高齢者が一人暮らしでも安心して使える暖房器具とは

高齢者が一人暮らしでも安心して使える暖房器具とは
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一人暮らしの高齢者の中には、電気代を節約するために冷暖房器具の使用を控える人がいます。

夏季に冷房を使わないことで熱中症のリスクが高まることは知られていますが、冬季も暖房を使わないことで健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

しかし、暖房器具も使い方を誤ると事故につながる恐れがあります。一人暮らしの高齢者でも安心して使える暖房器具について考えてみましょう。

寒さが高齢者に及ぼす影響

高齢者は筋肉量の減少や体温調節機能の低下によって、体が冷えやすいことがあります。

体が冷えることは高齢者にとってさまざまな悪影響があるため、冬季は適切に体を保温する必要があります。

しかし麻痺や感覚機能の低下、認知症の症状などによっては、寒さを適正に感じられないこともあるので注意が必要です。

低体温症

極度に体が冷えて直腸温が35℃以下になった状態を低体温症といい、最悪の場合には命にかかわることもあります。

通常は山や川などアウトドアでの活動時に注意が必要な症状ですが、高齢者の場合は筋肉量の減少や低栄養などによって、室内でも低体温症を引き起こす可能性があります。

免疫力の低下

人の免疫機能が正常に働くことができる体温は36.5℃であり、そこから体温が1℃下がると免疫力は30%低下するといわれています。

体が冷えて免疫力の低下した高齢者は感染のリスクが高くなると考えられ、適切な体温を維持することは感染症予防のためにも重要といえます。

関節痛

寒さで血管が収縮して血流が悪くなると筋肉がこわばり、関節に負担がかかって痛みが生じることがあります。

関節の痛みを改善するには、無理のない範囲で運動することも有効ですが、寒いために外出する機会が減少したり、体を動かさなくなってしまうことで関節痛が悪化する可能性もあります。

脱水症

冬季は汗をかく機会が少なく、年齢にかかわらず水分の摂取量が減少する傾向があります。

空気が乾燥した冬の環境では、無意識のうちに皮膚や呼吸によって蒸発する水分が増えており、気づかないうちに脱水症状を招く可能性があります。

特に高齢者ではのどの渇きを感じにくかったり、トイレの回数が増えることを避けるために水分摂取量が減少していることがあるため、冬季であっても脱水症には注意が必要です。

ヒートショック

ヒートショックとは、温度差によって血圧が急激に変動し、心臓や血管にダメージを受けることをいいます。

特に入浴時に発生しやすいことが知られており、寒い脱衣所や浴室では血圧が上がり、浴槽に入ると血管が拡張して血圧が急激に低下することで、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などを引き起こす原因と考えられています。

高齢者は血圧変化が起こりやすく、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの疾患がある場合は特に注意が必要です。

ヒートショック

暖房によって発生する可能性のある事故

高齢者は皮膚の感覚(触覚)や嗅覚などの感覚機能が低下していることがあり、熱さやにおいから異常を察知しにくいことがあります。

さらに認知症がある場合には暖房器具を正しく使えない可能性もあり、事故につながる危険性は高まると考えられます。

一酸化炭素中毒

一酸化炭素は非常に毒性の強い無味無臭の気体です。

空気中の一酸化炭素濃度が上昇すると、めまいや吐き気などの中毒症状が生じ、命にかかわることがあります。

暖房器具の種類によっては室内の酸素を利用して燃焼して排気ガスを排出する仕組みであるため、換気をせずに暖房器具を使用し続けると室内の酸素濃度が低下して不完全燃焼となり、一酸化炭素が急増するため一酸化炭素中毒を引き起こすことになります。

火事

火を使わない暖房器具であっても、誤った使い方をすれば火事につながる可能性があります。

特に古い暖房器具では安全装置がついていなかったり、内部に汚れやほこりがたまっていたりすることで火事になりやすい可能性もあります。

火事

低温やけど

低温やけどは、熱いとは感じない心地よい程度の温度の発熱体に、皮膚の同じ場所が長時間接していることで生じるやけどです。

自覚症状がないまま進行するため、気づいたときには重症化していることもあります。

特に高齢者では体を動かしにくかったり、皮膚が薄く皮膚の感覚機能が低下していることによって、湯たんぽなどでも低温やけどになることがあります。

暖房器具の種類別メリットとデメリット

いろいろな種類の暖房器具がありますが、どのような暖房器具でも安全装置がついていることを確認しましょう。

転倒時に自動でオフになる機能や切り忘れ防止機能、過加熱防止機能などは一般的に装備されていることが多いようです。

居住環境によって効率の良い暖房器具を選ぶことはもちろんですが、一人暮らしの高齢者の場合は、使用する方の心身の状態に応じて、使いやすく安全性の高い暖房器具を選ぶことが必要です。

