ほうれん草は、一年を通して購入できるとても親しみのある野菜です。
栄養価が高いことでも知られている緑黄色野菜の一種ですが本来の旬は冬であり、寒くなると甘味が出てよりおいしくなります。
今回はほうれん草の特徴や栄養についてご紹介するとともに、ちょっとおしゃれな朝食やブランチ、お酒の席などにもぴったりな、「ほうれん草とベーコンのキッシュ」のレシピをご紹介します。
目次
ほうれん草の歴史
ほうれん草は中央アジアからイラン、カスピ海南西部にかけての一帯が原産とされていますが、原種は発見されておらず、詳しいことは確認されていません。
シルクロードを経てヨーロッパに伝わり、17世紀には栽培されていたとされています。
東アジアにもシルクロードを経て伝わり、7世紀ころに中国へ伝わりました。
日本へは江戸時代に中国から入ってきたとされていますが、アクが強かったため一般に広まることはなく、日常的に食べられるようになったのは大正時代後期から昭和初期にかけてのことです。
ほうれん草の種類
通年で市場に出回るほうれん草ですが、本来の旬は冬です。
特に、厳しい寒さの中で寒気にあてて栽培されたほうれん草は「寒締めほうれん草」や「ちぢみほうれん草」と呼ばれます。
葉は縮れて厚みがあり軸も太くなっていますが、やわらかくてアクが少なく甘みがあります。
また「サラダほうれん草」はアクやえぐみが少なく、生でも食べられるように品種改良されたほうれん草です。
通年で出まわっていますが、こちらは春から初夏が旬です。葉が小さくて茎も細くやわらかいので、名前の通りサラダに適したほうれん草です。
ほうれん草のアク
ほうれん草にはシュウ酸という成分が比較的多く含まれています。
シュウ酸はアクやえぐみの成分であり、多量に摂取すると体内で結石を作り、尿路結石などの原因となる可能性があります。
ほうれん草中のシュウ酸は水溶性なので、ゆでこぼすことで約40~50%減少するという実験結果もあり、一度によほど多量に食べなければ心配はないと考えられていますが、尿路結石などの既往歴がある場合には注意しましょう。
サラダほうれん草など生食用のほうれん草ではないものは、たっぷりの湯でゆでてから水にさらし、アク抜きをして調理することで、苦みやえぐみが抜けておいしく食べることができます。
ほうれん草の栄養価とは?
ほうれん草にはビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富に含まれています。
①βカロテン
βカロテンは自然界に存在する、赤や黄色の色素の一種です。
必要に応じて私たちの体内でビタミンAへと作り変えられ、視機能の維持や、肌や粘膜を保護する働きがあります。
さらに免疫力を高めたり、抗酸化作用によって活性酸素の発生を抑制する働きもあります。
βカロテンは加熱したり油と一緒に摂ることで吸収率が高まるため、ほうれん草をゆでこぼしてから短時間油で炒めると、効率よくβカロテンが摂取できます。
②ビタミンC
ほうれん草は通年で出まわっていますが、冬に採れたほうれん草は他の季節に採れたほうれん草と比較すると、より多くのビタミンCを含んでいます。
ビタミンCは私たちの肌や骨の細胞同士をつないでいるコラーゲンの生成を促し、美肌効果や骨の健康を維持するために必要です。
また、精神的、肉体的なストレスを受けると、体内でビタミンCが大量に消費されます。
日々ストレスにさらされる方は不足しないように摂取することが大切ですが、ビタミンCは体内にためておくことができず、余分な分は尿とともに排泄されてしまうため、毎日摂取することが必要です
③ビタミンK
ビタミンKは脂溶性ビタミンの一種で、出血したときに血液を固めて血を止める因子を活性化する働きがあります。
また骨の形成を促進するため、骨粗しょう症の治療薬としても利用されており、ビタミンDとともに骨の健康維持に役立ちます。
④葉酸
葉酸はほうれん草から発見されたビタミンです。ビタミンB群の仲間であり、ビタミンB12とともに赤血球を合成するために必要です。
また妊娠初期の女性が葉酸不足になると、胎児の成長に影響を及ぼすことが知られています。妊娠を望む女性や妊娠・授乳中のは、特に不足しないようにしましょう。
⑤鉄
鉄は、赤血球中のヘモグロビンを作るために必要です。
ヘモグロビンは体の隅々まで酸素を届ける働きがあるため、不足すると鉄欠乏性貧血の原因となり、動悸や息切れ、めまいなどの症状を引き起こす可能性があります。
ほうれん草に含まれる鉄は非ヘム鉄であり、動物性の食品に含まれるヘム鉄と比べると吸収率が低いのですが、ビタミンCや動物性のタンパク質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。
⑥ルテイン
ルテインはカロチノイドの一種で、天然の黄色い色素成分です。
ほうれん草をはじめとする緑黄色野菜に多く含まれていて、強い抗酸化作用を持ち紫外線やブルーライトから目を守る働きや、目のぼやけを改善する機能が期待されています。
人の目の中の黄斑部や水晶体に存在していますが、加齢によって減少していくことがわかっており、体内では合成されないため、食事から摂取することが必要です
ほうれん草とベーコンのキッシュ
時にはちょっとおしゃれに、カフェ風にキッシュを楽しんでみませんか?
