高齢者の一人暮らし 気になる老後の費用はいくらかかる?

高齢者の一人暮らし 気になる老後の費用はいくらかかる?
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令和元年、突然話題になった老後2,000万円問題。突然ニュースや情報番組で大きく取り上げられ、驚かれた方も多いことでしょう。

生活費に通院費、趣味に家賃と、何かと必要なお金。しかし、一人暮らしの高齢者であっても、年金以外に2,000万円もの貯蓄が必要なのでしょうか?

今回は、高齢者が一人で暮らしていくために必要な費用や、楽しく出費を抑える方法についてみていきましょう。

老後2,000万円問題とは?老後の生活費は不足する?

これは金融庁が令和元年6月に発表した「高齢社会における資産形成・管理」に記された、老後必要となると考えられる資金が2,000万円に上るという問題です。

私たちが暮らす日本は、「人生100年時代」ともいわれ、高齢化が進む中、経済社会システムの変化も重要な課題の一つとなっています。

そのため、定年の延長、年金や医療システム、介護制度の改革などが求められ、老後資金の資産形成や資産管理が大切な課題になっています。

高齢の夫婦二人暮らしの場合

【図1】は、仕事を引退して無職となった高齢夫婦2人暮らしの家庭の収入と支出を表しています。

収入は約21万円、支出は約26万円とされています。つまり、試算上は毎月の赤字が5万円、年間60万円発生すると考えられています。

日本人の平均寿命が男女共に80歳を超える現在、20~30年後には、1,800万円に上るとされ、その不足分を補填するためには、老後、約2,000万円の貯蓄が必要だとされているのです。

これが、いわゆる老後2,000万円問題です。

【図1】

【図1】

【図1】『iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題』厚生労働省年金局 企業年金・個人年金課 2019年4月12日

一人暮らしの高齢者の場合

先ほどの【図1】が高齢夫婦二人暮らしの収支であったのに対し、【図2】は、65歳以上の単身無職世帯の収支内訳を示しています。

【図2】

【図2】

参考:総務省統計局『家計調査年報(2020年)』より

【図2】によると、高齢者が一人で生活していくうえで必要な支出は、133,146円であり、最も多くの費用を占めているのが食費で約36,600円(27.5%)、次いで交際費の約15,300円(11.5%)、教育娯楽費及び水道光熱費の約12,900円(9.7%)と続いています。

実収入が136,964万円となり、標準的な単身世帯を見ても、毎月7,723円の不足が発生することになります。

家賃や水道光熱費などは、二人で暮らしているよりも一人暮らしの方が割高になります。

また、食費に関して、一人で食べられる量に限界があるため、より割高な少量パックを選ばざるを得なくなったり、食べきれずに処分してしまったりするなど、無駄が発生しやすくなります。

夫婦二人暮らしの場合の年金収入が約21万円、一人当たり10.5万円をベースに考えられているとすると、一人暮らしの高齢者の収入の方が多いように見受けられますが、あくまで平均的な例となっており、受け取ることができる年金の金額や支出額は人それぞれです。

一概に赤字が発生するとは限りませんが、余裕がある生活を送れるかというと、現実はなかなか厳しそうです。

老後の生活で気になる突発的な支出

日々の暮らしにかかる費用をさまざまなアイディアで節約し、赤字が出ないような工夫ができていたとしても、高齢になると何らかの病気が見つかり、入院や継続的な治療が必要になることがあります。

また、身体的な理由から住宅のリフォームが必要になったり、一人暮らしができなくなり、老人ホームに入らなければならなくなったりした場合、急にまとまった出費が発生することがあります。

持病やけがによる入院にかかる費用

どのような疾患かにかかわらず、高齢になればなるほど、基本的には入院日数は増えていく傾向にあります。

参照:厚生労働省 令 和 2年 ( 2 0 2 0 )患 者 調 査 ( 確 定 数 ) の 概 況

そんな中、どうしても気になるのが入院費用ですね。下の【図4】は、年齢を問わず、平均的な入院費用を示しています。

70歳以上になると、保険適用の自己負担率が軽減されるため、場合によっては現役世代よりも安く済ませられる場合があります。自己負担額には上限が設けられていますので、できれば確認しておくことをお勧めします。

