目次
煮浸しとはどんな料理?
煮浸しは、野菜やきのこ、魚や肉などの食材を、だし汁でさっと煮含めた料理です。
一般的な「煮物」と比べてだし汁は薄味で、煮る時間は短時間なのが特徴です。
食材を下茹でしたり、焼く、揚げるなどの調理方法で加熱してからだし汁で煮含めることもあり、あらかじめ焼いたものは「焼き浸し」、揚げたものは「揚げ浸し」と呼ばれます。
煮浸しに味がしみる仕組み
「味がしみる」とは、食材の細胞の中に調味料が入り込むということです。
細胞は細胞膜で包まれており、細胞膜は半透膜なので、細胞の中と外を自由に移動できるのは基本的には水だけで、そのままでは調味料はなかなか細胞内に入ることができません。
食材を加熱して組織が壊れ、細胞膜の半透性が失われると、調味料の成分は細胞の内外を自由に移動できるようになります。
細胞の内外では調味液の濃度に差があるため、全体の濃度を一定にしようとする拡散現象によって細胞内に調味料が入り込んでいきます。
「冷ますと味がしみる」とよく言われますが、実際には温度が高い方が調味料は浸透しやすくなります。
しかし食材を高温で長時間保持すると、食材の形が崩れたり、水分の蒸発によって味の濃さが変化してしまいます。
食材に火が通った後、加熱を止めてから80℃程度に冷めるまでの間は食材はやわらかくなっていきます。
そのあと温度が徐々に下がると、食材の硬さは変化せずに味のしみ込みは継続し、70℃から60℃の温度帯を保持することで味はよくしみ込みます。
「冷ますと味がしみる」というのは、「冷める過程に味がしみ込んでいる」のであって、早く冷ませば味がしみ込むということではありません。
『ほうれん草』とは?
ほうれん草は通年で出回っていますが、本来の旬は11月~3月の寒い時期です。葉に厚みがあり、葉先までハリがあって濃い緑色のものが良品です。
茎は太く、根元が赤くふっくらとしているものを選びましょう。
ほうれん草の保存方法
キッチンペーパーなどで包んでからポリ袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で立てて保存しましょう。
日持ちはしないので、できるだけ早く使い切るようにしましょう。かためにゆでて水分をしぼり、使いやすい分量に分けてラップに包んでから冷凍すると日持ちします。
ほうれん草の栄養と効果
・βカロテン
緑黄色野菜に含まれるカロテノイドの一種です。強い抗酸化力をもち、体内では必要に応じてビタミンAに変換され、ビタミンAとしても働きます。
皮膚や粘膜の健康を保ち、視機能の維持にも役立ちます。
・ビタミンB2
脂質の代謝やタンパク質の合成にかかわっており、成長期の子どもには特に重要なビタミンです。
・ビタミンK
ビタミンKは血液の凝固に重要な働きを担っています。ビタミンKが不足すると出血したときに血が止まりにくくなる可能性があります。
また腸からのカルシウムの吸収を助ける働きがあり、骨の健康を保つためにも役立ちます。
・鉄
鉄は赤血球中のヘモグロビンの材料として重要です。
不足すると鉄欠乏性貧血の原因となります。ほうれん草には鉄の吸収を促進するビタミンCも含まれており、貧血の予防に有効な野菜のひとつといえます。
『油揚げ』とは?
