混ぜると増えるネバネバと、特有の香りが特徴的な、日本独自の発酵食品・納豆。食感や香りが苦手という方も多い一方で、健康にいいイメージからできるだけ毎日食べているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際にたんぱく質や食物繊維、そして納豆ならではのナットウキナーゼなど、健康の維持に役立つさまざまな栄養素が含まれています。今回はそんな納豆の栄養素と、栄養を余すところなく食べられるおすすめレシピをご紹介します。
目次
納豆とはどんな食材?
納豆という名前の付く食べ物には、「糸引き納豆」「寺納豆(塩辛納豆、唐納豆とも)」「甘納豆」の3つがあります。寺納豆は麹菌による発酵食品で、糸は引かず、強い塩気とうま味が特徴。名前の通りお寺のお坊さんによって作られたという一説が残されています。甘納豆は和菓子の一つで、発酵食品ではない全く別の食べ物です。
私たちにとって一番身近な納豆は、「糸引き納豆」でしょう。普段スーパーなどで手に入れることができ、大粒・中粒・小粒・極小粒のほか、ひきわり納豆など、幅広い豆の大きさの納豆を楽しむことができます。最近では黒豆を使った「黒豆納豆」も登場し、納豆特有の香りが少なく、やさしい甘味があるのが特徴です。
糸引き納豆が大豆からできている発酵食品であることはよく知られていますが、実際にはどのような工程を経て納豆に変わるのでしょうか。簡単に言えば、大豆の表面に「納豆菌」が付着し、大豆の成分を分解・合成することで出来上がります。この分解・合成を通すことで、大豆に含まれるたんぱく質がアミノ酸に変わり、あの独特の粘りや香りが発生。ナットウキナーゼなど納豆ならではの栄養素も、この工程を経ることで私たちの口に入ります。
納豆の歴史について
日本における納豆の歴史は古く、一説には弥生時代には同様の食べ物が食べられていたのではないかと言われています。文字として正式に歴史に登場するのは平安時代、食文化や風俗について書かれた随筆『新猿楽記』の中でのこと。おいしいもの好きの女性が好きな食べ物の一つとして、納豆が挙げられています。ただしこの頃食べられていた納豆は現在の私たちにとって身近な「糸引き納豆」ではなく、中国から製法が伝わった「塩辛納豆」の可能性が高いようです。
「糸引き納豆」については、確実な登場は室町時代に書かれた「精進魚類物語」ですが、その発祥にはいくつかの説があります。
1つ目の説は、納豆と言えば真っ先に思い浮かぶ茨城県水戸市のもの。八幡太郎義家(はちまんたろうよしいえ)という通称でも知られる平安時代の武将・源義家が奥州へ遠征に行った際のお話です。源義家は遠征先の農民に、戦いに欠かせない馬の飼料となる大豆を求めました。家来がその大豆を藁につつんでおいたところ、糸を引いているのを発見。食べてみるとこれがおいしく、納豆のもとになったとされています。
そのほかにも、秋田や熊本にも納豆発祥説が伝わっていたり、聖徳太子が生み出したという説が残されていたり。未だにどの説が確かなのかは明らかになっていませんが、全国各地にこうしたお話が残っているのは、納豆が日本に古くから根付いていたからこそなのかもしれませんね。
いろいろな食べられ方
・納豆汁
江戸時代には一般的だった納豆の食べ方。野菜や油揚げの入った味噌汁に納豆を入れるというもので、冬の季語として当時の俳句などにも残されています。現在では東北地方で主に食べられ、特に秋田の郷土料理になっています。
・そぼろ納豆
茨城県水戸市の郷土料理。納豆に切り干し大根を入れて醤油などで味付けした料理で、そのままおつまみとしても、お茶漬けにしても楽しまれています。
・納豆餅
主に山形や宮城で食べられる餅の食べ方。茹でて柔らかくした餅に納豆を絡め、砂糖やダシ醤油などで味付けします。
・さくら納豆
熊本の郷土料理で、細かく刻んだ馬刺し用の馬肉と納豆を混ぜ合わせたもの。浅葱やネギを散らし、最後にうずらの卵黄を乗せて、おつまみや一品料理として食べられています。
納豆に含まれる栄養価
「畑の肉」と呼ばれることもあるほど、植物性たんぱく質が豊富な納豆。そのほか炭水化物や脂質、ミネラル、ビタミン、食物繊維などもバランスよく含まれているのが魅力です。
ナットウキナーゼ
ナットウキナーゼは、納豆のネバネバ部分に含まれるタンパク質分解酵素。血管の中で血液が固まると血栓ができ、血栓症を引き起こすことがありますが、ナットウキナーゼは血栓の主成分フィブリンに直接はたらきかけ、溶解させる作用があることで知られています。高血圧の方やコレステロール値・中性脂肪値が高い方は、積極的に摂取したい栄養素のひとつです。
大豆イソフラボン
化学的な構造がよく似ていることから女性ホルモン様物質とも呼ばれ、体の中で女性ホルモンに近い役割を果たします。骨粗しょう症や乳がんなどの予防に効果的とされ、女性ホルモン分泌の減少による更年期障害を緩和・改善するはたらきもあります。
ポリアミン
人間の体内では細胞などに存在している物質で、細胞の分裂や増殖に欠かせない役割を果たしています。細胞の新陳代謝に必要なため、アンチエイジングにも効果的。加齢に伴い細胞内の量が減少し、老化が早まることが分かっていますが、食べ物からでも十分に摂取することができるので、納豆などを食べて積極的に補いましょう。
ビタミンK2
ビタミンK2は、正常な血液のはたらきを維持する作用があります。また最近の研究では、骨の形成を促す作用もあることがわかり、骨折予防にも効果的とされています。
納豆のおすすめレシピ
【納豆の冷製パスタ】
納豆に含まれる栄養素のほとんどは熱に影響を受けませんが、ナットウキナーゼなどの酵素は長時間の熱や高温には持ちこたえられないとされています。せっかくなら熱を加えない食べ方で、栄養素をまるごと食べられるレシピがおすすめ。今回は納豆を使って和風パスタに仕上げる「納豆の冷製パスタ」をご紹介します。
【材料】
・納豆 1パック
・パスタ 100g
・めんつゆ お好みで
・卵 1個
・大葉、ねぎ、みょうがなどの薬味 お好みで
・刻みのり 少々
1. パスタは規定の時間で茹で、ざるにあげたらさっと水にさらし、冷蔵庫で冷やしておきます。
2. 納豆を混ぜ、薬味を刻んでおきます。
3.パスタはめんつゆと混ぜ合わせておきます。
4.最後に納豆、薬味、卵の卵黄を乗せ、のりを散らして完成です。
納豆レシピのまとめ
ナットウキナーゼなどの酵素以外は、納豆菌をはじめとして熱に強い栄養素も多く含まれているので、においやネバネバが苦手な方は加熱して食べるのもおすすめ。納豆独特の風味が抑えられ、豆らしいホクホク感を楽しむことができます。納豆が苦手な方も得意な方も、ぜひ日本古来の発酵食品を、上手に食卓に取り入れてみてくださいね。
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