年齢をかさねてもいきいきと楽しく暮らしていきたい。
高齢者様にとって、生きがいを持って豊かな暮らしを続けていくためには、どのような備えや方法があるのでしょうか?
本コラムでは、豊かな老後を過ごすために高齢者様ご自身ができること、離れて暮らす家族が支えられることをご紹介します。
目次
高齢者の暮らしの豊かさの定義
一言に「豊かさ」とは言っても、その定義はさまざま。
お金に余裕があるから?悠々自適に老後暮らしを満喫しているから?
趣味やボランティア活動など、充実した日々を送っている?友達が多い?
高齢者様が「私は豊かである」であると感じるのは、どのような時なのでしょうか?
金銭的な豊かさ
何を置いても、「豊かさ」と言われてまず思いつくのは「金銭的な豊かさ」ではないでしょうか?
住居費、食費、医療費…。何をするにもお金は必要になりますね。金融庁金融審査会による報告書で発表された老後2,000万円問題が話題になり、老後資金について不安を感じておられる方も多いことでしょう。
確かに、高齢になると病気や怪我で入院する可能性が高まります。
また、認知症や身体的な理由から介護を受けざるを得なくなった場合や、施設への入居が必要になった場合、保険ではまかないきれずに、多額の費用が必要になることがあります。
時には、高齢者ご本人だけではなく、介護や入院治療のために家族が仕事を休んだり、転職したりすることもあり得ます。
万が一の場合に備えて、ご自身の貯蓄がいくらあるのか、年金などからの収入と、月ごとの固定支出がどの程度あるのかを把握しておくことが大切です。
とはいっても、お金がすべて、お金があれば必ずしも豊かである、というわけでもありませんね。友人や趣味など、充実した日々を過ごすことができれば、何よりです。
交友関係の豊かさ
友人との付き合いがあるかどうかも、豊かさの一つではないでしょうか?
特に一人暮らしの場合は、当然のことながら自宅にいると誰とも会話をすることができません。
さらに、誰とも合わないとなると、ついつい身だしなみを整えることなく一日を過ごしてしまったり、食事をインスタント食品やご飯、パンなど簡単なもので済ませてしまったりすることもあるでしょう。
身だしなみを整え、たとえ1日のほんの1時間、気の置けない友人と他愛のない話をするだけでも、生活に張りあいが出ます。
また、他者との会話は脳にはとても良い刺激になり、認知症の予防にも効果的だといわれています。
スマートフォンなどを活用してSNSのビデオ通話システムを利用すれば、天候不順により外出が困難な日や感染症対策が必要な折にも、友人や離れて暮らす家族と安心して会話を楽しむことができます。
これらの機器の使用方法をマスターしておくのもよいですね。
豊かな生活を続けていくために
高齢者様が感じる豊かは、人それぞれ。「自分は豊かな暮らしを続けることができている」と満足できる尺度は様々です。
その豊かさを維持していくために、ご自身の健康維持と不意の事故を防ぐための環境を整えておくことも大切ですね。
健康を維持する
友人との交流や趣味を楽しむためには、何を置いても健康な体であることが大切ですね。
健康を維持するための2本柱と言えば、体力に合わせた運動、そして、栄養管理ではないでしょうか?
