されています。
③ カルシウム
カルシウムは私たちの体内に含まれる総量のうち、99%が骨や歯に蓄えられています。残り1%は血液や体液中に含まれ、止血を助け、神経伝達や筋肉の動きを促し、生命活動の維持を行う役割を果たす栄養素のひとつです。
④ 鉄
鉄は成人の体内に3~4グラム存在しています。そのうち約70%は血液の中のヘモグロビンに含まれ、体の隅々まで酸素を運ぶ役割を担っています。鉄分が不足すると、体の隅々まで酸素が行き渡らなくなるため、心臓は酸素をいきわたらせるためにより多くの血液を送り出さなければいけません。そのため、動機や息切れが多くなります。
残り25%は肝臓に貯蔵されていて、必要に応じて放出されています。
⑤ カリウム
カリウムは主に私たちの細胞内液に含まれ、過剰に摂取したナトリウムを排泄し、むくみを解消して血圧を正常に保つ働きがあります。また、近年の研究ではカルシウムが骨に沈着するのを助け、骨粗しょう症予防に一役かっていることがわかってきました。
高野豆腐のおすすめメニュー
高野豆腐の射込み煮
高野豆腐というと、炊き合わせや卵とじなど多くのおいしいメニューがありますが、成長期の子どもや男性には少し物足りないと思われることもあります。今回は豚肉と玉ねぎを肉団子状にして詰めましたが、海老や鶏肉を叩いたものを利用しても、美味しく作ることができます。
様々にアレンジして、ご家庭の味を作り出してくださいね。
【材料】 4人分
・高野豆腐 8枚
・豚ひき肉 150g
・玉ねぎ 1/4個
・しょうが 1/2かけ
・片栗粉 大さじ1
・塩 1つまみ
・だし 600cc~
・いんげん豆など 適宜
【作り方】
① 高野豆腐をたっぷりの水に浸けて戻し、しっかりと水分を切っておきます。(※)
② しょうがはすりおろし、玉ねぎはみじん切りにして、塩・片栗粉とともにひき肉に混ぜ、肉団子を作る要領でしっかりと練り混ぜます。
③ 高野豆腐を半分に切り、ポケットをつくるように中央を切り開きます。
④ ポケットになった部分に②の肉団子を詰めて、出汁を加えて煮ます。(※)
⑤ 器に盛り、茹でたいんげん豆などを添えます。
(※)高野豆腐は熱湯で戻したり、塩分が入っていない出汁で煮たりすると煮崩れる可能性があります。水またはぬるま湯で戻し、煮るときはあらかじめ塩分を加え、味を整えた出汁を利用して煮てください。
高野豆腐レシピのまとめ
豆腐を乾燥・凍結することで生まれる、独特の食感や栄養成分は、とてもヘルシーな食材でしたね。
乾物として、常温で保存しておくことができるので、ちょっと一品足りないと思う時にも、すぐに煮物などを用意することができるのも魅力の一つです。
ぜひ、日々のメニューの一つに加え、健康な毎日を過ごす助けになるとよいですね。