目次
食用菊花について
食用菊花はキク科キク属で、観賞用の菊花の苦味を減少し、花びらが大きくなるように品種改良したものの総称です。
食用菊花の歴史
観賞用の菊花は奈良時代に中国から伝わったといわれています。
中国では古くから食用や薬用として利用されており、日本でも当初は観賞用や薬用として利用されていました。
花びらを食用とするようになったのがいつごろか、はっきりとわかっていないようですが、江戸時代の文献には菊花の食べ方が記されています。
また食用の菊花は「甘菊(あまぎく)」や「料理菊(りょうりぎく)」と称されていたことがわかっています。
現在は主に東北地方で栽培が盛んですが、江戸時代は日本各地で広く栽培されていたと考えられています。
食用菊花の選び方
生花は、花の形が整っていて花びらがみずみずしく、ハリのあるものを選びましょう。花びらの色がきれいな色で統一されていて、変色のないものが良品です。
食用菊花の種類
食用小菊
主に刺身のつまとして利用される、タンポポに似た小さな菊花です。全国の生産量のおよそ9割が愛知県産といわれ、品種改良が進みハウス栽培もされています。
刺身に菊花を添える習慣は江戸時代に始まり、当時から菊花の解毒効果や殺菌効果を期待して、刺身に添えていたと考えられています。
花びらをちぎって刺身の上に散らしたり、しょう油に入れて刺身と一緒に食べるのが一般的な食べ方です。
阿房宮(あぼうきゅう)
「阿房菊(あぼうぎく)」とも呼ばれます。黄色い八重咲の菊花で苦みはほとんどなく、香りが良いのが特徴です。
青森県や岩手県が主な産地で、阿房宮の花びらを蒸してから板状に乾燥させた「干し菊(菊のり)」は、青森県の特産品です。
延命楽(えんめいらく)
別名「もってのほか」「もって菊」などとも呼ばれます。
「天皇家の御紋である菊を食べることはもってのほか」や「もってのほかおいしい」という意味から、これらの別名がついたといわれています。
紫に近いピンク色の八重の菊花で、一枚一枚の花弁が筒のように丸まっており、この花びらの形状によってシャキシャキとした食感が生まれます。
香りが良くてほのかに甘味があり、苦味はほとんどありません。主に山形県や新潟県で栽培されています。
食用菊の栄養と効果
ビタミンE
強い抗酸化作用を持つビタミンで、活性酸素から体を守る効果が期待できます。
また毛細血管を拡張する働きによって血流を改善し、末梢血管の血行障害が原因となる肩こりや腰痛、冷え性などの症状に有効です。
ビタミンK
ビタミンKは、体内で血液の適正な凝固と骨の健康にかかわっています。
けがなどで出血したとき、止血に必要な血液凝固因子を作るためにビタミンKが必要なため、ビタミンKの不足によって血が止まりにくくなる可能性があります。
またビタミンKは腸から吸収されたカルシウムを骨に取り込むのを助ける働きがあるため、骨粗しょう症の治療薬としても利用されています。
ビタミンB1
ビタミンB1は糖質の代謝に必要です。糖質の代謝がスムーズに進むことでエネルギーが効率よく産生され、疲労回復に役立ちます。
ビタミンB2
ビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質の代謝やエネルギーの産生に補酵素としてかかわっています。
皮膚や粘膜、髪や爪などの細胞の再生に役立ち、成長期の子どもには特に欠かせないビタミンのひとつです。
葉酸
ビタミンB群の仲間で、正常な赤血球を作るために必要です。またDNAやRNAなどの核酸やタンパク質の合成を促進し、細胞の生産や再生に働きます。
胎児の正常な発達には特に重要といわれており、妊娠・授乳中の女性では必要量が増大するビタミンです。
クロロゲン酸
クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用があります。糖の吸収を穏やかにする働きや、脂肪の蓄積を抑える働きなどの効果も期待されています。
