高齢者の一人暮らしを人口構造の変化から考える

高齢者の一人暮らしを人口構造の変化から考える
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戦後、日本の総人口は増加を続け、1967年(昭和42年)に始めて1億人を超えました。

2008年(平成20年)の1億2,808万人をピークに2048年(令和30年)には1億人を割り込み、その後も減少していくと推計されています。

人口は減少しているだけではなくその構造にも変化がみられており、高齢者の一人暮らしの増加にも影響しています。高齢者の一人暮らしを人口構造の変化から考えてみます。

高齢者の一人暮らしが増える理由

平均寿命や健康寿命が延びていることで高齢者人口は増加が続き、75歳以上の人口は令和32年(2050年)には2,417万人となり、総人口の23.7%を占めるまでになると予測されています。

高齢者人口の増加は、高齢者のひとり暮らしの増加に直接かかわると考えられますが、その他にも影響を与える人口構造の変化があります。

核家族化

核家族世帯とは、夫婦のみ世帯、夫婦と子世帯、ひとり親と子世帯のことを指します。

1970年(昭和45年)は、単独世帯を含まない親族世帯に占める核家族世帯の割合は、1960年(昭和35年)には63.4%だったものが1970年(昭和45年)には71.4%に増加し、2010年(平成22年)84.5%と、増加し続けています。

核家族世帯は今後も増加が見込まれており、2035年(令和17年)には89.0%まで増加すると予測されています。

例えば夫婦と子世帯で子ども世代が独立して夫婦のみ世帯となったあと、何かのタイミングで再度同居しなければ、高齢になった親がいずれは一人暮らしになる可能性が考えられます。

若者人口の減少と出生率の落ち込み

若者の人口は1970年(昭和45年)に約3,600万人、全人口の35%から3010年(平成22年)には約32,00万人、全人口の25.1%に減少しています。

およそ3人に1人いた若者が4人に1人になったイメージです。

今後、2060年(令和42年)にはさらに半分以下の約1,500万人、全人口の17.4%(6人に1人のイメージ)まで減少すると推計されています。

さらに合計特殊出生率(※)は1947年(昭和22年)には4.54だったものが1975年(昭和50年)には1.91まで減少し、2005年(平成17年)には1.26と過去最低水準となりました。

例えば一人っ子同士の男女が結婚した場合、夫婦両方の両親と同居しなければ、少なくともどちらかの両親は夫婦のみ世帯となり、いずれは一人暮らしになる可能性が高いと考えられます。

※15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの。

晩婚化と未婚率の進展

平均初婚年齢は上昇しており、厚生労働省令和2年人口動態統計によると1995年(平成7年)男性28.5歳、女性26.3歳でしたが、2020年(令和2年)は男性31.0歳、女性29.4歳となっています。

令和2年国勢調査による生涯未婚率(※)は1995年男性9.0%、女性5.1%でしたが、2020年男性25.7%、女性16.4%に上昇しています。

特に男性は1985年から、女性は1995年から割合が増加し始め、年々上昇し続けています。

今後、単身世帯は人口減少に伴って世帯数は減少するものの、その割合は増加傾向が予想されており、1985年(昭和60年)15.0%から2010年(平成22年)には32.2%、2035年(令和17年)には35.3%に上昇すると推計されています。

晩婚化や未婚率が進むことは少子化にかかわり、高齢者の一人暮らしの増加にも影響があると考えられます。

※生涯未婚率とは、50歳を迎えて結婚していない人は今後も結婚しない可能性があると考え、生涯独身の人の割合を示す指標として用いられていますが、実際に生涯未婚だった人の数を表すものではありません。

晩婚化と未婚率の進展

高齢者の一人暮らしの増加

日本の人口は2025年(令和7年)頃をピークに減少すると予測されていますが、世帯主が65歳以上の世帯は2015年(平成27年)の1,918万世帯から25年後の2040年(令和22年)には2,242万世帯に増加が見込まれています。

