目次
栄養豊富なたらこについて
たらこは魚のタラの卵巣およびそれを加工した食品を指しますが、一般的には、スケトウダラ(スケソウダラ)の卵巣を塩漬けにした食品がたらこと呼ばれています。
たらこの歴史
1696年、遠藤元閑の記した「茶湯献立指南(ちゃのゆこんだてしなん)」に、「鱈の子は北国より出る名物也」とあり、少なくとも江戸時代の前期には鱈(タラ)の卵巣が食されていたと考えられています。1903年頃に北海道でマダラの漁獲が不振であったため、スケトウダラの漁が発展し、卵巣(魚卵)の加工が始まりました。1905年に出版された奥村繁次郎の料理本には「冬季より二、三月頃へかけて、何処の塩魚店の店頭にも並んで…」と記載されており、少なくとも明治の中期以降は、塩漬けにされたたらこが一般的に食されていたと考えられます。
たらこの親はスケトウダラ
スケトウダラはスケソウダラとも呼ばれ、体長は60㎝前後で細長く、体側には不規則な筋状の模様があります。日本海北部や北海道で多く獲れ、産卵期は11月から5月で北へ行くほど遅くなります。一般的に「タラ」というとマダラかスケトウダラを指しますが、一般的に切り身などで売られているものはマダラが多く、スケトウダラの身は干物や練り製品に加工され、スケトウダラの卵巣(魚卵)がたらこやからし明太子の材料として使われます。
スケトウダラの卵巣は成熟度によって呼び名が変わります。がむ子(未熟)→真子(成熟)→目付け(過熟)→水子(完熟)と変化し、たらこの原料として最も適しているのは真子の段階です。真子は粒子がしっかりとして詰まっており、全体の張りや色つや、食感も最適です。がむ子(未熟)では皮に透明感や張りがなく、目付け(過熟)では水分が皮の中に入って水泡ができ、水っぽい張りのない食感となります。さらに水子(完熟)の段階になると海水が入り込んで卵の中が液状になっており、ふりかけなどに加工されます。
たらこに含まれる栄養
たらこは塩漬けにされていることから塩分が多いイメージが強く、栄養について注目されることは少ない食品ですが、魚の卵であり多くの栄養素を含んでいます。
ナイアシン
ナイアシンはビタミンB 群の仲間です。ナイアシンはエネルギーを産生するときの補酵素として不可欠であり、皮膚や粘膜の状態を健康に保つためにも重要です。ナイアシンが不足すると食欲がなくなったり、皮膚の発疹などがおこることがあります。さらに不足した状態が続くと皮、膚がうろこ状にあれる皮膚炎や下痢などをおこすペラグラという欠乏症を引きおこすことがあります。たらこ約1/3腹で、1日のナイアシン必要量を摂取できます。
パントテン酸
パントテン酸はビタミンB群の仲間で、エネルギーを産生するときの補酵素として働きます。また善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールを増やしたり、ホルモンや抗体の産生にもかかわっています。
ビタミンB12
ビタミンB12は赤い色の水溶性ビタミンで、葉酸とともに赤血球のヘモグロビン合成にかかわっています。不足すると健康な赤血球が作られず、悪性貧血の原因となることがあります。加齢とともに不足しやすくなるビタミンのひとつといわれ、うつ症状やアルツハイマー型認知症にもかかわっているとされて研究が進められています。
ビタミンE
ビタミンEは脂溶性のビタミンです。抗酸化作用によって体内の脂質の酸化を防いで、生活習慣病や老化と関連する疾患の予防に効果が期待されています。
セレン
セレニウムとも呼ばれます。肝臓や腎臓に含まれ、抗酸化作用で組織細胞の酸化を防ぎます。また、体内に入った有害金属と結合して毒性を消す働きや、免疫力を強化する働きもあります。
EPA・DHA
人の体内ではほとんど作ることができない必須脂肪酸の一種です。EPA(エイコサペンタエン酸)は赤血球の柔軟性を高め、血液粘度を低下させる働きがあります。DHA(ドコサヘキサエン酸)は脳や神経の発達に必要です。
塩分とプリン体
たらこに含まれる栄養成分のうち、過剰摂取に注意が必要なのが塩分とプリン体です。ナトリウムは人の体に必要不可欠な栄養素ではありますが、摂り過ぎによって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。高血圧や腎臓疾患など塩分を控える必要がある場合、たらこの食べ過ぎには注意が必要となります。たらこの塩分が気になる場合は、冷たい氷水に20~30分浸けおくと塩抜きをすることができます。ただしこの塩抜きができるのは、ひと腹ずつ形の整った、皮が破れていないたらこに限ります。また痛風や高尿酸血症の持病がある場合は、プリン体の摂取には注意が必要です。プリン体も人体にとって必要な成分ではありますが、プリン体の過剰摂取や遺伝的体質によって痛風を発症することがあります。たらこを含め魚卵にはプリン体が比較的多く含まれているので、かかりつけの医師や管理栄養士の指示に従って、適量を摂取しましょう。
薬膳の効果
胃を温めて消化を促し、活力を増す効果があります。
たらこのおすすめレシピ
新鮮なたらこは皮に張りとツヤがあります。適度な大きさで身が詰まっているものを選び、水っぽく見えるものは避けましょう。表面に見える細くて黒っぽいスジは血管で、食べても問題はありませんが口当たりが悪いことがあります。たらこは発色を良くする目的で着色料が添加されていることもあります。無添加・無着色のものは淡い紅色で自然の色に近いですが、漬け込むときの調味料によっても色は変わるため、色だけで鮮度を見分けるのは難しいといえます。たらこは生ものなので購入したら冷蔵庫で保管し、できるだけ早く食べきるようにしましょう。ひと腹ずつラップに包んで冷凍することもできますが、解凍の状態によっては水っぽくなったり、食感や風味が変わることがあります。
【タラモサラダ】
【材料】(3~4人分)
・たらこ 2腹(35g)
・じゃがいも 4個(400gくらい)
・オリーブオイル 小さじ1
・マヨネーズ 大さじ3
・めんつゆ(3倍濃縮) 小さじ1
・塩、こしょう 適量
【作り方】
1.じゃがいもは洗って皮をむき、適当な大きさに切ります。耐熱ボールに入れて電子レンジでやわからくなるまで加熱します。
2.熱いうちにオリーブオイルを入れ、じゃがいもを粗くつぶして冷ましておきます。
3.たらこは半分に切って、中身を包丁の背でしごくように出しておきます。
4.3にマヨネーズとめんつゆを混ぜ、じゃがいもを和えます。
5.塩、こしょうで味をととのえてできあがりです。
※ めんつゆは商品によって濃縮率が異なります。また、たらこの塩分も商品によって異なるので、味付けはめんつゆと塩の量で調節してください。
たらこレシピのまとめ
たらこはスケトウダラの卵巣を塩漬けにした食品です。魚の卵であり、多くの栄養素を含みます。そのままごはんと一緒に食べるだけではなく、他の食材とあわせて料理に応用することもできます。塩分やプリン体などに注意が必要な場合は、適量の摂取を心がけましょう。
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