体力に合わせて適度な運動を取り入れる
病気や怪我といったさまざまな理由から、数週間程度外出することなく過ごすと、高齢者の場合、それまでの生活の数年分以上の筋肉量が低下するとの研究結果が示されている(※)ということです。
筋肉量が減ってしまうと、サルコペニア(加齢により筋肉量が低下し、運動機能が衰えた状態)やフレイル(加齢により、心身の働きが虚弱になってしまっている状態)になりQOL(生活の質)が低下してしまいます。
毎日近くのスーパーマーケットに買い物に出かけるなどの軽いウォーキングや、無理のないストレッチなど、手軽にできるものを取り入れてみましょう。
(※) 新型コロナウイルス感染対策 スポーツ・運動の留意点と、運動事例について
栄養バランスが整った食事をとる
生活に必要な筋肉を維持し、心身ともに健やかで豊かな日々を過ごすためには、栄養バランスが整った食事をとることも大切です。
食事の支度が面倒だからと、麺類や菓子パン、ごはんのみで簡単に過ごしてしまっていると低栄養状態に陥り、先ほどご紹介したようなサルコペニアやフレイルの一因にもなりかねません。
重い食材の買い出しが負担になる、天候不順が続いている時などはネットスーパーを利用したり、高齢者向けの栄養バランスが整ったお弁当の宅配を頼んでみたりしても良いですね。
離れて暮らすご両親の健康管理が気になる場合は、お弁当の宅配サービスや宅配便の見守りサービス、民生委員の見守り訪問サービスなどがありますので、ご両親の負担にならず、かつ、生活のないサービスを利用してみてくださいね。
住まいの環境を整える
加齢による筋力の衰えから、ご自身やご両親様が、歩行時に足が上がらず、何もないところでつまずいてしまったり、自宅の2階に上がる階段がきつくなってしまったりしたことはありませんか?
また、寒い冬の日、温かい居室から寒いお手洗いや脱衣所に移動することにより、ヒートショックを起こしてしまうことも考えられますね。
可能であれば、床面にはあまり荷物は置かず、つまずき防止の対策を行いましょう。
お手洗いや脱衣所にはファンヒーターを設置するなどして、家全体の温度差を小さくしておくのも、大切なポイントになります。
要介護認定を受けておられる方がリフォームを検討している場合、介護保険で介護リフォームの費用負担を受けることができます。
また、自治体により、介護リフォームの助成金の補助事業を行っている場合もありますので、費用上限などを確認し、最も適しているものを確認しておきましょう。
生きがいを見つけるために
高齢になっても楽しく充実した生活を続けていくためには、趣味やボランティア活動などに打ち込んでみるのも良いですね。
しかし、とくに今まで仕事に打ち込んでこられた方の場合は、引退後、何をすればよいのかわからない、という場合が多いのも現実です。
趣味を持つことで世界を広げる
引っ越しをしたり、定年まで一生懸命仕事をされていたりした方の中には、お住まいの地域には親しい友人がいないこともありますね。
このような場合は、新たな趣味を持ってみるのもおすすめです。お住まいの市区町村の地域包括センターや地域の情報誌には、体操教室や趣味のサークル活動の情報、募集要項が掲載されていることがあります。
また、大学によっては生涯学習センターが設置されており、さまざまな講習会やワークショップが開催されています。
ご自身の体調や好みに合う教室、ワークショップを選んで参加してみることで、新たな楽しみが生まれるとともに、共通の趣味を持つ友人を得るチャンスになるかもしれません。
離れて暮らすご両親が参加できそうな趣味の教室を探す場合には、参考になさってくださいね。
SNSにチャレンジしてみる
スマートフォンやパソコンの操作に不自由や苦手意識がない方であれば、SNSにチャレンジしてみてもよいですね。
得意なことや日々のちょっとした気づきをアップしてみると、意外な反応や出会いがあるかもしれません。
ただし、SNSは顔が見えない人とつながるため、詐欺などの犯罪に巻き込まれる可能性もゼロではありません。
金銭のやり取りや実際の交流が発生するような場合は、家族や信頼できる友人などに相談し、自衛の策もきちんと取ることが大切です。
まとめ
仮にご自身が高齢になった時を想像し、暮らし中の豊かさを感じる場面を想像してみてください。
例えば趣味の活動を楽しんでいる、また、現役時代の仕事仲間と連絡を取り合い、楽しく交流ができている、怪我や病気に悩まされることなく、健やかに日々暮らせている…。
さまざまな要素が想像できますね。
ご両親様が楽しく豊かな生活を送れるよう、時には近くで、時には陰から支えていけるとよいですね。
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