その中で高齢者の一人暮らしの増加は顕著であり、2015年625万世帯から2040年には896万世帯に増加すると見込まれています。

都道府県別の一人暮らし高齢者数

令和2年度国勢調査の結果から、各都道府県の高齢者人口における一人暮らしの高齢者の割合が高い都道府県を挙げます。

1位 東京都  26.1%(高齢者人口:3,107,822人、一人暮らし高齢者:811,408人)
2位 大阪府  24.0%(高齢者人口:2,361,723人、一人暮らし高齢者:567,399人)
3位 鹿児島県 23.5%(高齢者人口:505,891人、一人暮らし高齢者:119,020人)
4位 高知県  23.1%(高齢者人口:241,787人、一人暮らし高齢者:55,958人)
5位 北海道  21.7%(高齢者人口:1,664,023人、一人暮らし高齢者:361,735人)

今後の都道府県別の一人暮らし高齢者数

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、2040年(令和22年)高齢者世帯に占める一人暮らしの割合は、全国平均で40.0%となる見込みです。

2040年の将来推計で上位5位までの都道府県は、1位東京都45.8%、2位大阪府45.4%、3位高知県44.8%、4位鹿児島県44.6%、5位北海道43.1%となっています。

鹿児島県と高知県がわずかな差で3位と4位が逆転していますが、その他は同じ順位であり、いずれも20%前後増加していると推計されています。

高齢者を支える自治体の取り組み

高齢者のみの世帯や一人暮らしの高齢者の生活を支えるために、各自治体でもさまざまな取り組みが行われています。

緊急時や日常の困りごとの他、地域性の高い独自の取り組みなどもあります。

事業内容や利用条件、費用などは各自治体によって異なるため、自治体の担当窓口や地域包括支援センターや社会福祉協議会などに問い合わせてみましょう。

神奈川県横浜市の「高齢者あんしん電話貸与事業」

一人暮らしの高齢者を対象に緊急事態が発生した場合、すぐに近隣の住民などに連絡が入るよう緊急通報装置(あんしん電話)を貸与しています。

あらかじめ通報先の電話番号を登録しておき、利用者があんしん電話の緊急通報ボタンを押すと、近隣の協力者や消防局に緊急事態を知らせることができます。

東京都目黒区の「ひとりぐらし・高齢者世帯向け食事サービス」

目黒区に「ひとりぐらし等高齢者登録」をしている人を対象に、昼食または夕食を手渡しで届けてもらえるサービスです。

バランスの良い食事を届けることで食の確保と健康の保持を目的するだけではなく、利用する高齢者の安否確認も兼ねています。

徳島県徳島市の「軽度生活援助事業」

高齢者のみの世帯や一人暮らしの高齢者世帯などを対象に、軽易な日常生活上の援助を行うサービスです。

日常のちょっとした困りごとを速やかに解消することで在宅での自立した生活の維持を支援し、要介護状態への進行を防止しようとするものです。

散歩の付き添いなど外出援助の他、寝具など大物の洗濯、庭や家周りの手入れ、軽微な修繕なども依頼できます。

新潟県の市町村による冬季の除雪にかかわる事業

降雪地帯に特有の事業といえます。

高齢者のみの世帯や一人暮らしの高齢者世帯、その他除雪作業が困難な世帯を対象として、除雪作業に対しての費用補助やボランティア派遣などの事業が実施されています。

同時に除雪のボランティアが募集されている地域もあり、地域住民同士の助け合いで成立しているケースもあれば、除雪業者の紹介などのケースもあるようです。

市町村により事業の詳細が異なるようなので、居住地の市区町村などに問い合わせてみましょう。

『高齢者の一人暮らし』まとめ

人口にかかわる調査や統計にはいろいろなものがあり、調査対象や調査方法、集計方法などによって、結果の数値は異なることがあります。

しかし、今後の日本の人口構造についての予測は調査結果にかかわらず同様のものであり、現状では高齢者の一人暮らしが増加するのは避けられない状況のようです。

人口構造の変化に応じた対策と地域の実情に合った支援によって、高齢になっても安心して一人暮らしを続けられる環境の整備が望まれます。

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この記事の作成者:S.M(管理栄養士)
この記事の提供元:シルバーライフ

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