油揚げは、薄く切った豆腐を油で揚げた、大豆の加工食品です。
調理前の下ごしらえで「油抜き」という作業がありますが、油抜きは必ずやらなくてはいけないものではありません。
そのまま使用しても大丈夫ですが、油抜きをすることで余分な油が抜けて、味のしみ込みがよくなります。
油揚げの保存方法
油揚げは冷蔵保存では数日しか日持ちがしません。
使い切れない場合は使いやすい分量に分けてラップで包み、冷凍用の保存袋に入れて空気を抜いて冷凍しましょう。
みそ汁や煮物は凍ったまま調理して大丈夫です。また、いなりずし用に甘辛く煮てから冷凍しても便利です。
油揚げの栄養と効果
・タンパク質
油揚げの原料である大豆に含まれる植物性タンパク質は、アミノ酸スコアが100である良質のタンパク質です。
タンパク質は体を構成する重要な成分で、体内では水分に次いで多い成分です。
タンパク質は体内で必要に応じて分解され、再び合成される新陳代謝を繰り返しており、生命を維持するためにさまざまな働きを担っています。
・大豆イソフラボン
大豆イソフラボンはポリフェノールの一種で、体内で女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをするといわれています。
更年期以降の女性はエストロゲンの分泌量が減少することで更年期障害や骨粗しょう症を引き起こす可能性があります。
大豆イソフラボンの摂取によってエストロゲンの不足を補い、更年期障害の症状を緩和したり、骨粗しょう症の予防に効果が期待されています。
煮浸しの簡単レシピ
【ほうれん草と油揚げの煮浸し】
【材料】(4人分)
・ほうれん草 1把
・油揚げ 2枚
・しめじ 1/2パック
・和風顆粒だし 小さじ1
・しょう油 大さじ1
・みりん 大さじ2
・塩 小さじ1/4
・かつお節 2g
【作り方】
1.ほうれん草は根元のかたい部分だけを切り落とし、たわしなどで軽くこすって土と汚れを落とします。茎の間も流水でよく洗います。
2.鍋にたっぷりのお湯を沸かし、ほうれん草をゆでます。根元からお湯につけ、少ししてから葉の部分もお湯につけます。
3.鍋の中でほうれん草の上下を返して、全体をゆでます。茎の部分のつまんでみて、まだ少しかたいうちに火を止めます。
4.ゆで汁を流し、流水にさらします。向きをそろえて束ねて水分を絞り、3~4㎝長さに切りそろえます。
5.油揚げは熱湯をかけて油抜きをしておきます。冷めたら水分を軽くしぼって、魚焼きグリルかオーブントースターで、軽く焼き目がつくまで両面を焼きます。焼けたら6等分くらいの食べやすい大きさに切っておきます。
6.しめじは小房にほぐしておきます。
7.鍋に水300ml(分量外)と調味料を全て入れて火にかけます。
8.煮汁が沸騰したらしめじを入れます。
9.しめじに火が通ったら、ほうれん草の茎の部分と油揚げを入れます。再び煮汁が沸騰したらほうれん草の葉を入れ、かつお節を入れて火を止めます。
10.ふたをして冷まし、粗熱がとれたらできあがりです。
【ほうれん草と油揚げの煮浸しの栄養量】
上記の材料で作った場合の、おおよそ1人分の栄養量です。
エネルギー:89Kcal
タンパク質:5.1g
脂質:4.6g
糖質:5.8g
レチノール活性当量:158㎍
ビタミンD:0.1㎍
ビタミンB1:0.08㎎
ビタミンB2:0.13㎎
ビタミンB6:0.09㎎
ビタミンB12:0.1㎍
ビタミンC:16㎎
カルシウム:63㎎
鉄:1.5㎎
亜鉛:0.7㎎
食塩相当量:1.2g
煮浸しレシピのまとめ
煮浸しは、薄味のだし汁で食材を短時間加熱して煮含めた料理です。
食材に火が通ったら火を止め、冷ます過程で味がしみ込むので、火通りのよい食材を選ぶことで短時間の加熱で済みます。
ほうれん草と油揚げ以外の食材でも、いろいろとアレンジできる調理方法です。
味のよくしみ込んだ煮物は、コトコトと長い時間煮なくてはならないと思われがちですが、大量調理では、比較的短時間でも味のしみた料理ができることがあります。
食材に火が通ったあとは、70~60℃を維持すると、食材の形は崩れずに味のしみ込みがよくなりますが、少量の食材を煮るよりも大鍋でたくさんの煮物を作る方が、加熱を止めた後の温度低下がゆっくりと進むため、長時間煮込まなくても味がしみると考えられます。
給食の肉じゃがやカレーがおいしいのは、大量調理ならではの効果もあるといえます。
【まごころケア食】のお弁当も、おいしくするためのいろいろな調理の工夫がされています。
1食の中でもいろいろな調理方法のメニューが盛り込まれており、食材はもちろん、味のバランスやメニューのバリエーションなどにもこだわっていて、飽きずに食べ続けることができます。
ぜひお試しください。
記事一覧へ戻る