【図4】

【図4】

上限があるとはいえ、【図3】にみるように、入院日数は年齢をかさねるほどに増加する傾向があります。

入院中の差額ベッド代のほかにも、テレビカード、ちょっとしたおやつや日用品といった売店での買い物など、入院すると、入院費以外にもいろいろと出費が必要になるものです。

高齢になると、ちょっとした転倒から骨折をしてしまったり、風邪をこじらせて肺炎を併発したりすることがあります。

一人暮らしの場合は家族の目がないこともあり、完治するまで入院してリハビリを行うなど、念のため入院を勧められることもあり、若い世代よりも入院の機会が多くなります。

できれば、思わぬ入院に備えた貯蓄はしておきたいものですね。

バリアフリーにかける改装費

高齢になり、身体的な不自由が生じて要介護者になってしまった時に、バリアフリーの住宅改修工事を行わなければならない場合がありますね。

一人暮らしの場合は、不幸にして自宅内で転倒したり、ヒートショックを引き起こして倒れてしまったりしていても、なかなか家族やご近所にも気づいてもらえません。

そのため、できれば早めに住宅の手入れをしておく方が良いでしょう。

転ばないように浴室やトイレに手すりを取り付けたり、段差の解消、滑り止めつきの床へ張替えたりすることなどに対しては、介護保険や自治体からの補助対象となることがあります。

それぞれ、補助金額の上限が設けられています。

改修工事が必要になった場合は、お住まいの地区の地域包括センターやケアマネージャー、バリアフリー化や補助金に詳しいリフォーム業者に相談し、プランを考えてもらうことをお勧めします。

老人ホーム等への入居にかかる費用

加齢による衰えや持病、身体的な問題が発生し、一人暮らしができなくなると、老人ホームへの入居や家族との同居が必要になります。

施設へ入居する場合、入居費や衣類のほか、施設によっては衣類用のタンス、カーテンなど、持ち込みが求められる日用品は様々です。

要介護度により必要な持ち込み品の品目も変わるため、いざという時にそなえ、近隣の施設に入居した場合にかかる費用を確認し、できるだけ貯蓄しておきましょう。

地域の取り組みやサービスを活用する

地域の取り組みやサービスを活用する

高齢者か現役世代かを問わず、一人暮らしの場合の生活費は何かと割高になりやすいものです。

とはいえ、一人だからと冷暖房にかかるガス代や電気代を節約しようと我慢していると、ヒートショックや熱中症を引き起こしてしまいます。

また、食費を節約してパンや麺類などで済ませてしまっていると、低栄養になり、筋力の低下、体の衰えにつながります。

冷暖房にかかる水道光熱費や食費など、削ることができない費用にはしっかりとお金をかけ、健康維持のためのレクリエーションや体操教室、クラブ活動や昼食サービスなどは地域の取り組みを活用してみてはいかがでしょうか?

これらは自治体のスポーツセンターや市民センターなどで開催されていることが多く、人気のあるクラスは申し込み期間が設けられていることがあります。

また、お住まいの自治体や、要介護度、収入により受けられるサービスの種類や回数に基準が定められている場合もあります。

自治体の広報誌はこまめにチェックしておきましょう。

民間のスポーツクラブやレストランを利用するよりは割安で利用できるものが多いです。

サービスを受けるために身支度を整えることで生活にメリハリがつき、外出することで体を動かす機会にもなります。

新たな友人をつくり、情報交換ができたり、何かを一緒に行うという楽しみが増えたりすると、脳の活性化にもつながります。

まとめ

今回は、高齢者が一人暮らしを続けていくうえで必要になる費用について、ご紹介しました。

水道光熱費や食費などは夫婦二人や子供世帯と暮らしている方よりも、割高になりがちです。

とはいえ、一人暮らしには一人暮らしの良さもあります。

人生100年時代、節約するところ、しっかりとお金をかけるところを考え、楽しく過ごしてくださいね。

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この記事の作成者:真鍋 実穂(調理師)
この記事の提供元:シルバーライフ

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