今回はキッシュによく合う、「パータフォンセ」という生地を使用しますが、市販のパイシートや、サンドイッチ用の食パンを利用すると、さらに簡単に作ることができますよ。
≪キッシュ≫
【材料】直径23cmのキッシュ型1個分
・ほうれん草…2束
・ベーコン…60g
・卵…3個
・牛乳…300cc
・ピザ用チーズ…70g程度
・パータフォンセ(下記参照)
またはパイ生地、サンドイッチ用食パンなど適宜
【作り方】
①ほうれん草は洗って土を落とし、さっと塩ゆでしてから水にさらし、しっかりと水分をしぼります。食べやすいおおきさにに切ってほぐしておきましょう。ベーコンは薄切りなら3~5cm幅程度、ブロックタイプのものなら1cm幅の拍子木切りにしておきます。
②ボールに卵を溶きほぐし、牛乳、こしょうを加えてよく混ぜておきます。この生地を「アパレイユ」と呼びます。
※塩ゆでしたほうれん草、チーズ、ベーコンにそれぞれ塩分が加わっていますので、敢えてここでは塩分を加えていません。お好みで塩を加えて味を調えてください。
③パータフォンセに打ち粉(分量外・強力粉または薄力粉)を振って5mm程度の厚みに伸ばし、キッシュ型、またはお好みのココット、タルト型などに敷き込みます。
※パータフォンセまたはパイ生地の場合は、ここで生地のみから焼きをしておいても良いでしょう。
その際はアルミホイルまたはオーブンシートを敷いた上にタルトストーンや小豆などを乗せて重しとし、180℃のオーブンで15分程度焼いておきます。
食パンを使用する場合は、耳を落としたパンを麺棒またはラップの芯などで薄くのばしてから、型に敷き込み、溶かしバターを塗っておきます。
④③の型に①のほうれん草、ベーコンとチーズをバランスよく入れ、②のアパレイユを静かに注ぎ入れます。
⑤180℃に予熱したオーブンで約20分焼き、温度を160℃に下げてさらに20分程度焼きます。中心に竹串などをさしてみて、不透明な液が出てこなくなるまで焼いて完成です。
≪パータフォンセ≫
【材料】直径23cmのキッシュ型1個分
・バター…150g
・薄力粉…250g
・塩…ひとつまみ
・砂糖…小さじ1
・水…大さじ1.5
・卵…1個
【作り方】
①室温に戻したバターを柔らかく練り、薄力粉をふるい入れてよく混ぜます。
②ボールに卵を入れてよく溶きほぐし、水、塩、砂糖を入れてよく混ぜて溶かします。
③①に②の卵液を少しずつ加えてよく混ぜ、全体がなじんだらラップフィルムで包み、冷蔵庫で30分以上休ませます。
ほうれん草レシピのまとめ
通年で購入できて、とても身近な野菜であるほうれん草。和洋中さまざまな料理に合う懐の広さも魅力です。
近年は冬の寒さに当てることで甘味や旨みが増えてアクやえぐみの少ないちぢみほうれん草や、やわらかくてアクが少なく生食できるサラダほうれん草などは、スーパーなどでも手に入るようになりました。
季節や料理に合わせて選び、使い分けるのも楽しいですね。
記事一覧へ戻る