「福祉」という言葉は、「福」にも「祉」にも「幸せ」の意味がありますが、現在の日本では、全ての人に対しての「最低限の幸福と社会的援助の提供」や「公的扶助やサービスによる生活の安定や充足」などといった意味で使われています。
今後も増加が見込まれている高齢者の一人暮らしを支える「福祉」には、どのようなものがあるのでしょうか。
目次
高齢者の一人暮らしの限界サイン
高齢者だけに限りませんが、心身ともに健康で元気なときは、一人暮らしに不安を感じることはないかもしれません。
何かをきっかけに一人暮らしが不安になったとき、高齢者本人から助けを求めることは難しいこともあります。
高齢者の生活に変化がみられたとき、一人暮らしが困難となる前兆であることがあります。
家の様子が変わる
いつもきれいに片付いていた部屋が散らかっている、ほこりが積もっている、ゴミがたまっている、庭が荒れているなど、家の中や周囲の様子に変化がみられることがあります。
その理由はさまざまで、体に痛みがあって動きにくいなど体調が原因のこともあれば、認知症を発症している可能性も考えられます。
また新しいものが急に増えていたり、見慣れないものが購入してあるような場合には、金銭管理が難しくなっていたり、悪徳商法などの犯罪に巻き込まれている可能性も考えられるので注意が必要です。
食事の様子が変わる
健康のために意識的に食事の内容を変えていることもありますが、そうではない場合には注意が必要です。
冷蔵庫の中を見たときに、それまでと比べて食品がぎゅうぎゅうに詰め込んであったり、反対にからっぽであったり、食べかけの食品や賞味期限が切れた食品や同じ食品ばかりが多く入っているなどの場合には、認知症やうつ病などにも注意が必要です。
また疾患が原因で太ったり痩せたりすることもあり、薬がたまっていたりする場合には、飲み忘れなど服薬管理が難しくなっている可能性もあります。
外出しなくなった
近年では新型コロナウイルス感染症の影響もあって、外出の機会は減少しています。
それに加えて、足腰の痛みや歩きにくさによって外出がしにくくなったり、気分がふさぎ込んで外出しなくなると、ほとんど家から出ずに生活することになります。
人と会う機会が減少したり社会とのかかわりが薄れていくことは、高齢者の健康に悪影響を及ぼし、一人暮らしを困難にする可能性があります。
配偶者が亡くなった
高齢者が夫婦で生活して、そのどちらかが亡くなったあと、生活が大きく変化することがあります。
寂しさから気分が落ち込むことはありますが、多くの場合、時間の経過とともに日常を取り戻していきます。
しかし会話をする相手が身近にいなくなり、お互いを気遣ったり生活にハリがなくなることで生活習慣が乱れる可能性もあります。
入退院を繰り返す
ケガや持病により長期で入院した後や入退院を繰り返している場合、徐々に体力や身体機能、気力が低下していくことがあります。
特に身体機能に制限が生じると、身の回りのことなどが自分でできなくなり、一人暮らしでは不便なことや危険なことも増え、一人暮らしが困難になる可能性は高くなります。
高齢者ご本人や家族ができる対策
日ごろから対策をとっておくことで、年齢を重ねても安心して一人暮らしを継続していける可能性は広がります。
しかし高齢者本人だけでできる備えには限界もあり、家族や近隣住民の協力は欠かせません。
健康管理
心身ともに健康であれば、年齢を重ねても一人暮らしは継続していけると考えられます。
しかし一般的には年齢とともに体力や免疫力は低下していき、疾患のリスクは高くなっていきます。
規則的な生活とバランスの良い食事を心がけ、持病のある場合は定期的な受診や検査を受けるなど、健康管理を怠らないことは重要です。
災害時の備え
災害時の備えは誰にも必要なことですが、高齢者では特に、災害時の避難に時間がかかったり、避難時に必要なものが多い傾向があります。
災害時は、警戒レベル3で高齢者等避難開始とされています。
普段から避難場所を確認しておき、家族が早めに連絡をして避難を促したり、近隣住民に声をかけてもらうなど、早めに避難行動がとれるように対策しておきましょう。
