日本の高齢化、核家族化の増加とともに増えている、一人暮らしの高齢者人口。
高齢のご両親が何らかの理由で一人暮らしをせざるを得なくなったとき、子どもとして、どのような対策を施せばよいのでしょうか?
今回は、高齢者が安心して暮らせるようになるヒントを考えてみたいと思います。
目次
高齢者の一人暮らしは増えている?
高齢化が進む日本。ご両親だけでなく、ご自宅周辺でも高齢夫婦のみの世帯や高齢者が単身で暮らす家庭が増えていると感じませんか?
実際のところ、現在の日本の人口や高齢者の割合はどのようになっているのでしょうか?
日本の高齢化は進んでいる
内閣府が発表した、『令和4年版高齢社会白書』「第1章 高齢化の状況」によると、令和3年10月1日現在、日本の人口は、1億2,550万人、そのうち、65歳以上人口は3,621万人、高齢化率(総人口に占める高齢者の割合)は28.9%となっています。
65歳以上の割合が約3.5人に一人ということになり、この数字は今後も増加していくことが考えられています。
一人暮らしの割合
また、令和4年版高齢社会白書によると、65歳以上の者がいる世帯は令和元年現在、2,558万4,000世帯と、日本の全世帯数(5,178万5,000)世帯のうち、49.4%を占めています。
核家族化が進み、親子や孫と数世代の家族構成の世帯もあるものの、夫婦二人の世帯及び高齢の単身世帯がそれぞれ約3割を占めているということです。
夫婦二人の世帯であっても、パートナーが入院したり施設に入ってしまう、また、他界してしまったりするなどして一人暮らしになる方も増え、今後、さらに高齢者の一人暮らしの割合は高まっていくことが想像できます。
高齢者が一人暮らしをして起こる問題
だれにも自分の生活ペースを乱されることなく自由を満喫できるのが、一人暮らしの一つの魅力ですね。
しかし、高齢者の一人暮らしには、若い世代の一人暮らしにはない、さまざまな問題や注意点も考えられます。
ここからは、高齢者の一人暮らしにおいてどのような点が問題になるのかを考えてみましょう。
生活の質の低下
いままで毎日きちんと身だしなみを整え、仕事や家事に奔走していた方でも、年齢をかさね、仕事や子育てから引退する日がやってきます。
引退後は、何となくテレビやインターネットを閲覧するなどして一日を過ごす時間が増えることもあるでしょう。
特別な趣味ややりたいことがない場合、生活に対する意欲が次第に低下し、ただぼんやりと日々を過ごしてしまうことも…。
外出しないと身だしなみを整えず、また、気の向くままに寝たり起きたりして、昼夜逆転してしまうこともあり得ますね。
その結果、身体機能が低下し、例えば風邪を引きやすくなったり、気力が低下してしまったりすることがあります。
栄養バランスが乱れる
また、あまり動かないため空腹感が得られず、食事を抜いてしまったり、インスタント食品やお菓子、簡単な麺類のみなどで済ませてしまったりすることがあります。
その結果、健康を維持していくために必要なたんぱく質やミネラルなどが不足し、栄養失調に陥ります。
外出しないことからくる運動不足と栄養不足が重なり、フレイル状態を引き起こし、ひどくなると寝たきりになってしまうことも考えられます。
近隣からの孤立
さらに、一日のほとんどを自宅ですごすようになると、近隣との付き合いが希薄になっていきます。
日々誰とも話すことなく過ごすことで、刺激のない単調な生活が続き、軽度の認知症を患っている場合は、進行が早まることがあります。
また、地域の行事や災害時の避難などへの対応の遅れや病気、認知症の進行の発見が遅れてしまうことがあります。
犯罪にまきこまれやすくなる
内閣府発表の令和2年度高齢者白書によると、特殊詐欺の被害者の約8割が65歳以上の高齢者であるということです。
一人暮らしの高齢者の場合、例えばオレオレ詐欺の電話がかかってきたとしても、身近に相談することができる知人や家族がいないことも、被害を増大させている原因の一つかもしれませんね。
高齢者の一人暮らしを支えるためにできる対策とは
このように、高齢者が一人暮らしを続けていくためには身体、地域、防犯と、さまざまな問題があります。
だからといって、一人暮らしを続けざるを得ない方も多いことかと思います。
ここからは、高齢者が安心して一人暮らしを続けていくために、どのような対策を取ればよいのかを見ていきましょう。
地域包括センターを活用する
地域包括センターとは、医療、福祉、健康、また、生活そのものといった様々な面から、65歳以上の高齢者をサポートするための、いわば相談窓口のことです。
一人暮らしでなくとも、例えば生活に何らかの支障が生じてしまったとき、介護が必要になった方には介護サービスの相談を行ったり、成年後見制度のサポートや、生活に関する困りごとの解決を行うためのサービスの紹介を受けたりすることができます。
なお、地域包括センターに何らかの相談をする場合、相談そのものは無料です。
サービスを受ける場合は有料となり、内容や要介護度により料金は異なりますので、確認が必要です。
また、離れて暮らす家族が居住している地域のセンターではなく、高齢者様が居住する地域を管轄するセンターに相談する必要があります。
デイサービスや地域のサークル活動に参加する
外出することを億劫だと考える方や、地域的、身体的な理由で外出が困難な方の場合は、送迎付きのデイサービスや地域のサークル活動に参加するのもよいですね。
同世代、同じ趣味を持つ友人を新たに持つことができると、気持ちにも張り合いが出て、日々、規則的な生活を送ることができるようになります。
出かけることで否応なしに体を動かすため、筋力の維持にも役立ちます。
また、さまざまな人の目があるため、ちょっとした病気の兆しや認知症の進行を早期に発見できるほか、気軽に相談できる相手ができることで、何らかのトラブルに見舞われた場合も早期に解決したり、特殊詐欺の被害を未然に防いだりすることができるようになります。
見守りサービスを活用する
デイサービスやサークルは、活動がない日もありますね。そんな日は、一日誰とも会わずに過ごしてしまうこともあり得ます。
もし食材の買い出しや調理に自信がなく、食事に不安がある方であれば、宅配のお弁当サービスを利用してみてはいかがでしょうか?
栄養バランスが整ったお弁当を食べて体調を整えることができるほか、配達員と顔を合わせて話すことが、見守りサービスにつながります。
業者によってはお弁当の配達がない日でも、見守りサービスのみの訪問を行っているところもあります。
このほかにも、地域のボランティアや宅配業者による見守りサービスもあります。
お住まいの地域により、見守りサービスを行っている業者が違いますので、先ほどご紹介した地域包括センターや地域の民生委員などに相談してみてくださいね。
離れて暮らす家族と地域とのつながりを作っておく
このように、高齢者の一人暮らしを支える対策はいくつかありますが、最も大切なのは、サービスを行う業者や近隣の民生委員、友人と、離れて暮らす家族が密に連絡を取れるようにしておくことです。
例えば、持病の有無やかかりつけ医の情報を共有しておくことで、急な体調の変化や災害時など、家族がすぐに駆け付けることができなくても、スムーズな対応をお願いすることができますね。
まとめ
今回は、高齢者が安心して一人暮らしを続けていくうえでとっておきたい対策について、ご紹介しました。
高齢になって一人暮らしになる、ということは、いずれは私たちの誰もが直面し得る、大きな問題です。
さまざまな場面を想定し、対策を講じて、地域全体で高齢者様を支え、安心して暮らしていけるとよいですね。
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