高齢者が暮らしやすい環境とは?

高齢者が暮らしやすい環境とは?
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人が暮らしやすい環境はライフステージによって変化することがあります。

単身者が結婚してやがて子どもが生まれ…と世帯構成が変わっていくことで生活に必要な条件が変化するように、年を重ねていくことで生活環境に必要な条件も変化していきます。

超高齢社会の日本において、高齢者が暮らしやすい環境とはどのようなものか考えてみましょう。

高齢者の暮らしの現状について

高齢者にとって暮らしやすい環境はライフステージの変化によるものだけではなく、個人の価値観や心身の健康状態などによっても異なると考えられます。

内閣府による「平成30年度高齢者の住宅と生活環境に関する調査」の結果を参考に、高齢者の暮らしの現状についてみてみましょう。

この調査は全国の60歳以上の男女に聴き取りによって行われたものです。

安心して住み続けるために必要なこと

「現在住んでいる地域に住み続けるためにどのようなことが必要か」の質問については、「近所の人との支えあい」が55.9%と最も多い回答でした。

続いて「家族や親族の援助」が49.9%、「かかりつけ医等健康面での受け皿」が42.6%となっており、周囲の人との関わりと医療サービスの充実が必要と考える人が多いことがわかります。

外出の目的

外出の目的として最も多いのが「近所のスーパーや商店での買い物」で80.7%、続いて「通院」45.2%、「趣味・余暇・社会活動」が44.6%、「散歩」が40.3%でした。

詳細をみると、「近所のスーパーや商店での買い物」は女性に限ると88.7%と男性に比べて高く、年齢が上がるほど「通院」が多くなり、80歳以上では多くの項目で値が低くなり外出の機会が減少していることがわかります。

外出する際に利用する手段

外出時の移動手段は「自分で運転する車」が56.6%、「徒歩」が56.4%とほぼ同じ値です。

質問が複数回答可であることを考えると、目的地の距離によって使い分けている可能性も考えられますが、年齢別の回答をみてみると「徒歩」は年齢とともに値は上がり、「自分で運転する車」は年齢とともに値は下がっています。

さらに都市の規模別に回答をみてみると、大都市では「自分で運転する車」は他の地域より低く、「徒歩」「自転車」「電車」「バス」などの割合が増加します。

大都市では交通機関が整備されており、都市の規模が小さくなるほど交通機関が整備されておらず、自家用車での移動が必要であることが予測されます。

外出する際に利用する手段

居住地域で不便や気になったりすること

居住地域で不便や気になったりすることは「特にない」が58.7%、「不便や気になる点がある」は40.8%でした。

不便や気になる点の詳細は「日常の買い物に不便」が15.9%、「通院に不便」が14.1%、「交通機関が使いにくい、整備されていない」が14.1%で、これらは大中都市よりも小都市・町村で多いという結果です。

前項の質問と同様に、都市の規模が小さくなると、高齢になってからの移動手段に不安があると考えることができます。

住まいに関して不安と感じていること

住居についての不安の具体的な内容(択一回答)では「虚弱化したときの住居構造」が27.3%、「世話をしてくれる人の存在」が23.0%、「住宅に必要な経費が払えなくなる」が22.8%でした。

「虚弱化したときの住居構造」は都市規模が小さいほど高く、町村に限ると36.4%に上昇します。

現在の住居で困っていること

「何も問題はない」が65.5%と過半数でしたが、「住まいが古くなりいたんでいる」が14.1%、「住居の構造が高齢者には使いにくい」が8.3%、「住居が広すぎて管理がたいへん」が7.9%でした。

年齢が上がるほど「何も問題がない」が高くなり、大都市に比べて町村の方が「住まいが古くなりいたんでいる」「住居が広すぎて管理がたいへん」が10ポイント以上高い結果でした。

高齢者が暮らしやすい地域環境

「平成30年度高齢者の住宅と生活環境に関する調査」からは無理のない範囲に必要な施設が整っていることや、交通機関が整備されていることが暮らしやすい環境には必要であることがわかります。

