高齢者の中には自分が望んで1人暮らしをしている人もいれば、何らかの理由で1人暮らしになってしまった人もいます。
いずれの場合でも心身が健康なうちは特に困ることもなく生活できますが、年を重ねていくごとに病気や事故のリスクは高くなっていくと考えられます。
1人暮らしが心細くなってきたときに、利用できる支援について知っておきましょう。
目次
高齢者の1人暮らしは増加している
さまざまな理由によって高齢者の1人暮らしは増加傾向にあります。
社会的な理由だけではなく、近年は特に高齢者の価値観が変化していることも理由のひとつと考えられています。
内閣府による「令和4年版高齢者白書」を参考に、高齢者の1人暮らしについて考えてみましょう。
高齢者の1人暮らしの現状
65歳以上の1人暮らしは男女ともに増加傾向にあり、2020年(令和2年)には65歳以上の男女のそれぞれの人口に占める割合は男性15.0%、女性22.1%となっています。
国立社会保障・人口問題研究所による将来推計では、その20年後の2040年(令和22年)は男性20.8%、女性24.5%に増加し、65歳以上の高齢者のうち4~5人に1人が1人暮らしをしていると予測されています。
高齢者の1人暮らしが増加する理由
高齢者の1人暮らしが増加している理由は、少子高齢化や核家族化、晩婚化や未婚率の増加など、社会構造の変化が主なものであるといわれていますが、それと同時に高齢者側の意識の変化もあると考えられます。
「令和4年版高齢者白書」では、経済的な暮らし向きに心配がない65歳以上の人は68.5%となっており、他の年代の世帯と比較すると高齢者世帯の所得は低くはなっていても、生活に困らない程度の何かしらの収入がある人が増えているのではないかと考えることができます。
公的年金など年金受給に加えて、60歳以上でも収入を伴う労働をしたいと考える高齢者は増加しており、実際に65~69歳の男性で49.0%、女性で29.8 % の高齢者が就業しています。
全産業において65歳以上の雇用者は増加しており、定年到達者の4分の3が継続雇用されているという調査結果となっています。
給与所得があることで経済的に自立できる高齢者が増えていることは、高齢者の1人暮らしに大きく影響していると考えられます。
高齢者の1人暮らしのリスクについて
1人暮らしは年齢にかかわらず、自由気ままに自分のペースで生活ができるメリットはありますが、その反面自分でも気づかないうちに、健康に悪影響を及ぼすような生活習慣となっていることもあります。
年齢を重ねていくことで病気や事故のリスクは高まっていくので、高齢者は特に注意が必要です。
低栄養
高齢者の1人暮らしでは食材の買い物や調理が面倒になり、同じ食品ばかリを食べたり、食事の回数が減ったりすることで栄養のバランスが崩れ、低栄養を招くことがあります。
社会とのかかわりが減少して活動量が減少し、さらに食欲が低下するといった悪循環を招く可能性もあります。
食事の量が減ったり栄養のバランスが偏ることで体力が落ち、免疫機能が低下して感染症に罹患しやすくなったり、認知機能にも悪影響を及ぼす可能性があります。
サルコペニア
サルコペニアとは筋肉量が減少した状態を指します。
高齢者の1人暮らしでは運動不足に低栄養が重なり、サルコペニアを引き起こすリスクが高まると考えられます。
筋肉が減少することで歩行が不安定になり、転倒して骨折すると要介護の状態へとつながる可能性があります。
病気や認知症に気づきにくい
うつ病や睡眠時無呼吸症候群など、本人では気づきにくい病気があります。また認知症も、本人は気づかないうちに進行してく病気です。
さらに心筋梗塞や脳卒中など、急激に強い症状が現れたときに助けを呼べず、最悪の場合はそのまま命を落として孤独死につながる恐れもあります。
社会的孤独
日常的に人と会話をしない、近所づきあいがない、困りごとを頼める人がいないなど、社会とのかかわりが無くなった状態を社会的孤立といいます。
内閣府の調査では社会的に孤立した高齢者は生きがいを感じていない人の割合が多いという結果があり、認知症の発症・進行や孤独死などにつながる可能性が高くなると考えられています。
犯罪に巻き込まれる
