目次
『あんかけ』について
あんかけは、調味した液体に片栗粉などのでんぷんを加えてとろみをつけたものと、それをかけた料理のことを指します。
あんかけの効果
とろみのついたあんかけにはいくつかの調理効果があります。
・温度が下がりにくい
とろみによる粘度で液体に対流がおこりにくくなるため、表面の温度は下がっても中心部の温度は下がりにくく、温度を維持することができます。
・具が均一に分布する
とろみによって流動性が低くなるため、とろみのついた液体の中にある具が浮いたり沈んだりしにくく、全体に分布します。
・調味料が食材に絡む
短時間の加熱で仕上げたい食材や料理の場合は、あんかけにすることで食材に調味料がなじみ、味を濃厚に感じられます。
あんかけのとろみの仕組み
片栗粉、コーンスターチ、くず粉などの主な成分はでんぷんです。
加熱前の生のでんぷんは硬く消化されにくい状態ですが、水を加えて加熱することででんぷんの粘度が増します。この状態を糊化(=α化)といいます。あんかけのとろみは、でんぷんが糊化することで生まれます。
でんぷんの種類
家庭で一般的に使われているでんぷんにはそれぞれ特徴があります。
・片栗粉(ばれいしょでんぷん)
料理にもっとも一般的に利用されている片栗粉は、じゃがいもを原料としたでんぷんです。糊化温度が55~66℃と比較的低く、糊化した後もとろみが持続し、透明感があります。
・コーンスターチ
とうもろこしを原料としたでんぷんで、洋菓子を作るときによく利用されます。でんぷんの粒子が小さく粒の大きさが均一なので、糊化した後の安定性が高く冷えても粘度が落ちませんが、糊化した後は不透明になります。
・くず粉
葛(くず)という植物の根を原料としており、原料が葛100%のものは「本くず粉」と呼ばれています。粒子が小さく糊化後は透明で、和菓子や日本料理に利用されます。
あんかけのポイント
とろみがゆるくなる、だまになるなど、失敗することも多いあんかけですが、なめらかなとろみのあんかけを作るためにはいくつかのポイントがあります。
・片栗粉をしっかり溶かす
水溶き片栗粉は、片栗粉1:水2の割合で作ると失敗が少ないといわれます。時間が経つと片栗粉が沈殿するため、混ぜる直前に再度よく混ぜましょう。
・いったん火を止めて入れ、絶えず混ぜる
家庭では、いったん火を止めてから水溶き片栗粉を少しずつ加えましょう。木べらやレードルなどで液体を絶えずかき混ぜながら入れ、再度火をつけて混ぜながら加熱します。
・しっかり加熱する
片栗粉のでんぷんは65℃程度で糊化が始まるので、とろみがついたと感じてすぐに火を止めてしまうと加熱が足りないことがあります。
絶えず混ぜながら煮立った状態を継続し、透明感が出てきたのを確認してから火を止めるようにしましょう。
・何回かに分けて入れる
とろみが緩いと感じたときは、あとから水溶き片栗粉を足しても大丈夫です。いったん火を止めて混ぜながら少量ずつ足して加熱し、とろみを調節しましょう。
・食材の水分を考慮する
もやしや葉物野菜、豆腐などは食材中の水分が多く、とろみをつけた後から食品中の水分が出てくることで、とろみが緩んでしまうことがあります。
あらかじめ下茹でをしておく、しっかり炒めるなど、食品中の水分を出してからとろみをつけるようにしましょう。
『天津飯』について
天津飯は「かに玉(芙蓉蟹)」と呼ばれる卵料理をごはんの上にのせ、あんをかけたものです。天津丼やかに玉丼と呼ばれることもあります。
天津飯のもととなる料理は
天津飯の具の部分はかに玉という卵料理で、中華では「芙蓉蟹(ふようはい)」と呼ばれる広東料理のひとつですが、中国ではかに玉をごはんにのせて食べることはあまりないようです。
中国ではごはんとおかずは別々に食べることが多く、ごはんにおかずをのせる食べ方は家庭料理であり、お店で出すような中華料理ではないと考えられています。