また現状では、地域によって差異があることも問題のひとつであることも読みとれます。

移動や買い物がしやすい

スーパーやドラッグストアなどの商業施設や病院などが、無理のない徒歩圏内にあるのが理想的です。

自動車や自転車の運転は高齢になると事故のリスクも高まり、何歳になっても乗り続けられるというものではありません。

日常的に行く場所が徒歩圏内にあり、さらに交通機関が充実していて駅やバス停が近くにあれば、目的地によって移動手段を選ぶことができ、行動範囲も広がることが期待できます。

医療機関や福祉サービスの充実

ちょっとした体調不良のときにすぐに受診できるかかりつけ医が近くにあることと、万が一のときに治療や入院ができる総合病院も、無理なく通院ができる範囲にあれば理想的です。

高齢になると歯科や整形外科などを受診する機会も増える傾向があるため、近くにあると安心です。

高齢者の医療や福祉サービスは自治体によっても異なるため、調べておくとよいでしょう。

医療機関や福祉サービスの充実

住み慣れた土地

個人差はありますが、高齢になってから住み慣れた土地を離れて慣れない場所で生活を新たに始めることは、心身ともにストレスとなることがあります。

近所に知り合いがなく、土地勘もない場所での生活は慣れるまでに時間が必要であり、特に人づきあいが得意でない人は、家の中に引きこもる要因になることもあります。

調査結果にもあるように、高齢者にとって近くに知人や友人がいることは生活の安心感につながると考えられます。

高齢者が暮らしやすい住居

自宅のリフォームや建て替え、住み替えなどの機会がある場合には、年齢を重ねて介護が必要になったときも含めた配慮や工夫をすることで暮らしやすくなります。

高齢者が暮らしやすいように多くの機能や設備が存在しますが、全てを備えるには経済的な負担もあります。

介護保険では住宅改修に対しての費用補助があり、自治体によってはリフォーム内容の条件によって支援制度や補助金制度などもあるので確認してみましょう。

バリアフリー

障害となるものを無くし、誰にとっても安心・安全な状態がバリアフリーです。

バリアフリーの住宅では段差をなくして手すりやスロープなどを設置することや、家の中の急激な温度差を無くすことなどが考えられます。

敷居などの段差や階段がなく、広めの玄関や広い通路、場所によってはスロープや床が滑りにくいことなども転倒防止のために必要です。

間取り

日々の生活動線を想定して間取りを考えてみましょう。

高齢者に限りませんが、毎日の買い物で荷物を運び食品を冷蔵庫に入れるには、玄関とキッチンは近い方が効率的です。

キッチンに勝手口があるのもよいでしょう。

また高齢者の寝室とトイレや浴室は隣接している方が、転倒などの事故リスクを低くできます。

高齢者が滞在時間の長い部屋を近くにまとめて配置し、それぞれの部屋を回遊できるような間取りであれば移動距離が少なくて済みます。

さらに年を重ねて歩行が困難となったとき、車いすを使用できるような間取りであれば、さらに理想的です。

設備

トイレや浴室、脱衣場などは、車いすの使用や介護を受けることも想定した設備があると高齢者にとって暮らしやすくなります。

扉は引き戸にして車いすが入るスペースを確保し、適切な場所に手すりを配置します。

現在は浴室もトイレもいろいろと便利な機能がありますが、高齢者にとって操作が簡単なことは重要です。

また水回りの設備は汚れがつきにくく、清掃がしやすい素材や機能を選ぶようにしましょう。

玄関には人感センサー付きのライトを設置し、室内にも必要な個所にフットライトを設置しておくと、夜間のトイレも安心です。

ヒートショック防止のために室内の温度差を少なくする性能も大切ですが、換気や結露の対策なども考慮が必要です。

高齢者が暮らしやすい環境とは?

高齢者にとって暮らしやすい環境は、心身の健康状態よって変化することがありますが、基本的には住み慣れた土地で暮らしていけることが理想的であると考えられます。

若いうち、健康なうちから将来を予測しながら暮らしやすい環境に整えていくことと、居住している自治体にどのような医療・福祉サービスがあるのかを知っておくことも必要です。

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この記事の作成者:S.M(管理栄養士)
この記事の提供元:シルバーライフ

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