初夏を迎えるひととき、元気をもらえそうなオレンジ色にコロンとしたかわいいビワ。夏の始まりを感じさせる果物の一つですね。優しい甘味で食べやすいビワは、果実だけではなく葉にも優れた薬効が含まれています。今回はそんなビワの健康効果や栄養価、作り置きできるちょっとおしゃれなデザートをご紹介します。
目次
ビワとはどのような果物?
ビワは中国南西部が原産と言われています。日本には9世紀頃持ち込まれたとされ、現在は本州南西部、四国や九州など、温かい地方で自生しているのがみられます。また、農作物として、長崎県、和歌山県、鹿児島県、香川県や愛媛県など主に西日本を中心に地方で栽培されています。
大きくてかたい葉は長いものだと20cmほどにもなり、この葉や実が楽器の琵琶(びわ)に似ているため、ビワという名がついたとされています。葉は琵琶葉、種子は琵琶核として古くから民間療養の薬として利用されており、咳止め、胃炎やむかつきを鎮める効果がある薬用茶として愛飲されてきました。
ただし、梅と同じバラ科のビワは葉や種子、未熟果にアミグダリンという物質を含み、直接摂取すると胃酸と反応して猛毒の青酸を発生させるため、生薬として利用されているとはいえ、果肉以外の部位の取り扱いには注意が必要です。まさに「毒と薬は紙一重」ということですね。
また、よく「庭にビワを植えてはいけない」と言い伝えられていることをご存じでしょうか?これは、今ご紹介したことに加え、ビワの木は成長が早くて居室に日光が当たらなくなること、木刀にも利用されるほど木自体が固く、剪定に手がかかることなどを理由としているのではないか、ということです。
ビワの栄養価は?
① βカロテン
βカロテンは体内でビタミンAに変化します。ビタミンAは発育を促し、皮膚や粘膜を保護して免疫力の向上を担っています。また、目の網膜の主成分であるロドプシンという物質の原料になり、薄暗いところでも光を感じ、視力を維持する作用があります。
生のビワ100gあたり、810㎍のβカロテンが含まれています。
② βクリプトキサンチン
βクリプトキサンチンとは、ビワやミカンに含まれるオレンジ色の色素のことで、カロチノイドの一種です。同じカロチノイドの一種であるβカロテンなどと比べ、研究途上の物質ですが、体内で活性酸素や発がん性物質の働きを弱める働きがあることが知られています。
そのほかにも、骨粗しょう症予防、糖尿病の進行の抑制、美肌効果などが期待されています。
生のビワ100gあたり、600㎍のβクリプトキサンチンが含まれています。
③ カリウム
カリウムは主に私たちの細胞内液に含まれ、過剰に摂取したナトリウムを排泄し、むくみを解消して血圧を正常に保つ働きがあります。また、近年の研究ではカルシウムが骨に沈着するのを助け、骨粗しょう症予防に一役かっていることがわかってきました。
生のビワ100gあたり、160mgのカリウムを含んでいます。
④ クエン酸
あまり強い酸味を感じないビワですが、クエン酸も含まれています。クエン酸は私たちが食べたものを体内で分解し、エネルギーを生成する働きを助けます。
また、体内に溜まった疲労物質である乳酸を、炭酸ガスと水に分解して排せつする働きを促進させます。これをクエン酸サイクルといい、体内の脂質や酸性物質である乳酸を減らし、血液をサラサラに保つ働きがあります。
⑤ クロロゲン酸
クロロゲン酸はコーヒーから発見されたポリフェノールの異種で、強い抗酸化作用があることが知られています。クロロゲン酸には肝臓に脂肪が蓄積することを防ぐ働きや、体内で乳酸やアミノ酸から糖を生成する働きを抑え、糖尿病を予防する効果があります。
ビワの選び方
皮に傷がなくピンと張りがあり、きれいなオレンジ色をしているもの、表面の産毛がしっかりとついているものが良品です。また、冷蔵庫など、低温にあたると痛みが早くなります。
ビワのおすすめレシピ
【ビワの白ワインコンポート】
せっかく買ったビワが固すぎたり、たくさん入手して一度には食べきることができなかったりする場合、コンポートにしておくと、夏の暑い日のおやつにも、ひんやりと冷たい美味しさを楽しむことができます。ビワは日持ちがしない果物なので、新鮮なうちにお試しくださいね。
【材料】 5個分
ビワ 5個
白ワイン 200cc
水 100cc
砂糖 50g
寒天 1g
レモン汁 少々
【作り方】
① びわはきれいに洗い、皮ごと縦2つ割りにして種を取り除いてから皮をむき、レモン汁少々を入れた水をくぐらせ、変色を防いでおきます。種のまわりの薄い膜は口に残るので、ティースプーンでこそげとっておきます。(最後に皮をむくことで、果肉が崩れにくくなります)
② 鍋に白ワインと水を沸かし、沸騰したら①のビワ、砂糖を入れて10分程度弱火で煮て粉寒天を振り入れ、混ぜ溶かします。
③ 寒天が溶けたらバットなどに移し、冷めるまでおいて味をなじませる。
※白ワインが手に入らない場合、水300ccにレモン汁を加えたものでも、おいしく作ることができます)
まとめ
優しくて元気が出そうなオレンジ色で八百屋さんの店頭を彩るビワ。旬のひとときだけ食べることができる、初夏の味ですね。コロンとかわいいその一粒には、実にさまざまな栄養を秘め、古くからその薬効は人々の知るところとなり、漢方薬としても利用されてきました。
庭に植えてはいけない、と言われつつも、郊外の一軒家に植えられている姿を見るビワ、それだけ人々に愛され続けているのですね。