不安定な社会情勢の影響で、生活に必要なさまざまなものの値段が上昇しています。
日本政府は打開策を打ち出してはいるものの、庶民はその効果を実感できていないのが現状ではないでしょうか。
食品や生活に必要な消耗品の値上げに加え公共料金も引き上げられ、収入が限られている一人暮らしの高齢者にとっては生活に大きな影響を与えます。
一般的には電気代は光熱費の中でも大きな部分を占めており、一人暮らしの高齢者の生活費を圧迫する可能性が考えられます。
目次
電気料金が値上がりしている理由
2021年9月から電気料金の値上がりが続いています。
電力市況の悪化や電量需給のひっ迫、不安定な世界情勢の影響など、電力の調達にさまざまな支障が出ていることが電気料金に影響を及ぼしています。
初めに電気料金の仕組みと値上がりしている原因を理解しましょう。
電気料金の内訳
電気料金にはいくつかの料金制度がありますが、一般的な電気料金は次のように計算されています。
電気料金=(基本料金)+(電力量料金単価×1か月使用量±燃料費調整単価×1か月の使用量)+(再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×1か月の使用量)
電力会社の値上げ、料金改定
上記の計算式の項目のうち基本料金と電力量料金は各電力会社が決定しますが、「原価主義の原則」「公正報酬の原則」「電気の使用者に対する公平の原則」の3原則に基づいて設定され、値上げには経済産業大臣の認可が必要です。
燃料費調整単価
燃料費調整単価は、原油やLNG(液化天然ガス)、石炭の燃料価格の変動に応じて毎月変わります。
日本での主な電気の発電は、石炭やLNG(液化天然ガス)などを利用した火力発電であり、その燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。
そのため2021年9月からの電気料金の値上げの主な原因は、不安定な世界情勢による原油やLNG(液化天然ガス)、石炭などの輸入価格が高騰したことによって燃料費調整額が値上げされており、それに伴って電気料金も値上がりしています。
託送料金
託送料金とは、電気小売業者が一般送配電事業者に支払う「送配電網の利用料」です。
「送配電網」とは、発電所で作った電気を消費地(家庭など)まで運ぶ設備のことで、送電線や変電所、電線、電柱などがあります。
2023年4月1日から託送料金の値上げが決定されており、一部の電力会社ではすでに託送料金値上げに伴う料金改定を発表しています。
再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電などの再生可能エネルギー発電を普及・拡大させることを目的として、電力会社が再生可能エネルギー買取の費用を消費者が負担しているもので、年度ごとに経済産業省が算定しています。
2023年4月分までは3.45円/kWh であり、前年度より0.09円/kWh高くなっています。
高齢者の電気代は若い人よりも高い
総務省の調査による「1世帯当たり品目別支出金額及び購入頻度(単身世帯)」の結果をみると、2019年のデータでは65歳以上の単身世帯の1年間の電気代の平均額は68,399円、2022年では81,695円と年間1万円以上多くなっています。
同じ一人暮らしでも、高齢者は若い人よりもひと月あたりの電気代が高くなる傾向があり、生活費を年金に頼っている一人暮らしの高齢者にとって電気代の値上がりは、生活費を圧迫する可能性があります。
高齢者の電気代が高くなるのには、いくつかの理由が考えられます。
家にいる時間が長い
仕事を退職した高齢者は毎日決まって行く場所が無くなり、家で過ごす時間が多くなる傾向があります。
照明や冷暖房、電子レンジなどは在宅時間が長いほど利用時間や利用頻度が高くなると考えられ、家にいるときにはなんとなくテレビをつけたままにしている高齢者も多いのではないでしょうか。
年齢に伴う生活環境の変化は、電気代にも影響を及ぼすと考えられます。
家が広い
もともと若い頃から一人暮らしをしていたのではなく、家族で住んでいた家でそのまま生活している場合は、一人暮らしには広すぎることがあります。
