寒天とは、日本で古くから使われている多糖類の一種です。食品分野では、ゼリーや和菓子、デザート類などに活用されています。
介護職にも使われるなど、用途の幅が広い食材のひとつです。
また、あらゆる食品の中でトップクラスの食物繊維量を含んでいることも特徴です。
今回は、寒天とは何かをはじめ、寒天の歴史や種類、栄養素などを解説します。
最後に寒天を使ったおすすめレシピも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
こちらのコラムもおススメですよ。
→【便秘解消やダイエット効果も期待できる!寒天】
目次
食物繊維が豊富な寒天について
寒天は、テングサやオゴノリなどの紅藻類から抽出した粘質物を凍結・乾燥させたものです。食物繊維が豊富に含まれています。
寒天の歴史
寒天はもともと、ところてんから偶然つくられたものだといわれています。
仏教の伝来とともに中国から精進料理が伝わり、精進料理の食材のひとつとして、ところてんの製法が伝えられたということです。
そして徳川時代に、京都の伏見で旅館を営んでいた美濃屋太郎左衛門により寒天が作られたとされています。
参勤交代の途中で宿泊した島津公をもてなすために作ったところてんが余ってしまい、外に捨てたところ、冬の寒さで凍り数日経つと水分が抜けて白く「す」が入った状態に変化していました。
これを「ところてんの乾物」として販売を始めたといわれています。
寒天の種類と使い方
寒天は、製法と形状の違いにより、いくつかの種類に分けることができます。
・角寒天
四角い棒状の寒天で、棒寒天ともいわれます。
角寒天は、適当な大きさに割り、水に浸けてもみ洗いしてから使います。
水を変えて10〜30分浸けてやわらかくなったら、よく絞り小さくちぎってから煮溶かします。
商品によって多少の差異はありますが、角寒天1本は約8gと、粉寒天4gと同じ程度の凝固力です。
・糸寒天
糸寒天は、細寒天とも呼ばれます。製造方法は角寒天と同じです。
煮溶かして使う場合は、角寒天と同様に、洗ってから水に浸けてやわらかく戻し、絞ってから煮溶かします。
煮溶かさずに、そのままサラダや和え物などの具材として使うことも可能です。
・粉末寒天
粉末寒天は、粉状の寒天です。
水で戻す必要がなく、そのまま煮溶かして使えます。
寒天の特性
液体を固めること(ゲル化)ができることが寒天の特徴ですが、ゼラチンなど他のゲル化剤とは異なる特性があります。
・可逆性
寒天は沸騰した水に溶けて水溶液となり、冷やすことでゼリー化(凝固)します。
ゼリー化した寒天は、再度加熱することで溶解し、冷やすとまた固形化します。つまり寒天には、熱可逆性があるということです。
そのため、寒天は耐熱性が高く溶解するには沸騰させる必要があり、冷蔵庫で冷却しなくても、常温でゼリー化します。
・離水性
液体を寒天でゼリー化したものは、離水が多い性質があります。水分を包み込む力が小さいため、特に切断面からは多く水分が流出します。
・酸や糖度に影響を受ける
寒天は、酸によって分解されやすい性質もあります。
特に、pH3以下で高温を保つとゼリー強度は著しく低下します。
また、寒天は糖類を加えるとゼリー強度が増強し、糖度が40%以上になると透明度が増します。
この寒天と糖類の反応は、糖の種類や濃度によって変化します。
寒天に含まれる栄養素とその効能
寒天に含まれる主な栄養素は、以下のとおりです。
①食物繊維
②ヨウ素
③クロム
①食物繊維
寒天は80%以上が食物繊維で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。
食物繊維は人の消化酵素の作用を受けずに大腸まで到達し、他の栄養素にはない重要な生理機能があるとされています。
食物繊維が多く含まれていることで、次のような効能が期待できます。
・便秘の予防改善
食物繊維は、大腸で水分を吸収して膨張することで便のかさを増し、便のかたさを調整します。
このような働きをすることから、便秘の予防・改善効果が期待できます。
また、腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えるためにも効果的です。腸内環境が整った状態であることは、ガン予防にも有効だとされています。
・血糖値の上昇を抑制する
食物繊維を摂ることで、腸壁からの糖の吸収がゆっくりとなるため、血糖値の急上昇が抑制できます。
・糖尿病を予防する効果
糖尿病は、インスリンの分泌障害によって血糖値が異常に高くなる病気です。
食物繊維を多く摂取するようにすると、胃がその内容物を腸へ送りだすスピードが遅くなります。
すると、腸壁からの糖質吸収にも時間がかかり血糖値の上昇も緩やかになり、糖尿病のリスクが抑えられます。
・コレステロール値を低下させる
食物繊維がコレステロールから作られる胆汁酸の排泄を促進するため、血中コレステロール値を下げる効果があります。
コレステロール値を下げることは、動脈硬化の予防につながります。
②ヨウ素
ヨウ素とは、甲状腺ホルモンの主成分です。甲状腺ホルモンは、基礎代謝を調整したり、成長ホルモンと連携して成長を促進したりする働きがあります。
③クロム
クロムは、すべての細胞に含まれている重要なミネラルです。生活習慣病の予防に効果があるといわれています。
寒天はこんな人におすすめ!
