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梅干しについて
梅干しは、梅の果実を塩漬けしたものです。古くから保存食として作られており、お弁当やおにぎりの具としても親しまれています。
防腐効果や風邪のひき初めに効くなど、経験的に伝承されてきた効果・効能は、現在その多くが科学的に実証されており、日本人の生活に密着した伝統食品のひとつです。
梅干しの歴史
梅の木の原産は中国で、約2000年前に記された「神農本草経」には梅が記されています。
青梅を燻煙して乾燥したものが烏梅(うばい)という生薬として利用されており、約1500年前の飛鳥時代に烏梅が中国から日本に伝わったといわれています。
平安時代に記された日本最古の医学書である「医心方」には梅干しが登場し、薬用としての効能が記述されています。戦国時代になってもまだ、梅干しは食品というより薬として利用されていました。
戦では、梅干しの保存性や携帯性がよく、食欲増進の作用があることで重宝され、梅の木の栽培が全国に広がったと考えられています。
江戸時代になって、梅干しは食品として庶民に広まっていきましたが、当時の梅干しは塩分の高い塩辛いものであり、赤じそを使った赤い梅干しができたのも江戸時代といわれています。
明治40年以降、日清・日露戦争の軍用食として梅干しが利用されたことで需要が増大し、生産量が急増しましたが、第二次世界大戦末期には食糧難からサツマイモなどの栽培が優先され、梅の木が伐採されていきました。
戦後の復興とともに梅の栽培も再び増加し、昭和50年代後半からは自然食品や健康食品のブームによって、梅干しの価値が見直されるようになっています。
梅干しの種類
日本農林規格では、梅漬けを干したものを「梅干し」、砂糖、食酢、梅酢、香辛料等もしくはこれらに削り節等を加えたものに漬けたもの、又は調味梅漬けを干したものを「調味梅干し」と表記するように義務付けられています。
・梅干し
梅の果実と食塩で作ります。熟した梅の果実を塩漬けにしてから天日干ししたものが梅干しです。
・梅漬け
梅の果実を塩漬けしただけのものを指します。天日干しした梅干しはやわらかくなりますが、天日干ししない梅漬けはかたいのが特徴です。
・調味梅干し
市販されている梅干しの多くが「調味梅干し」に属します。梅干しを一度塩抜きしてから調味液で味付けをしたものです。昆布やはちみつ、かつお節などの副材料がよく使われています。
梅干しの効果・効能
食欲を増進し、疲労の予防や回復に役立つクエン酸
梅干しの最大の特徴ともいえる酸っぱさは、クエン酸によるものです。酸味はだ液の分泌を促進し、消化を助ける作用があります。
クエン酸は体内でエネルギーを生み出す代謝経路にかかわる物質のひとつであり、クエン酸の不足によってエネルギーを効率よく供給できないことで血液中に乳酸が蓄積し、疲労感や疲れがとれないなどの症状をひきおこすことがあります。
またクエン酸には、カルシウムなどのミネラルの吸収を助ける働きもあります。
脂肪をつきにくくするバニリン
梅の香りの成分に含まれているバニリンには、脂肪を燃焼させ、脂肪細胞を縮小させる効果があるといわれています。バニリンは梅干しを加熱すると約1.3倍に増え、効果が増大すると考えられています。
加熱方法は焼く、煮る、電子レンジ加熱など、どのような方法でも大丈夫です。
血液サラサラ成分、ムメフラール
ムメフラールは、梅に含まれる糖(5-ヒドロキシメチルフルフラール)とクエン酸が加熱されることで結合して生まれる成分です。血流を改善し、動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つと考えられています。
インフルエンザや胃がんの予防に梅リグナン
梅干しに含まれる梅リグナンの一種であるエポキシリオニレシノールは、インフルエンザウイルスの増殖を90%抑制したという実験結果があります。
また胃がんの主要な原因のひとつであるヘリコバクターピロリ菌の運動能力を阻害・抑制する働きがあります。
ヘリコバクターピロリ菌は胃の中を移動して胃粘膜に感染しますが、梅リグナンの一種であるシリンガレシノールは、ヘリコバクターピロリ菌の運動能力を抑制し、死滅させる働きがあります。
薬膳の効果
発熱や下痢などの症状からくるのどの渇きを癒します。のどの腫れや痛みの緩和にも効果的で、整腸作用もあります。消化吸収を促進し、水分の代謝を整えるので、食欲不振や疲れ、夏バテなどに効果的です。
梅干しのおすすめレシピ
梅干しは古くから保存食として利用されてきましたが、保存性を高めるために塩が多く使われていました。現在は健康面からも、市販されている梅干しは比較的塩分濃度が低い梅干しが主流です。
開封後は清潔な保存容器に入れ替えて冷蔵庫で保存し、賞味期限にかかわらず、早めに食べきるようにしましょう。
梅干しは冷凍することができます。ひとつずつラップに包んでから冷凍用の保存袋に入れて冷凍しましょう。
おにぎりに入れた状態で冷凍することもできますが、レンジで温めたときに梅干しも熱くなっていることがあるため、食べるときはやけどに注意しましょう。
【ささみの梅和え】
【材料】
・梅干し 3個(種を取って40gくらい)
・きゅうり 1本
・鶏ささみ 大きめ1本(80gくらい)
・砂糖 小さじ2
・めんつゆ(4倍濃縮) 小さじ2
・かつお節 ひとつまみ(約1g)
【作り方】
1.鍋にお湯を沸かし、ねぎの青い部分、生姜、酒(すべて分量外、無くても可)を入れて、ささみをゆでます。強く煮立てず、沸騰を保つ程度でゆでましょう。中心部まで火が通ったら、火を止めて冷めるまでそのままおきます。
2.きゅうりは包丁の背でイボをこそげ落として洗います。縦半分に切ってから、斜めスライスに切っておきます。
3.梅干しは種を取って、包丁でたたきます。
4.梅干しと調味料、かつお節を混ぜておきます。
5.ささみが冷めたら鍋から取り出し、水分をきってから手で食べやすい大きさにほぐします。
6.きゅうりとささみに4.の梅を和えてできあがりです。
※梅干しの塩分によってめんつゆの量を調節してください。
※市販のめんつゆは、商品によって濃縮倍率が異なりますので、ご注意ください。
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梅干しレシピのまとめ
梅干しは古くは薬用として利用されてきました。食用として広まったのは江戸時代で、保存食として塩を多く使ったしょっぱい梅干しであったと考えられています。
梅干しの効果は古来から経験的に理解されており、おにぎりやお弁当に梅干しを入れたり、風邪気味のときに焼いた梅干しをお茶に入れて飲むなどの利用方法は、理にかなっていることが科学的に実証されています。
多くの機能性を持つ梅干しは毎日食べたいところですが、やはり塩分が気になる人も多いのではないでしょうか。
【まごころケア食】のお弁当は、管理栄養士が考えたメニューで、栄養バランスの整った冷凍のお弁当です。塩分を調整したお弁当もありますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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