石油ストーブ

石油ストーブは灯油を燃料としたストーブで、石油ストーブに送風ファンがついたものは石油ファンヒーターとも呼ばれます。

室内全体が比較的早く暖まり、種類が豊富で大きさもいろいろあるので、居住環境によって選ぶことができます。

灯油を扱うため、体力や認知機能が低下した高齢者には適切な管理が難しいことがあります。

またやけどや火事、一酸化炭素中毒の危険性は比較的高く、一人暮らしの高齢者に限らず使用には注意が必要です。

電気ストーブ

電気で発熱体を温め、その熱を温風として送る仕組みなので燃焼を伴わず、一酸化炭素中毒の危険性は比較的低いと考えられます。

近くにものが置いてあると着火して火事になることがあるため、ものが多い場所での使用は火事の危険性が高くなります。

また麻痺があるなど皮膚の感覚機能が低下している場合には、電気ストーブに近づきすぎてやけどしたり、衣類に着火する危険もあります。

セラミックファンヒーター

セラミックで覆われた電熱線を電気で加熱し、赤外線の熱をファンで送風する仕組みです。

軽くてコンパクトなものが多く室内で持ち運びができますが、広い範囲を暖めるのには適していません。

短時間で周辺が暖まりますが室内の空気は乾燥することがあり、温風によってホコリやハウスダストが舞うことがあります。

オイルヒーター

電気で内部の油が加熱され、温度が上がった油が内部を循環することで放熱する仕組みです。

空気を汚さず運転音も静かで、本体外側の清掃だけで比較的長期間使用することができますが、油が暖まるのに時間がかかるため速暖性はありません。

本体温度もそれほど高温にはならないため、比較的やけどや火事のリスクは低いと考えられますが、その分暖房効率は高くないため、室内全体を暖めようとすると本体の大きさも大きく重くなります。

こたつ

高齢者には馴染みの深い暖房器具のひとつですが、部屋全体を温める機能はなく、比較的広い設置場所が必要です。

現在こたつの熱源に利用されているのは主に、石英管ヒーター、ハロゲンヒーター、フラットヒーターの3種で、石英管ヒーターは赤外線の効果で体を芯まで暖めますが、こたつ内が暖まるまでに時間がかかります。

ハロゲンヒーターは即暖性がありますが、比較的電気代がかかります。

フラットヒーターはやけどの危険性は比較的低く、電気代も抑えられますが、使用環境によっては他の暖房器具と併用が必要なこともあります。

こたつに入ったまま眠ってしまうなど長時間の使用によって、気づかないうちに脱水症や低温やけどの危険性があるため注意が必要です。

ホットカーペット

カーペット内部に通した電線に通電することで発熱します。

床面からの冷たい空気を遮断し、体に触れる部分から直接暖かさを感じることができますが、室内全体を暖める効果は期待できません。

温度調節ができるものがほとんどですが、設定温度によっては長時間の使用によって脱水症や低温やけどの危険性があります。

また誤った使用方法によって内部ヒーターが損傷すると火事の原因となったり、ペースメーカーを使用している場合は頻繁なスイッチ操作によってペースメーカーの作動に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。

一人暮らし高齢者の暖房器具のまとめ

一人暮らしの高齢者が寒い季節を健康に過ごすために暖房器具は必ず必要なものといえますが、どのような暖房器具であっても使用方法を誤ると、健康に悪影響を及ぼしたり事故につながる危険性があります。

居住環境に適した暖房器具を選ぶことに加えて、使用する高齢者の心身の状態を考慮した暖房器具を使用することが大切です。

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この記事の作成者:S.M(管理栄養士)
この記事の提供元:シルバーライフ

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