解毒作用
菊花の精油成分には解毒作用や消炎作用、抗菌作用などがあることが知られています。刺身のつまに菊花を添えるのは、これらの効果を期待していると考えられています。
食用菊花の薬膳の効果
冬から春に向かう季節の変わり目に生じる頭痛やのぼせ、花粉症などの予防に効果があるといわれています。
目の充血やかすみ、ドライアイなど目のトラブルや、イライラ、高血圧にも効果的とされ、解毒作用により吹き出物の改善にも有効といわれます。
食用だけではなく生薬として漢方薬に利用されたり、乾燥させてお茶としても飲まれています。
食用菊のレシピ
下ゆでした食用菊花は、冷凍して保存することができます。下ゆでして水分を絞り、使いやすい大きさに分けてラップで包み、冷凍用の保存袋に入れて冷凍しましょう。
使うときは冷蔵庫に入れて自然解凍するか、電子レンジの解凍機能を使って解凍できます。
【菊花の酢みそ和えと菊花ごはん】
【材料】
<菊花の酢みそ和え>(作りやすい分量)
・干し菊 1枚(15gくらい)
・みそ 大さじ1と1/2
・砂糖 小さじ2
・酢 小さじ2
<菊花ごはん>(ごはん2合分)
・菊花 3~4パック(300~400gくらい)
・塩 適量
・米 2合
・昆布 適量
【作り方】
<下処理>
1.菊花の花びらを額から外し、ざるに入れて軽く水洗いします。
2.大き目の鍋にお湯を沸かします。
3.お湯が沸騰したら、2ℓのお湯に対して塩小さじ1/2(分量外)、酢50mlくらい(分量外)を入れてから、菊花をゆでます。
4.浮き上がってしまうので、菜箸で花びらを沈めたり上下を返したりしながら、1分くらいゆでます。
5.ざるにあげて冷水にあてて冷まし、10分ほど水にさらしておきます。
6.水分を絞っておきます。ここまでの下処理は干し菊も同様です。
<菊花の酢みそ和え>
1.みそと砂糖、酢を混ぜておきます。
2.下処理した菊の水分を絞ってから1.の酢みそと和えてできあがりです。
<菊花ごはん>
1.お米を洗ってから、水に浸漬するときに昆布をのせておき、そのままいつも通りに炊飯します。
2.ごはんが炊き上がったら昆布を取り除き、下処理した菊の水分を絞ってからごはんに混ぜます。
3.お好みで軽く塩で味をつけてできあがりです。
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【菊花の酢みそ和えの栄養量】
上記の材料で作った場合の、おおよそ1人分の栄養量です。
エネルギー:29Kcal
タンパク質:1.2g
脂質:0.4g
糖質:4.3g
レチノール活性当量:1㎍
ビタミンD:0.0㎍
ビタミンB1:0.03㎎
ビタミンB2:0.04㎎
ビタミンB6:0.03㎎
ビタミンB12:0.0㎍
ビタミンC:0㎎
カルシウム:12㎎
鉄:0.7㎎
亜鉛:0.2㎎
食塩相当量:0.8g
食用菊レシピのまとめ
食用の菊花は、観賞用の菊を品種改良したもので、江戸時代には食用として利用されていたといわれています。
菊花には解毒作用や殺菌作用があることから、この効果を期待して、刺身に菊花を添える習慣が始まったと考えられています。
食用菊花は、お刺身以外では日常的に食卓に上ることは少ないかもしれません。
菊花の花びらのきれいな色や香りは少量でもお食事の彩りが鮮やかになり、ごはんに混ぜたり、汁物に少し加えるだけでも華やかになります。
疲れていて食欲がないようなときは特に、見た目にきれいなお食事は食欲を増進させます。店頭で菊花をみつけたときは、ぜひ取り入れてみましょう。
【まごころケア食】のお弁当は食材にこだわり、いろいろな食材や調理方法で、見た目も味も飽きずに食べることができます。
栄養士が監修しており栄養バランスが整っているので、安心して食べることができます。ぜひお試しください。
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