おせち料理にも欠かせない、冬の味覚、ゆり根。調理方法により、シャキシャキ、ホクホク、もちもち、とろとろと、さまざまな食感を楽しむことができます。また、ゆり根は、乾燥した冬の寒さで傷んだ私たちの体によい効能を秘めています。今回は優しい味わいのゆり根について、ご紹介します。
目次
ゆり根とはどんな食材?
ゆり根は、その名のとおりユリ科の植物の、鱗茎(りんけい)という、球根にあたる部分のことです。広い意味ではユリ科の植物の鱗茎すべてを指しますが、アクが強い品種が多く、多くの種類は食用には適していません。
私たちが食用として食べることができるのはオニユリ、コオニユリ、ヤマユリ、カノコユリで、市場に一般的に出回っているのはコオニユリというオレンジ色の花を咲かせる品種になります。
美しい花を咲かせ、世界中で愛されているユリですが、ゆり根を食用とするのは日本と中国あたりのみのようです。あのように大きな花を咲かせる栄養素を蓄えているため、白い見た目とはうらはらに、栄養価が高く、中国では生薬としても利用されています。
日本でも古くから美しい花が愛されていましたが、本格的に食べられるようになったのは江戸時代頃からのことで、北海道田戸志村でコオニユリを食用として栽培するようになったのが始まりだとされています。現在でも、その生産量は北海道が全国の約95パーセントを占めています。
ゆり根の栽培には、約6年、毎年葉が枯れる冬に掘り出して違う畑に植え替えるなど、大変な手間がかかっているということです。栄養が豊富な畑に植え替えることにより、しっかりとでんぷんを蓄えた、良質なゆり根が作られているということですね。
旬は11月ごろから早春にかけてとなります。
ゆり根の栄養価とは?
古くから「百合(びゃくごう)」という生薬としても利用されてきたゆり根。
中医学では、呼吸器に潤いを与えて乾燥からくる咳を鎮めるほか、精神を安定させる効果があるといわれ、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)という漢方薬にも処方されています。
栄養学上、どのような栄養素が含まれているのかをご紹介します。
① 糖質
糖質はたんぱく質、脂質とともに3大栄養素の一つに数えられています。糖質はビタミンB1の力を借り、1g4kcalのエネルギーを作り出しています。そのため、マラソンや激しい運動をする前に取るとよいですよ。また、脳にとっては糖質が大切な栄養源になっています。
とはいえ、取り過ぎると脂肪として蓄積されるため、取り過ぎには注意が必要です。
② カリウム
カリウムはナトリウムの排せつを促します。そのため、取り過ぎて塩分を薄めるために体内に溜まった水分、いわゆるむくみを解消します。さらに、薄まって量が増えた血液を全身に送り届けるために上がってしまった血圧を正常に戻す働き、つまり高血圧の解消に、一役買っています。
また、体内でナトリウムと共に筋肉を収縮させる働きを担っています。
③ マグネシウム
マグネシウムは、私たちの体内にある約300種もの酵素の働きを促すミネラルのひとつです。
また、たんぱく質や核酸が正常に合成されるのを助け、肌や髪を健康に保つ働きがあるほか、エネルギー代謝を上げ、ダイエットに効果的なことから、美容には欠かせないミネラルだといわれています。
④ 鉄
鉄は赤血球の中にあるヘモグロビンに組み込まれ、全身に酸素を送り届ける働きがあります。鉄分が不足すると鉄欠乏貧血を引き起こし、動悸や息切れ、めまい、冷え、食欲不振など、多くの不調が現れることが知られています。
鉄は、吸収率が悪く、亜鉛や銅、マグネシウムなど多くのミネラルやビタミンをバランスよく取ることが大切です。
⑤ グルコマンナン
グルコマンナンはこんにゃくなどに含まれる水溶性の食物繊維で、ゆり根にも含まれています。胃腸の調子を整え、余分なコレステロールを体外へと排泄し、血糖値を抑える働きがあるとされ、生活習慣病の予防にも役立ちます。
ゆり根のおすすめレシピ
【ゆり根の卵とじ】
ゆり根は加熱時間を調整することで、ホクホクにも、柔らかくとろとろとした食感にも仕上げることができます。体調やお好みで調整してくださいね。
【材料】 2人分
・ゆり根・・・1個
・卵・・・2個
・出汁・・・150cc
・しょうゆ・・・小さじ1~
(あれば薄口しょうゆ)
・塩・・・少々
・みりん・・・小さじ1
・三つ葉・・・2~3本
【作り方】
① ゆり根は一枚ずつ剥がし、茶色い部分を削り取ります。そのあときれいに洗っておきます。
② 三つ葉は洗って3cm程度の長さに切っておきます。
③ 鍋に出汁を沸かし、しょうゆ、みりん、塩で吸い物よりも少し濃いめに味を調えておきます。(あとで卵が入るので、ここでは少し濃いめにしておきます。)
④ ③にゆり根を入れ、好みの固さよりも少し硬い程度まで煮ます。
⑤ 卵を割りほぐし、④にまわしかけてざっとひと混ぜし、好みの加減になるまで火を通します。
⑥ 器に盛り、②の三つ葉を散らして出来上がりです。
ゆり根レシピのまとめ
おせち料理によく利用するゆり根。普段から食卓に登場していますか?
今回ご紹介した卵とじだけではなく、みそ汁の具材や和え物、唐揚げなどにしてもおいしく召し上がることができますよ。呼吸器の乾燥は声が出にくくなるだけではなく、風邪などの疾患をも招きかねません。しっかりと潤いを与えて、冬を楽しく乗り切れるとよいですね。