目次
ゆばとはどんな食材?
ゆばは、豆乳を加熱したときに表面にできる薄い膜で、大豆の加工食品のひとつです。精進料理では肉や魚の代替として利用され、タンパク源として欠かせない食材のひとつです。
ゆばの歴史
ゆばの起源は中国といわれています。6世紀ごろの中国では精進料理が発展し、すでに豆腐が作られており、豆腐を作る過程で副産物として生まれたと考えられています。鎌倉時代後期、栄西や道元など多くの留学僧が中国に留学僧として渡り、禅宗の教えと共にゆばを日本に伝え、肉や魚の代わりとして精進料理の食材として重宝されました。1578年(天生15年)に奈良の茶人によって記された「松屋(久政)茶会記」の中に、茶懐石料理として登場し、ゆばは「うば」と記載されています。1590年(天生18年)千利休の「利休百会記」にもゆばが記載されており、江戸時代には僧侶や茶人だけではなく、庶民にも広まっていきました。現在は豆腐とともに海外でも知られるようになっており、「tofu skin」「soy milk skin」などと呼ばれています。
ゆばの種類
ゆばは大きく生ゆばと乾燥ゆばに分けられます。
生ゆばは、引き上げたあとそのまま食べる生のままのゆばです。
・引き上げゆば:「すくいゆば」「たぐりゆば」などとも呼ばれるシート状の生ゆばです。わさび醤油などをつけて、刺身のように食べることができます。
・汲み上げゆば:「つまみ上げ」とも呼ばれます。ゆばの膜がはり始めのやわらかい状態でつまみ上げます。とろみとコクがあり、濃厚な味わいがあります。
乾燥ゆばは、引き上げたあと乾燥させます。半分乾燥させたものと、完全に乾燥させたものがあります。細工されたものなど種類が豊富で、日持ちもします。
・平ゆば:串で引き上げ、シート状に乾燥させたゆばです。半乾燥と完全乾燥のものがあります。
・小巻きゆば:半乾燥の平ゆばをロール状に巻いたものです。
・大原木ゆば:引き上げたゆばを重ねて適当な大きさに切り、中心を昆布で巻いたものです。
・揚げゆば:平ゆばを重ねて巻き、輪切りにして油で揚げた「揚げ巻きゆば」や、しいたけや銀杏などの具を包んで揚げた「揚げ茶巾ゆば」などがあります。揚げゆばは、乾燥ゆばに分類されますが、生もの扱いで保存期間は短いので早に食べきるようにしましょう。
ラムスデン現象
ラムスデン現象は、タンパク質や脂質の含まれる液体を加熱したときに、表面に膜ができる現象のことです。温めた牛乳の表面に膜ができるのはラムスデン現象であり、ゆばも豆乳のラムスデン現象を利用してできる食品です。牛乳や豆乳などを加熱すると、表面から水分が蒸発していきます。水分が蒸発することで、表面はタンパク質や脂質の濃度が高い状態になっていきます。加熱を続けていくと、熱によってタンパク質が変性してかたまっていくため、表面に膜ができ、それを引き上げたものがゆばです。
京都ゆばと日光ゆば、中国ゆばの違い
ゆばは、初めは京都の天台宗総本山である延暦寺に伝えられたといわれます。栃木県の日光は山岳信仰が盛んであり、仏教の修行の場として輪王寺を中心に全国から修行僧が集まったことでゆばが日光へと伝わり、魚に代わるタンパク源として修行僧たちの精進料理に利用されました。京都のゆばと日光のゆばに製法の違いはほとんどありません。京都ではゆばは「湯葉」と書き、日光のゆばは「湯波」と書きます。湯葉を引き上げるときに、京都のゆばは膜の端に串をかけて引き上げるため、薄く平たく仕上がるのに対して、日光のゆばは膜の中央に串を入れて引き上げるため厚みがあり、食べ応えがあります。中国のゆばも製法に大きな違いはなく主流は乾燥ゆばで、シート状に干したものを「腐皮(フーピー)」、棒状に干したものを「腐竹(フーピージエ)」といいます。厚みがあるので煮物や蒸し物の他、肉や野菜と一緒に炒め物の材料としても使われます。
ゆばに含まれる栄養
植物性タンパク質
大豆に含まれるタンパク質は、必須アミン酸をバランスよく含んだアミノ酸スコア100の良質なタンパク質です。タンパク質はアミノ酸に分解されて吸収された後、体に必要なタンパク質に再合成されます。植物性タンパク質と動物性タンパク質は1:1のバランスがよいといわれています。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは大豆に含まれる成分で、エストロゲンという女性ホルモンと分子構造が似ていることから、植物性エストロゲンと呼ばれることもあります。大豆イソフラボンの構造から糖が外れたものを大豆イソフラボンアグリコンといい、この分子構造が人のエストロゲンと似ているため、体内でエストロゲンに似た作用を持つことが知られています。エストロゲンは第二次性徴の発現や月経周期の調節などにかかわり、更年期のさまざまな症状の緩和にも効果があると考えられています。
薬膳の効果
体内の余分な熱を取り除き、気を補って脾や胃の機能を整える作用があります。疲労感や倦怠感、食欲不振や胃もたれに効果があります
ゆばのおすすめレシピ
生ゆばの日持ちは通常冷蔵庫で3~4日ですが、商品によっても異なるので、パッケージの表示を確認するようにしましょう。乾燥ゆばは、一般的に数か月の保存が可能ですが、半乾燥か完全乾燥かでも保存方法や保存期間が異なりますので、こちらも商品に記載されている保存方法を確認し、適切に保存しましょう。乾燥ゆばでも揚げゆばは生もの扱いで、保存期間は長くありません。食べきれない場合は使用する分ずつラップで包み、冷凍用のチャック袋などに入れてから冷凍することができます。
【ゆばの煮浸し】
【材料】(2~3人分)
・乾燥ゆば 3枚(約9g)
・小松菜 100g
・しいたけ 3~4個
・水 300ml
・和風顆粒だしの素 小さじ1/2
・酒 大さじ2
・みりん 大さじ2
・しょう油 大さじ1
・かつお節 ひとつまみ
【作り方】
1.小松菜は洗ってから、葉と茎に分けて3㎝くらいの食べやすい長さに切ります。しいたけは石づきを取り、小さいものは半分、大きいものは1/4のそぎ切りにしておきます。
2.鍋に水と調味料を入れ、しいたけと小松菜の茎の部分を入れて火をつけます。
3.煮立ったら火を弱め、小松菜の茎に火が通ったら葉先を入れます。
4.乾燥ゆばを食べやすい大きさに割って入れ、ひと煮立ちしたら火を止めてふたをしておきます。味がなじんだらできあがりです。
ゆばレシピのまとめ
ゆばは、豆乳を加熱したときのラムスデン現象によってできるタンパク質の膜を引き上げた食品です。植物性タンパク質をはじめ、大豆に含まれるさまざまな栄養素が含まれています。乾燥平ゆばはスーパーなどでも比較的入手しやすく日持ちもするので、日常のお食事にもぜひ利用してみましょう。
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