部屋が広いことで冷暖房機器の消費電力も多くなったり、部屋数が多いことで照明や掃除機などの家電を使用する頻度も増えると考えられます。
身体機能の変化
加齢に伴う心身の変化によって、電気の使用量が多くなることがあります。
視力の低下によって視界が暗く感じて照明を使う時間が長くなったり、体温調節のために冷暖房機器を使用することは、転倒などの事故を防いだり、ヒートショックや熱中症などを予防して健康を維持するためにも必要のものです。
電気代を節約するために
一人暮らしの高齢者に限ったことではありませんが、電気代を節約する方法はいろいろとあります。
しかし高齢者の場合には冷暖房などを過度に節電することで、健康を害してしまう可能性もあります。
適切な節電方法によってがまんし過ぎず、健康を保ちながら節電することが重要です。
エアコンとサーキュレーターの併用
エアコンは、一般家庭では最も消費電力の高い家電ですが、暑い季節も寒い季節も一年を通して利用する時期は長く、体温調節のためには欠かせないものです。
室温の設定温度によって消費電力が変動するので、設定温度は控えめにし、冷房でも暖房でもサーキュレーターや扇風機を使って室内の空気を循環させるとエアコンの効果を高めることができます。
エアコンは起動時や室温が大きく変化したときに消費電力が多くなるので、頻繁にスイッチを切ったり入れたりせず、自動運転を続けている方が電気代は抑えられるといわれています。
また使用する部屋の広さに適したエアコンを使用し、フィルターなどの清掃をすることも節電につながります。
室外機に直射日光が当たっているような場合には、冷房の稼働時に影響を及ぼすため、遮光シートなどで室外機が暖まらないような工夫も節電効果があります。
家電の清掃、買い替え
エアコンや掃除機などのフィルターが目詰まりすると、消費電力が上昇するだけではなく、故障の原因となることもあります。
また冷蔵庫も定期的に庫内を清掃すると、期限切れの食品などを処分することができ、食品の詰め過ぎや食品の買い過ぎを防ぐことができます。
冷蔵庫のドアを長時間開けたままにすると無駄に電力を消費してしまうため、開閉は手早く行いましょう。
一般的に、機能や仕事効率が同レベルの家電であれば、新しい機種の方が消費電力は抑えられます。
古い家電は思い切って買い替えると節電になることもあります。
同様に照明器具をLEDに変えると、消費電力が抑えられるだけではなく電球の寿命が長いため節約につながります。
電力会社を変える
2016年4月から、電力の小売り事業は全面的に自由化されており、電力会社や料金プランを自分で選ぶことができるようになっています。
地域や生活スタイルによっても異なりますが、電力会社を変えることで節電につながる可能性があります。
電力会社によっては、高齢者向けの生活サポートや、電力会社を変える際に設置されるスマートメーターを利用して、使用電力の変化によって異変を察知する高齢者の見守りサービスなどが受けられることもあります。
しかし電力会社の切り替えに伴うトラブルや犯罪も発生しているため、注意が必要です。
外に出る
仕事を退職した高齢者は家にいる時間が多くなり、必然的に電気の使用量が増えます。
特に冷暖房が必要な時期には、体調管理のためにも終日エアコンを使用したり、なんとなくテレビをつけっぱなしにしていたりすることで、電気の使用量が多くなっています。
趣味の活動やボランティア活動など、外に出る時間を作ることで電気代が節約できることがあります。
社会とのかかわりを持ち積極的に行動することは、心身の健康を維持するためにも役立ちます。
高齢者の一人暮らしと電気代
国の経済対策によって2023年1月から電気料金が引き下げられています。
電気料金に対して経済対策が行われたのは初めてで画期的なことではありますが、この経済対策も2023年9月使用分までとなっていて、そのあとは延長される可能性もありますが、縮小されるとみられています。
高齢者の一人暮らしでは電気機器の使用は健康維持のためにも必要なものであり、過度の節電は勧められません。
無駄な部分を上手にみつけ、適切な節電で電気代を節約しましょう。
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