水と食料の備えも大切ですが、常用している薬とお薬手帳、入れ歯、メガネ、補聴器なども非常持ち出し品として用意しましょう。
人によってはおむつや、液体にとろみをつけるためのとろみ剤なども用意が必要です。
しかし非常持ち出し袋が重すぎると避難場所まで運べなくなってしまうため、無理のない重さに調整しておくことも重要です。
近隣住民との関係作り
近隣の人と日常的に顔を合わせて挨拶をするだけでも安否確認となり、ちょっとした会話ができれば、一人暮らしの高齢者にとっては心身に良い影響も期待できます。
さらに荷物を運んだり電球交換のような高所作業など、高齢者では大変なちょっとした作業を気軽に頼めるような関係を作っておくと、高齢者の一人暮らしの不安は大きく軽減できる可能性があります。
ICT機器の活用
高齢者自身がパソコンやスマートフォンなどを利用できれば、さまざまな情報が得られやすく、困ったことがあったときの連絡がしやすかったり、離れて暮らしている家族とも連絡がとりやすくなります。
本人がICT機器を利用できない場合でも、家族が見守り機器などを設置することで、家の中での事故を予防したり異常を早期発見することができます。
高齢者の暮らしを支えるサービス
一人暮らしに不安を感じたら、積極的に地域包括支援センターや社会福祉協議会などに相談してみましょう。
高齢者の一人暮らしを支えるサービスには、公的なものや民間のもの、ボランティアなどいろいろなものがありますが、どのようなサービスを利用する場合でも本人の意思を確認し、尊重することが大切です。
自治体のサービス
市区町村では高齢者の生活を支えるため、見守り支援や安否確認、配食、緊急通報システムなどのサービスや、社会福祉協議会やシルバー人材センターなどが実施する有償ボランティアなどがあります。
自治体によってサービスの内容は異なり、対象となる高齢者も条件が異なることがあるため、居住地の自治体に問い合わせてみましょう。
民間のサービス
サービスの利用には費用がかかりますが、日常的な困りごとから冠婚葬祭にまつわること、旅行や入退院など外出の付き添いなど、幅広いサービスがあります。
現在はさまざまな分野の会社が高齢者の生活サービス事業に参入しており、そのサービス内容や費用もさまざまです。
企業に直接依頼することもできますが、地域包括支援センターや社会福祉協議会などに相談してみてもよいでしょう。
介護保険サービス
要介護認定を受けることで利用できるサービスです。介護度によって利用できるサービスの内容と利用回数などが変わります。
基本的には要介護者本人に対しての生活援助や身体介護であり、ケアプランに盛り込まれた内容が提供されるので、生活で生じる困りごとの全てに対応してもらえるわけではありませんが、担当のケアマネジャーによる定期的な訪問があり、相談できるので安心です。
介護認定については自治体の担当窓口か、地域包括支援センターや社会福祉協議会などに相談しましょう。
高齢者住宅
介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、生活サービスや介護サービスを受けられる住宅を利用することで、安心して一人暮らしを継続することができます。
民間の高齢者住宅だけではなく、市区町村独自で高齢者住宅サービスを実施していることもあります。
費用やサービスの内容はそれぞれ異なるため、自治体の担当窓口や、地域包括支援センターや社会福祉協議会などに相談してみるとよいでしょう。
高齢者の一人暮らしを支える福祉
公的な福祉支援や民間の支援サービスの他、身近な地域とのかかわりなども一人暮らしん高齢者には必要な支えとなります。
これから高齢者となる世代は、いつか一人暮らしになることも視野に入れ、自分がどのように暮らしていきたいかを若いうちから考えておく必要があるのではないでしょうか。
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