高齢者が被害者となった犯罪割合は増加の傾向があります。
ひったくりやスリのほか特殊詐欺のような知能犯において増加が顕著となっており、特殊詐欺の被害者は70歳以上の女性が全体の40.2%を占めています。
高齢者の単身世帯は習慣的に戸締りが十分でないなど防犯の意識が低いことも多く、犯人は万が一犯行を目撃されても逃げやすく捕まりにくいと考えているため、高齢者の1人暮らしは狙われやすいといえます。
災害時
近年は台風や地震の被害が毎年のように起きています。
高齢者の1人暮らしの場合、日ごろの備えが不十分であったり、いざという時の避難行動が遅れがちです。
視機能や聴覚機能が低下していることで状況が適正に把握できず、危機感が低いこともあります。
避難場所を知らなかったり、避難所まで自力で避難できないケースや、さまざまな理由で避難所の生活に適応が難しいケースもあります。
高齢者の1人暮らしのリスクの支援策
高齢者の1人暮らしにはさまざまなリスクがありますが、それらに対する支援策も考えられています。
支援策があることを知っておくだけでも、安心感につながるかもしれません。
どのような支援も高齢者本人の意向を尊重し、年齢や心身の状態に合った支援が選択できることが理想です。
家族や親せきが近くにいる
さまざまな理由で同居が難しい場合でも、近くに家族や親せきが住んでいて気軽に行き来ができれば、1人暮らしの高齢者にとって大きな支えとなります。
しかし実際に住んでいる距離が近いことだけではなく、高齢者が気軽に頼れる関係性があることが重要です。
見守りサービス
自治体で実施されているサービスも民間企業が提供するサービスもあります。
見守りの方法もさまざまで、定期的に担当者が自宅を訪問して安否確認をする方法や緊急通報装置の設置、センサーやカメラの設置などいろいろあります。
見守りサービスの内容によって費用も異なるため、自治体の担当窓口や地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
配食サービス
配食サービスを利用すれば、調理の手間なく栄養バランスの整った食事を摂ることができます。
配食事業者によってはエネルギー量や塩分量、タンパク質量などに配慮したものや、お粥や嚥下調整食などに対応したお弁当もあります。
冷凍のお弁当の場合は電子レンジなどで温めて好きな時に食べることができるので、買い置きしておけば生活のペースに合わせて利用することができますし、決まった日時にお弁当を配達してくれる場合には、見守りサービスも兼ねていることもあるので、生活の様子や心身の状態に合わせて利用するとよいでしょう。
費用は配食事業者によって異なりますが、自治体で配食サービスが実施されている場合や、配食サービスの利用に補助金がある自治体もあります。
介護保険のサービス
心身の状態によっては、介護認定を受けることで介護サービスが受けられます。
介護度によって利用できる介護サービスは異なりますが、必要に応じてリハビリやデイサービス、訪問介護などが利用できます。
定期的に担当のケアマネジャーの訪問があるので、ケアマネジャーと相談しながら必要な介護サービスを受けられるように調整します。
社会参加
高齢者自身が社会参加して地域とのかかわりや役割を持つことで、生きがいや介護予防につながります。
収入を伴う仕事を続けていくことはもちろん、趣味の活動やボランティア活動、地域活動など身近で興味のあることに取り組み、年齢や立場に関係なくいろいろな人とつながりを持つことで、見守りの効果も得られます。
高齢者の1人暮らしのリスクのまとめ
高齢者の1人暮らしを支えるサービスは自治体によって実施されているものも、民間企業が提供するものもあります。
それぞれ内容も費用も異なりますが、利用する人の心身の状態に適したサービスを利用することで安心して1人暮らしを継続することができます。
住んでいる地域によっても異なるため、自治体の担当窓口や地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
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