香港では「芙蓉煎蛋飯」という卵焼きをごはんにのせた料理がありますが、卵焼きにかには使用せず、あんかけもありませんが、比較的天津飯に似た料理といえます。
天津飯は日本生まれ
天津飯は日本で生まれた中華料理で、その誕生は東京説と大阪説があります。
東京説は、日本に初めてラーメンを持ち込んだ中華料理店として有名な「来々軒」が、客の「早く食べられるもの」という要望に応え、かに玉をごはんにのせて酢豚のあんをかけたことから生まれたというものです。
一方の大阪説は、戦後の食糧難に中国天津市で食べられていた「蓋飯」を参考に、かに玉をごはんにのせてあんをかけたというものです。
どちらが先に生まれたかははっきりとしていませんが、天津飯のあんかけが関東では「甘酢あんかけ」、関西では「しょう油あんかけ」が一般的であることが、これらの説からもうかがえます。
中華あんかけのレシピ
今回はかにかまを使ったかに玉に、酸味のない、しょう油ベースのあんをかけました。
【天津飯】
【材料】(2人分)
<あん>
・水 150ml
・鶏がらスープの素 小さじ1/2
・酒 大さじ1
・みりん 大さじ1
・砂糖 小さじ1
・はちみつ 小さじ1
・しょう油 小さじ2
・オイスターソース 小さじ1
・生姜チューブ 1㎝くらい
・こしょう 適量
・しいたけ 2個
・片栗粉 小さじ2
<卵焼き>
・卵 4個
・長ねぎ 10㎝くらい
・かにかま 60g
・酒 大さじ2
・酢 小さじ1
・こしょう 適量
・ごま油 小さじ2
【作り方】
1.しいたけは石づきを取り、半分に切ってからスライスします。長ねぎはみじん切り、かにかまはほぐしておきます。
2.かに玉は1人分ずつ焼きます。ボールに卵2個を割り入れ、酒大さじ1と酢小さじ1/2、こしょう適量、長ねぎとかにかまはそれぞれ半量を卵に入れてよく混ぜます。
3.ごま油小さじ1をフライパンに入れて火をつけます。フライパンが温まったら、2.の卵液を入れます。混ぜながら加熱し、半熟になったら裏返してふたをして火を通します。
4.お皿にごはんを盛っておきます。卵がふんわりと焼けたらごはんの上にのせておきます。
5.鍋に、片栗粉以外のあんの材料を全て入れて火にかけます。片栗粉は倍量の水に溶かしておきます。
6.沸騰したら水溶き片栗粉を入れます。撹拌しながら少量ずつ入れてよく混ぜます。再び沸騰したら火を弱め、混ぜながらしっかり加熱しましょう。
7.4.の卵の上にあんをかけてできあがりです。
※お好みで青ねぎやグリーンピースなどをトッピングしましょう。
※かに玉に酢を少量入れるのは、卵をふっくらと焼くためです。かに玉に酸味は残りません。省略しても大丈夫です。
※あんのとろみは様子をみながら、水溶き片栗粉の量で調節してください。
【天津飯の栄養量】
上記の材料で作った場合の、おおよそ1人分の栄養量です。(ごはんは含まれません)
エネルギー:284Kcal
カルシウム:87㎎
ビタミンD:5.0㎍
タンパク質:15.9g
鉄:1.6㎎
ビタミンB1:0.09㎎
脂質:13.7g
亜鉛:1.4㎎
ビタミンB2:0.40㎎
糖質:17.6g
ビタミンC:2㎎
ビタミンB6:0.13㎎
食塩相当量:2.7g
レチノール活性当量:194㎍
ビタミンB12:1.2㎍
あんかけレシピのまとめ
天津飯は、かに玉をごはんにのせてあんをかけた料理です。
日本の中華料理店では一般的なメニューですが、天津飯は日本で生まれた料理です。あんかけにはいくつかの調理効果があり、ちょっとしたコツを覚えれば、家庭でもなめらかなあんかけを作ることができます。
【まごころケア食】のお弁当は、和食、洋食、中華など、いろいろなメニューがあり、毎日でも食べ飽きません。
管理栄養士が監修したメニューは、栄養バランスが整っているだけではなく、味付けや食材の組み合わせなどにもこだわっており、日常のお食事の参考にもなります。ぜひお試しください。
記事一覧へ戻る