以下のようなお悩みがある人は、ぜひ寒天を積極的に摂取しましょう。
・便秘がちの人
・血糖値の上昇を抑えたい人
・糖尿病を予防したい人
・動脈硬化を予防したい方
・ダイエットしたい人
寒天に含まれる食物繊維には、健康維持のためのさまざまな効能があります。
さらに、食物繊維そのものはノーカロリーなので、たくさん食べても太り過ぎの心配がないことも特徴です。
また、食物繊維は吸水力が高く、水分を吸うとかさが増えるので、 少量でも満腹感が得られます。
そのため、ダイエット中の食事にも寒天がおすすめです。
なお、寒天の効能についてはこちらでも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
寒天の保存方法・使い方
寒天は、種類にかかわらず、直射日光と高温多湿を避けて保存する必要があります。
開封後は、密封できるチャック袋などに入れて、早めに使い切るようにしましょう。
寒天を調理するときには、いくつかの注意点があります。
・寒天は、液体が冷たい状態で加え、沸騰させて煮溶かします。ただし、冷たい状態で副材料などを加えると、部分的に寒天液の温度が下がり、かたまってしまったり均一に混ざらなくなったりすることがあるため注意が必要です。
・寒天液に酸を加えた状態で煮たてると、かたまりにくくなることがあります。
フルーツや果汁を加えるときは、寒天をよく煮溶かした後火を止めて、粗熱が取れてから入れることがポイントです。
・寒天は常温でかたまります。冷やして食べるときは、かたまってから冷蔵庫に入れるようにしましょう。
かたまりかけているときに寒天液を揺らすと、表面にしわが寄ったり、振動によって水分を包み込む構造が壊れてしまい、しっかりとかたまらなくなることがあります。
寒天のおすすめレシピ|ジャスミンティーの錦玉羹(きんぎょくかん)
錦玉羹(きんぎょくかん)は、寒天と砂糖や水あめを煮溶かして、型に入れて固めた和菓子です。
液体に対して糖分を多く加えることで透明感が生まれ、切り分けたときの離水を防ぎます。
今回はジャスミン茶をベースにした、さっぱりとおいしい錦玉羹のレシピをご紹介します。
【材料】(縦6.5×横14×高さ4.5㎝の型1個分)
・ジャスミン茶葉…3~4g
・水…250ml
・粉寒天…2g
・グラニュー糖…120g
・水あめ…25g
・甘納豆(小豆)…20g
・ドライマンゴー…20g
【作り方】
①ジャスミン茶葉に水を注いで5時間ほど冷蔵庫に入れておき、濃く抽出しておきます。ペットボトル飲料のジャスミン茶でも大丈夫ですが、商品によって色や香りが薄いことがあるため注意が必要です。
ドライマンゴーは、甘納豆の大きさに合わせて切っておきます。
②鍋にジャスミン茶を入れ、粉寒天を入れて混ぜてから火をつけます。
③混ぜながら加熱します。沸騰したら火を弱めて、数分間沸騰を保って寒天を煮溶かします。
④寒天がしっかり溶けたら、グラニュー糖を加えます。
⑤グラニュー糖が溶けたら水あめを加えて、再度沸騰したら火を止めます。
⑥コンロからおろして、混ぜながら粗熱をとります。
⑦型は水でぬらしておきます。寒天型のように内底がない型を使う場合は、取り出しやすいようにキッチンペーパーを敷いておきます。
⑧寒天液にとろみがついてきたら、寒天液を1㎝くらいの深さまで流し入れます。
⑨かたまる前に甘納豆とドライマンゴーを底面に散らします。
⑩残りの寒天液を、甘納豆とドライマンゴーが動かないように静かに注ぎます。
⑪そのまま静置し、かたまったら冷蔵庫で冷やします。よく冷えたら型から出し、食べやすい大きさに切り分けて、できあがりです。
『寒天レシピ』まとめ
寒天は、その80%以上が食物繊維です。
寒天に含まれる豊富な食物繊維の効果によって、便秘の改善のほかにも、生活習慣病の予防・改善効果などが期待されます。
カロリーも低いので、ダイエット中の食事に取り入れることもおすすめです。
和菓子やヘルシースイーツ、サラダなど、さまざまな料理に使えます。
粉寒天を使えば、今回ご紹介したようなレシピでも簡単に作れます。健康のためにも、簡単に美味しく作れる寒天レシピをお試しください。
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